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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇受)第〇〇〇〇号 上告受理申立て事件
申立人 〇〇〇〇
相手方 〇〇〇
上告受理申立て理由書
〇〇〇年〇月〇日
最高裁判所 御中
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
申立人 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
次に、「本件従前地については、本件仮換地の指定がされ、使用収益が開始されている」ことを挙げているが、本件仮換地に対応しているのは、あくまで地積更正前の地積に対応する従前地である。地積更正による増歩(701.11㎡)中少なくとも562.88㎡もの所有土地に対応する仮換地は存在していない。
問題の本質は、施行条例に定められた期限後に地積更正された縄伸地の取扱いが法や施行条例で明確になっていないことにある。〇〇〇も繰り返しこの点を強調していた(注)が、原判決はその点に正面から向き合わずに条文の文言にのみ拘泥し、無理矢理適用を図ったことから問題が不明確で、判然としないままなのである。
この点、原判決には、法101条各項に係る法令解釈に誤りがあり、究極的には憲法29条により救済されるべきであるから上記最高裁判所の判例の趣旨に相反する判断が含まれ、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条第1項)。
(注)控訴人らは、一義的には違法による損害賠償を請求していることから、損害額を算定するに際し、〇〇〇の行った土地評価に基づく減歩地積と縄伸地積を区別する意義はないとしたが、違法性がないことを前提とした適法行為に基づく損失額を論じる中では両者を区別しなければならないと主張してきた。地積更正により事後的に顕在化した増歩分に対しては通常、換地が付与されずに事実上没収されることになる。控訴人らはこれまで敢えて“法定外減歩”という言葉を用いてきたが、本来これを減歩と言うべきではない。
原判決は、事業による受益の増進率に対応した減歩、すなわち“法が想定する地積減”と事業による受益の増進率と無関係に事実上収用されることとなる没収分、すなわち“法の想定しない地積減”とを区別せずに混在させて論じているところに無理がある。
次に、〇〇〇が期限内に地積更正の申請をしていないことを挙げているが、申請していないことは、縄伸地積に係る損失補償を不要とする根拠とはなり得ない。
なぜなら、そのような規定はどこにも存在しない。期限に間に合わなかった者に強いられるのは施行者が決定した基準地積に基づき指定された仮換地を甘受するところまでである。地積増が証明された場合において、使用収益に係る期間損失の補償が受けられないのであれば、法律による行政の原理(侵害留保の原則)に照らし、そのような不利益はあらかじめ法定されていなければならない。
次に、〇〇〇が地形に関する要望を述べたが、地積に関しては何ら異議も述べていないとしているが、それは誤りである。〇〇〇が提出した妥協案(資料8)は机上計測すれば、2000㎡強である。つまり、仮換地の地形のみならず、地積にも不満があったのである。
もっとも、地形と地積とを区別して論じるのは無意味である。土地の経済価値(価格)は、両者の相関関係及び他の要因により数値化され、また、土地への選好性も両者を含めた総合的な価値判断によるのである。地積増の主張は到底認められないであろうとの前提で敢えて最小限の願いを図示したに他ならない。地積増が認められると考えていればわざわざあのような長方形ではない卑屈な形状を要望する筈もない。
次に、「約30年経過している」と時の経過を挙げているが、それは時効の成否に係る問題として判断がなされるべきである。もっとも、30年も経過してから基準を改正している点を合理的だとする根拠を明示されたい。
次に、縄伸が生じていた「本件神社東側及び北側の山林部分を積極的に使用収益した事実がない」ことを挙げているが、これも誤りである。
もっとも、原判決のいう「積極的」な「使用収益」が何を意味するものかは判然としないが、当該部分は本件神社の鎮守の森として代々維持管理してきた部分であり、これら周囲の木々が本件神社の効用を高め、一体として価値を形成することは常識である。以下、参考となる判例を掲げておく。
「本件処分により使用収益可能な状態から使用収益不能な状態になったことに変わりがないのであるから、従前地を実際に使用収益していなかった者に対しても補償を要するものと解するのが相当である。」(宇都宮地裁、昭和62年(行ウ)第1号、第2号、平成7年5月31日、行政事件裁判例集46巻4・5号578頁)。
最後に整理すると、本論点は仮換地指定後に地積更正された場合の取扱いが何ら法や施行条例に規定されていないことに起因する。これは、本来いわゆる照応の原則とはまったく別の問題と捉えるべきである。なぜなら、地積更正による増分の土地は実質的には収用されたのと同様の結果をもたらすからである。その実態を重視すれば、いわゆる減歩とも異なるものであり、照応不照応を論じる基礎を欠く。経済実質の観点からは、法90条のいわゆる換地不交付、あるいは土地収用法の土地使用に近似するものと考えられる。仮にその対価が清算金で支払われたとしても、それはあくまで交換の対価に過ぎず、これまでの土地使用制限に対する継続的な損失の補償を意味するものではない。
それにもかかわらず、原判決は、原因の異なる地積減を一纏めにして強引な解決を図ろうとしたことから不自然かつ論理性のない説明となっており、理由が付されていないも同然である。
以上のとおりであるから、財産権侵害に係る本訴えに対しては、究極的には憲法によって救済が図られるべきであるとしたところである。
五 争点五「公平原則違反」
前記のとおり第一審のみならず控訴審においても裁判長は仮換地変更(増換地修正)について、その可否を〇〇〇職員(指定代理人)に問うていた。〇〇〇は今さらできない旨答えていたが、それは裁判所においても損失が生じていることを認識していたからに他ならない。
施行条例の定める期限後に申請した他の地権者に対して、〇〇〇は増換地で対応している(〇〇〇の陳述あり)のに比べ、控訴人らに対して増換地での対応はできないというのであれば、公平原則に照らし、少なくとも地積更正登記が完了した後の期間に係る損失については、金銭補償すべきと考える。
登記完了からは既に3年以上が経過しているのに未だに一銭の支払もないのである。具体的に明文化された根拠法令がなく、類推適用できる他の法令も存在しないというのであれば、憲法29条3項を根拠にしてその補償請求も可能な筈である(最高裁昭和37年(あ)第2922号同43年11月27日大法廷判決・刑集22巻12号1402頁参照)。
そうでなければ期限後に申請し、増換地された他の地権者との均衡を失するし、時期の相違については〇〇〇が主張するよう消滅時効(注)の問題で処理するのが説得的と考える。期限後登記した者は増換地修正されたことにより使用収益できる仮換地の範囲が広がり、今日まで使用収益しているのに対し、控訴人らに対しては金銭補償すらされずに放置されなければならない理由は何か、明らかに不公平である。
この点、原判決は何ら触れずじまいで、審理不尽の違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである(民事訴訟法第318条1項)。
(注)時効について、控訴人らは逐次進行説を主張してきた。
第6 結論
控訴人らには多大な損害、損失を受忍すべき帰責事由は一切ない。
強いて言うなら期限後の地積更正であったという一点のみである。しかし、それは土地所有者に認められる正当な権利行使の結果である。
それに対し、事実誤認、基準地積に係る条例違反、土地評価基準違反、換地設計基準違反、注意義務違反等数多の違法行為を犯した〇〇〇を一方的に擁護しているのに加え、何ら精査することもなく〇〇〇の主張をそのまま事実認定する等、原判決には審理不尽のみならず著しい経験則違背に基づく判断、法令解釈の誤りが多々みられ、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。よって、原判決は破棄されるべきものであることから上告受理の申立てに及んだ次第である。
最後に、個々の争点については、これまで提出した準備書面等(特に第一審における原告準備書面(7))で詳述しているのでご参照いただければ幸いである。
以上
添付資料
1 本事業の施行地区及び当該地の位置関係
2 概略図
※祠の周囲のスペースは確保されず、左右の対称バランスも失い、しかも不自然に南西側に醜く突出した地形を強制された。
3 各筆各権利別清算金明細書
※〇〇〇から〇〇〇年〇月〇日付で送付されたもので、清算金額が記されており、損害、損失の大きさが証明されている。
3-2 従前地の公簿地積と実測地積
4 〇〇〇都市計画事業黒浜土地区画整理事業施行に関する条例
5 〇〇〇年に〇〇〇が作製した従前地の一部に係る測量図面
※〇〇〇は当該部分を保存樹林指定し、地積を記載した台帳まで整備していた。
6 照応(土地区画整理法第89条第1項)について
7 換地対象図
※〇〇〇が隣接神社の北東部分に保留地を確保しようと謀ったことから、本件従前地は縮小かつ極端な歪化を余儀なくされた。
8 〇〇〇が提出した妥協案
※祠を中心に据え、その周囲に四方均等となるよう最低限のスペースが確保されるようその寸法まで記載して、神社の尊厳が維持されるよう願った。
9 土地評価基準抜粋
※18条4号及び別表6の不整形減価に係る規定は改正前後で不変である。
10 F(p)値(防火保安性)に係る説明資料
附属書類
1 上告受理申立ての理由書副本 7通
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