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不動産鑑定評価基準/運用上の留意事項

※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋

赤字の箇所は補足説明

044-総論第7章第1節価格を求める鑑定評価の手法/原価法⑧

第7章鑑定評価の方式

  (第1節のつづき)

②観察減価法

観察減価法は、対象不動産について、設計、設備等の機能性維持管理の状態補修の状況付近の環境との適合の状態(建物の個別的要因の例示)減価の要因の実態調査することにより、減価額を直接求める方法である。

観察減価法の適用においては、対象不動産に係る個別分析の結果を踏まえた代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度等を適切に反映すべきである。

・対象不動産が完成直後で最有効使用の状態にある場合は、その再調達原価がその経済価値に概ね一致し、減価修正を行う必要がなくなる。但し、新築建物であっても、そのあり方が近隣環境に適合しない場合のように、最有効使用の状態でなければ,経済的要因を考慮して減価修正を行うことになる。

・観察減価法は、対象不動産の有形的な状態の観察を基礎とし、再調達原価から減価額を直接控除する方法である。

・対象不動産について、例えば、屋根瓦の破損の状態、土台の沈下の状態、壁の亀裂の状態等や設計の良否、有害な物質の使用の有無、付近の環境との適合の状態等を調査するとともに、これらが減価の要因すなわち物理的要因、機能的要因及び経済的要因としてどの程度対象不動産の価格に影響を及ぼしているかを直接判断することとなる。減価額(率)は、劣化度合い等類似の取引事例から判断することとなるため、特に代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣、競争力の程度等の市場分析の結果を重視し、それを適切に反映しなければならない。なお、減価を定量的に把握する方法として、緊急修繕や取替えを要する場合に限らず、再調達の状態まで回復させるための修繕、補修費相当額を査定し、その結果を踏まえアプローチしていくことも有用である。

なお、観察減価法を適用するに当たっては、前記の基準「(2)減価修正の方法」の解説に記載したような特徴を有していることに十分な配慮が必要であり、耐用年数に基づく方法の考え方を併用しながら手法を適用していくように努めるべきである。

・下記算定例は、耐用年数に基づく方法で求めた減価額を、観察減価法を適用して修正する方法により減価を行った場合における建物及びその敷地の原価法の適用の概要を示したものである。

耐用年数に基づく方法と観察減価法を併用する方法は、この方法に限るものではなく、また、対象不動産によっては、定額法ではなく定率法等を適用すべき場合や、率ではなく額で表示したほうが説明力が高い場合等があるので、帳票は適宜修正し、選択した方法に沿った、より解りやすい鑑定評価報告書の作成に努めなければならない。 

減価修正の方法について

ア  対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。

ここでは、建物及びその敷地の評価における減価修正の方法について説明している。

一体減価について

経済的要因に基づく減価の中には、建物と敷地がそれぞれ影響を及ぼし合って生じる減価があり、この減価の扱いについては、基準の原則に則って土地・建物各々の減価修正の中で捉えるべきとする考え方のほか、土地と建物に区分することなく、建物及びその敷地一体にかかる減価として土地建物全体で減価する考え方もある。

いずれの手順によっても、適切に適用すれば理論的には同額となることから、平成26 年度の改正にて、一体としての減価を行うという方法が基準上でも明確に示されたものであり、どちらの方法を適用することもできる。ただし、後者による方法は、一体減価前の建物の積算価格を求める段階と二段階で減価するため、適用に当たっては、同一の要因による二重の減価が行われないように留意する必要がある。

原価法における市場性の反映について

価格形成要因のうち経済的要因には市場性の後退(及び促進)も含まれる。原価法においては、再調達原価や経済的残存耐用年数等に基づく減価修正(一体減価を含む。)において、市場性を適切に反映する必要があるが、対象不動産の種類や特性等により、積算価格と比準価格や収益価格等との間に大きな乖離が生ずる場合があるので留意が必要である。例えば、建物が古いにも係わらず収益性が非常に高い賃貸ビルや、逆に、投資額に対して極めて低い収益性に留まるゴルフ場や保養所等の評価にあっては、その点を十分認識した上で、試算価格の調整の段階においてその差異について検討を加え、鑑定評価額を決定しなければならない。なお、手法間の整合性の観点から手法を適用する中で適切に調整でき、論理的にも矛盾がないと判断される場合は、原価法において、比準価格や収益価格等との開差について市場性の観点から分析し、市場性増減価として修正することもできる。

イ  耐用年数に基づく方法及び観察減価法を適用する場合においては、対象不動産が有する市場性を踏まえ、特に、建物の増改築・修繕・模様替等の実施が耐用年数及び減価の要因に与える影響の程度について留意しなければならない。

・建物に増改築等が施されている場合は、耐用年数に基づく方法を適用する際に、建物の耐用年数に対する影響を減価修正において適切に反映しなければならない。

・増改築等の耐用年数への反映方法については、経済的残存耐用年数を延長することが一般的であるが、前記のように経過年数を見直す(実質的に経過年数が短縮したと捉える。)方法もある。また、完全な更新を行った部位のみを区分して再調達原価を把握し、その部位の取得時期を増改築等実施時として経過年数を把握することが適切な場合もある。

・観察減価法では、増改築等の実施による価値の回復を、直接的に減価額の判断の中で行うこととなるが、その際には、特に増改築等がもたらす市場性への影響の程度に留意する必要がある。

減価額を求める方法には、「耐用年数に基づく方法」と「観察減価法」があり、二つの方法は下記のような特性を有している。各々長短があるので、両方法を併用し相互に欠点を補完することが求められている。

具体的に「併用する」方法としては、各々の方法を適用して求めた減価額を相互に勘案して決定する、一つの方法を選択適用する過程において他の方法の考え方により補完する、及びその両方による等の方法が考えられる。さらに観察減価法を適用して耐用年数を査定したうえでその耐用年数により耐用年数に基づく方法を適用することや、耐用年数に基づく方法で求めた減価額 ± α(耐用年数に基づく方法で求めた減価額を、観察減価法を適用して修正)することも、併用の一つと解釈できる。併用することの趣旨に鑑み過不足なく減価がなされることが重要である。なお、古いことに価値が生ずるような不動産等においては、観察減価法を主として適用すべき場合もある。

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