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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇受)第〇〇〇〇号 上告受理申立て事件
申立人 〇〇〇〇
相手方 〇〇〇
上告受理申立て理由書
〇〇〇年〇月〇日
最高裁判所 御中
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
申立人 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
加えて、施行者が職権更正義務や按分義務を果たさない場合、事実上、殆どの地権者は、事業計画公告日現在の公簿地積を基準地積として受け容れざるを得ない。犠牲者となる地権者の権利保護の必要性を考慮すれば、職権更正の不作為や按分義務の不履行は許されないものといわねばならない。
繰り返すが、本件のように大幅な縄伸びの可能性がある場合、違法処分に繋がる不都合を回避するために、適宜職権更正を実施し、さらには、按分義務を適正に履行することにより、権利者保護を図らなければならない。
ここに土地区画整理事業の施行者に求められる一般的な義務に関して最高裁が示した規範を掲げておく。
「施行者としては、事業の施行にあたり、一般に、関係人に不当な不利益や損害を及ぼすことのないよう配慮すべき義務を負うことはいうまでもない」(最高裁判所昭和42年(オ)第668号同46年11月30日第三小法廷判決、最高裁判所民事判例集25巻8号1389頁、裁判所時報585号1頁、判例時報653号84頁、判例タイムズ271号177頁、最高裁判所裁判集民事104号493頁)
本訴えに係る損害、損失の大きさに鑑み、社会通念上、〇〇〇は〇〇〇に対する配慮が欠けていたと考えるのが相当であり、これと異なる原判決には、上記最高裁判所の判例と相反する判断(民事訴訟法第318条第1項)がある。
また、原判決は、職権更正規定は文言上市に更正の義務を課したものではないとしているが、この規定は施行者に更正の権限を付与したものであり、権限には当然にその行使、不行使につき責任を伴うものである。原判決は、条文上の「認める」や「できる」という部分を〇〇〇にその恣意的裁量権あるいは自由な選択権があるものと誤解した。
「認める」とは、「認識している」という意味であり、認めるか認めないかの許認可権のような特権を意味するものではない。更正規定には、施行者が照応義務を果たすために、事実に相違する(あるいは必要性あり)と認識した土地について、公簿地積よりも実測地積を優先させることを可能にする、いわば施行者を救済する一面もある。
上位規範たる法が掲げる照応義務を軽視したが故に、下位の更正規定の趣旨を看過した、あるいは、規定の字面のみを鵜呑みにしたものと思料される。よって、この点につき、原判決には明らかに施行条例22条3項ひいては法89条1項、98条2項に係る法令解釈の誤りがあり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
また、〇〇〇は、〇〇〇年に立木補償の名目で隣接地権者等を招集し、本件従前地の境界確認を行っている。立会い後、杭を埋設したうえで各地権者から境界承諾書を徴し、図面まで作製(資料5)している。〇〇〇は、施行者としてこの図面を作製した際に大幅な縄伸びの可能性には当然気付いた筈であり、少なくとも気付かなかったことに注意義務違反、前記信義則上の配慮義務違反がある。にもかかわらず、〇〇〇が縄伸びを予見し得たとはいえないとして、その注意義務懈怠を否定した原判決には、明らかに通常人の常識に属する経験則違反があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
ちなみに控訴人らは、〇〇〇から土地評価や換地設計に関する計算書、当該図面等を入手し、受益率に比して仮換地地積が小さ過ぎることに気づき、縄伸びを確信するに至ったことから実測に及んだのである。なお、〇〇〇は〇〇〇からこれらの計算書等の交付を受けることもなく、受益率や減歩率はおろか按分後の基準地積すら知らされていなかったことから、地積等の決定に不正はないものと誤信していたに過ぎない。すなわち、錯誤の状態にあったのである。
さらに、「(3)按分義務不履行」について、按分区域の設定が市の裁量に属するとしても、市が行った区域設定を合理的だとする論拠が、要約すれば水田・陸田の分布状態に応じているからというのでは話にならない。按分規定中「適当な」の意味をはき違えているとしか考えられず、控訴人らの主張を否定する理由とはなっておらず失当である。この点、原判決には、明らかに通常人の常識に属する経験則違反があり、また施行条例22条4項ひいては法89条1項、98条2項に係る法令解釈の誤りがあり、これらの違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
また、留保地積については〇〇〇の主張をそのまま引用しただけで何ら検証を行わずに判断を下している。按分規定は義務規定であり、更正規定のような任意規定と解釈する余地はない。
もっとも、留保は「換地不足に対応するため」としながらも、控訴人らが本訴えの前提で要求した増換地変更を拒んだ〇〇〇の矛盾については一切問わずじまいである。
この点、原判決には、審理不尽の違法のみならず、明らかに通常人の常識に属する経験則違反があり、施行条例22条4項ひいては法89条1項、98条2項に係る法令解釈の誤りがありその違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
基準地積の決定方法に係る重要な判例を次に掲載する。
「照応の原則は換地処分の本質に根ざす基本的な原則であるが、その主眼は土地区画整理における関係者の公平をはかり、その利益を保護する点にある。したがって、土地区画整理において、従前地の各筆の面積(基準地積)を確定することは、換地設計を始め、一連の換地手続の必要不可欠の基本的事項であり、右地積は仮換地の指定、換地処分、清算金のすべてにわたり基準となるものといわねばならない。そして、基準地積の確定方法については、土地区画整理法は直接規定していないものの、決して施行者の自由な裁量に委ねられているものではない。同法施行令により「地積の決定の方法に関する事項」は施行規程の必要的記載事項とされ、公共団体が施行者である土地区画整理にあっては、施行規程は条例により定める旨規定されている。それゆえ、施行規程中「基準地積の確定に関する事項」は、施行者が土地区画整理事業の遂行に当たり準拠すべき規則であって、右条例に違背して確定された基準地積に基づく換地処分は違法であるといわねばならない。(中略)
基準地積の決定方法に係る条例の各規定は、処分庁(施行者)の便宜のみのためにのみ設けられた規定ではなく、処分を受ける土地所有者らの権利を保護するためにも設けられたものであるから、右規定に違背した瑕疵は、単に違法というに留まらず、当該換地処分の取消事由に当たるものといわねばならない。」(広島高等裁判所松江支部昭和63年(行コ)第3号平成1年10月27日判決、行政事件裁判例集40巻10号1467頁、判例時報1358号96頁、鳥取地方裁判所昭和60年(行ウ)第2号昭和63年6月23日判決、行政事件裁判例集39巻5・6号491頁)
〇〇〇が本件処分にあたって採用した基準地積は上記のとおり施行条例ひいては法解釈の誤りに起因したものであるから、原判決にはこの控訴裁判所である高等裁判所の判例の趣旨と相反する判断があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
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