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不動産鑑定評価基準/運用上の留意事項

※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋

赤字の箇所は補足説明

字の箇所実務指針

075-総論第9章第2節記載事項④

第9章鑑定評価報告書

(第2節のつづき)

以下、地代の継続賃料の鑑定評価を行う場合の確認について

地代に係る確認資料について例示すると下記のとおりである。

土地賃貸借契約書、覚書

地代改定に係る交渉書面や賃料増減請求権を行使した際の内容証明郵便等の書面

借地の求積図面

建替え承諾、条件変更承諾、名義書替えの承諾等の一時金授受の内容に関する書面

公正証書(事業用定期借地権の場合など) 等

□契約の目的等

賃貸借等の契約が建物の所有を目的としている場合に限って、借地借家法による賃料増減請求が可能であり、権利も堅固なものとなる。したがって、まずは建物の所有を目的とする契約か否かを確認することが重要である。また、契約の目的・種類の内容によって評価を行う際の留意点が異なるため、下記のような観点から確認する。

(1)契約の目的について

建物の所有を目的とする契約であるか否か

(2)建物の所有を目的とする場合における建物の用途

(3)契約の種類について

借地権の権原が地上権か賃借権であるかの別

□上記のそれぞれについて具体的に留意すべき事項

(1)の「建物の所有を目的とする契約であるか否か」の判断について最高裁(最高裁判例昭和42 12 5 日最高裁判所民事判例集21 10 2545 頁)は、旧借地法第1 条における「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、「借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しないと解するのが相当である」と判示しており、建物の所有が主たる目的であるかを確認する必要がある。

なお、目的が主か従かを判断する場合には、契約の内容、契約の目的及び動機、敷地上の建物・構築物の種類・構造・規模・用途、敷地の広さ、敷地と敷地上の建物・構築物の位置関係等の事情が考慮される。

(2)については、「建物の用途」が制限される場合には、土地の最有効使用が実現できない場合があり、契約減価が生ずる場合があることに留意する必要がある。

(3)の「地上権か賃借権であるかの別」について、借地借家法の適用においてはほぼ相違はないが、各々の権利の種類が物権と債権の違いにより下記の点が異なることに留意する必要がある。

賃借権の譲渡転貸は、民法第612 条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)により地主の承諾が必要となり、承諾が得られない場合は、借地借家法第19 条(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)により裁判所の許可が必要である。

また、一時金として名義書替料が支払われる慣行が形成されている地域が多い。これに対して地上権は物権であり、地上権設定契約に特段の約定がない限り、地上権の譲渡等は地上権設定者の承諾を必要としない。

このほかに地上権は単独で地上権の登記ができるが、賃借権の登記は賃貸人の協力が必要となること、地上権は抵当権の目的とすることができる(民法第369 条第2 項)が、賃借権は抵当権の目的とすることができないことから、一般的に賃借権よりも地上権の方が借地権としての価値が高い。

□契約当事者

親族間関係などの当事者の地位などの立場が諸般の事情として斟酌されることがある。また、契約当事者の変更が事情変更に該当することがある。よって、契約当事者とその関係について確認することが必要である。

□契約期間(及び経過期間)

契約期間と経過期間は、賃料増減請求における相当性の判断に関わっており、特に、直近合意時点から価格時点までの経過期間の長短について、確認することが重要である。

契約期間については、借地借家法等において借地権の種類に応じて下記のとおり定められている。

 旧借地法の借地権は、非堅固建物所有は20 年以上(期間の定めがない場合30 年)、堅固建物所有は30 年以上(期間の定めがない場合60 年)

普通借地権は30 年以上(期間の定めがない場合30 年)

一般定期借地権は50 年以上

事業用定期借地権は10 年以上50 年未満

建物譲渡特約付借地権は30 年以上

一方、直近合意時点から価格時点までの経過期間については、賃料が不相当となったか否かを判断する事情の一つであるため、確認することが重要である。

なお、賃料増減請求の要件として、直近合意時点から一定の期間(相当期間)を経過していることが必要か否かについて実務上論争があった。しかし、最高裁(最高裁判例平成3 11 29 日判例タイムズ805 53 頁)は、「建物の賃貸人が借家法7 1 項の規定に基づいてした賃料の増額請求が認められるには、建物の賃料が土地又は建物に対する公租公課その他の負担の増減、土地又は建物の価格の高低、比隣の建物の賃料に比較して不相当となれば足りるものであって、現行の賃料が定められた時から一定の期間を経過しているか否かは、賃料が不相当となったか否かを判断する一つの事情にすぎない」と判示している。このように、相当期間の経過の有無は、判例上は不相当性を判断する事情の一つとして位置づけられている(「現行の賃料が定められてから相当期間が経過したことは、賃料増減額請求権発生の独立の要件ではなく、不相当性判断の事情として斟酌すれば足りるものというべきである」(東京地裁平成18 3 17 日判例タイムズ1257 316 頁)と前記最高裁判例と同旨の判決もある。)。

□契約数量

契約数量は、契約当事者が契約において合意した数量であり、単価を求める際の基礎情報であるため、確認することが必要である。

なお、契約数量は、必ずしも実測がなされているものではないために登記簿数量や概測数量であることも多く、契約数量と実測数量に相違がある場合が見受けられる。このような場合、評価上の採用数量が賃料に影響を与える場合があるため、留意する必要がある。

□月額支払賃料

基礎情報となる現行の月額支払賃料を確認するとともに、賃料が改定されている場合は、当初の賃料からの改定の経緯として、賃料改定時点、改定賃料額、増減率などを確認することが必要である。月額支払賃料の支払方法には、月額払い、年額払い、半年払いなどがあり、支払時期には前払い又は後払いの場合がある。

賃貸借等の契約は、一般的に長期にわたる継続的な関係であり、社会・経済情勢の変動等により、賃料改定の必要性が生ずる可能性がある。この場合においても、賃料改定は、当初に約定された賃料の影響を受けるとともにその後の改定賃料に影響を与えることとなる。

また、継続賃料は一般的にその改定の経緯等を反映し遅行性を有しているため正常賃料とは乖離している傾向がある。したがって、現行賃料が正常賃料と乖離していたとしても、既に賃料改定が行われている場合には、この乖離は賃料特有の遅行性が要因であることにより、賃料を改定することの相当性が認められない可能性もある。このため実際支払賃料の改定に当たっては、対象不動産に係る賃料改定の経緯及びその改定の程度を把握することが重要である。

□一時金の有無とその内容

賃貸借等の契約締結に当たり授受される一時金には、預り金的性格を有する一時金(敷金、保証金等)、定期借地権に係る賃貸借契約等における賃料の前払的性格を有する一時金(前払地代)等があり、これらの一時金は、支払賃料とともに実質賃料を構成する要素となる。したがって、一時金の確認は欠かすことのできない重要な作業である。

なお、借地権の設定対価としての権利金等の一時金があり、このような一時金は借地権の価格を構成する要素となり、結果として支払賃料の額に影響を与えることが多いことに留意する必要がある。

□賃貸条件等に係る特約

土地の利用方法に関する特約等は、基礎価格に影響を与えることにより、賃料にも影響を与えるだけでなく、当該要因を諸般の事情として捉えた判例もあるため、留意する必要がある。

・利用方法に関する特約の有無及びその内容

土地の利用方法に関する特約によって、現状の土地の利用方法が、その土地の最有効使用を実現することが困難な場合があり、基礎価格の査定に当たり契約減価の考慮が必要な場合があるため、土地の利用方法に関する特約の有無やその内容について、確認することが重要である。

・賃料改定特約の有無及びその内容

賃料改定特約には、協議特約、賃料鑑定特約、物価変動改定特約、定額改定特約、定率改定特約、路線価等の不動産価格変動改定特約、公租公課倍率特約などがある。これら特約の有無及びその内容を確認することが重要である。

借地借家法第11 条の地代等増減請求の規定は、最高裁(最高裁判例昭和31 5 15 日最高裁判所民事判例民集10 5 496 頁、最高裁判例昭56 4 20 日最高裁判所民事判例民集35 3 656 頁、最高裁判例平成15 6 12日最高裁判所民事判例民集57 6 595 頁、最高裁判例平成15 10 21 日最高裁判所民事判例民集57 9 1213 頁、最高裁判例平成16 6 29 日最高裁判所裁判集民事編第214 595 頁等)は一貫して強行法規と解釈している。

このため、賃料を減額しない旨の特約(不減額特約)や賃料を増額しない旨の特約(不増額特約)が設定されている場合であっても、賃貸人・賃借人はそれぞれ賃料の増額、減額のいずれも請求ができる。

ただし、借地借家法第11 条第1 項ただし書きにより、一定期間の不増額特約に限っては有効であり、この場合、賃貸人は賃料増額請求ができない。賃料改定特約の存在は、賃料増減請求の当否及び相当賃料額(継続地代)を判断するうえで重要な事情として十分に考慮されることから、賃料改定特約の設定の経緯、賃料改定の実態との関係等を検討することが必要である。

また、公租公課倍率特約は、借地借家法第11 条に定める「租税その他の公課の増減」としての固定資産税の変動が、賃料増減額の要件となるものであり、これを基準として賃料を定めることはある程度合理的と考えられる。しかし、平成6 年から公的評価の一元化に伴い固定資産税評価額のあり方が見直され、特に同制度の導入時においては、固定資産税評価額が地価動向と異なる変動を示す場合もあったことから、公租公課の変動が、必ずしも経済実態を表していないことがあることに留意する必要がある。

・増改築禁止特約の有無及びその内容

増改築禁止特約が約定されている場合、借地権者が建物の増改築をするには、借地権設定者の承諾が必要である。借地権設定者が増改築を認めた場合は、通常、借地権設定者に不利益が生じ、逆に借地権者は借地の利用効率が増加することから、当該承諾の対価として、増改築承諾料が支払われることが多い。よって、増改築禁止特約は土地の最有効使用との関係で重要であり、基礎価格の査定に当たり、影響を与えるため、その有無や内容について確認することが重要である。

なお、増改築禁止特約が、諸般の事情として扱われた判例(仙台地裁昭和51 2 4 日判例タイムズ338 195 頁)もある。

・賃借権の譲渡・転貸に関する特約の有無及びその内容

あらかじめ賃貸人が借地権の譲渡・転貸を承諾している場合、借地権の流動性が増し借地権価格が一般的に高くなるため、地代に影響を与える場合がある。このため、賃借権の譲渡・転貸に関する特約の有無やその内容について、確認することが重要である。

・契約締結後に支払われる一時金に関する特約(条件変更承諾料、増改築承諾料等)の有無及びその内容

条件変更承諾料及び増改築承諾料については、土地の最有効使用との関係で重要であり、基礎価格の査定に当たり影響を与える場合があるため、これら特約の有無やその内容について確認することが重要である。

・定期借地権の成立要件を充足する特約

契約の目的・種類が定期借地権の場合には、定期借地権の成立要件である「契約更新がないこと」「再築による期間延長をしないこと」「建物の買取請求をしないこと」が設定されているかを確認することが重要である。これら要件を充足しないと定期借地権として成立せずに、普通借地権として取扱われると解釈(稻本洋之助・澤野順彦編(山野目章夫担当)『コンメンタール借地借家法〔第2版〕』(日本評論社、2004 )156 頁)されていることに留意する必要がある。

次ページ以降では、家賃の継続賃料の鑑定評価を行う場合の確認について掲載します。

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つづき→不動産鑑定評価基準総論第9章第2節記載事項⑤はこちらへ

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