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不動産専門家相談センター東京
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各論
第1章 価格に関する鑑定評価
(第1節のつづき)
Ⅱ 農地
農地を農地、採草放牧地を採草放牧地、森林を森林として使用することを目的とする場合の取引価格の評価は鑑定評価に含まれない。
公共事業の用に供する土地の取得等農地を農地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合がある。
この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも 関連づけて決定すべきである。
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。
□比準価格→取引事例の取引価格には、農業廃止、経営規模縮小に係る農業補償に相当する額が含まれている場合があることに留意を要する。
□収益価格→標準的な農業総収益から、これに対応する標準的な総費用を控除して得られる農地の純収益を適正な還元利回りで資本還元して収益価格を求める。
□積算価格→林地を開墾して農地とした場合や干拓の建設事例によって、再調達原価が把握できる場合は、積算価格も関連づける。
※永小作権、小作料、離作料等を考慮して、その価格を求めなければならない場合があること、農業経営上の標準的な耕作規模と耕地面積との関連、農地法、都市計画法等の規制、農業収入と農業外収入との関連等に留意を要する。
Ⅲ 林地
農地を農地、採草放牧地を採草放牧地、森林を森林として使用することを目的とする場合の取引価格の評価は鑑定評価に含まれない。
公共事業の用に供する土地の取得等林地を林地以外のものとするための取引に当たって、当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合がある。 この場合における林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考として決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ずる損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。
□比準価格
林地は林木と一体となって(森林として)取引されるのが通例であるから、林地の複合不動産としての森林の取引価格に配分法を適用して、当該森林の取引価格から林木の価格を控除して林地の事例資料を求める。なお、林木価格は概ね次のように分類される。
①林木売買価
大森林については、取引事例が少ないが、小森林については林木が伐期前後である場合には、林木の市場価格を中心として取引される価格に基づいて評価を行う。
②林木費用価
林木育成に要した経費の後価合計額から、その間に得られた収益の後価合計を差し引いて、林木価格を求める。
③林木期望価
林木を将来の伐期に伐採することを予想して、現在より伐期年度に至るまでに期待される純収益の額の現在価格(前価)の合計額として求められる林木の価格により評価する。
□収益価格
林業収益は、主伐収穫と間伐収穫等の収穫合計額であり、これに対応する総費用として、造林費、管理費等をあげることができる。いずれも標準的な額を把握することが必要である。
□積算価格
再調達原価は、素地としての土地の標準的な取得原価に、当該林地が林木育成に適するまでに要する地拵え費、林道取付費等の費用を加算して求める。林地については、個別的要因よりも地域要因によってその価格が形成される部分が多いことに留意を要する。
Ⅳ 宅地見込地
現在、農地、林地としての使用収益が行われていても、鑑定評価対象地が、農地地域又は林地地域から次第に宅地地域へと転換しつつある宅地見込地地域内の土地であると判断されるならば、対象地は宅地見込地とされるのである。
宅地見込地の鑑定評価額は、(宅地見込地の取引事例に基づく)比準価格及び当該宅地見込地について、価格時点において、転換後・造成後の更地を想定し、その価格(比準・収益関連づけによる更地想定価格)から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の熟成度に応じて適切に修正して得た価格を関連づけて決定するものとする。この場合においては、特に都市の(人口、産業の集中に伴う)外延的発展(拡大的発展、膨張)を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度及び次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。
都市外延的発展促進要因影響度+総合勘案5事項
1.当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制
□助長:都市計画法による市街化区域の指定及びそれに伴う公共施設整備事業の実施
□阻害(抑制):都市計画法による市街化調整区域の指定、宅地造成規制法、農地法等 農振法
2.付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向
→近隣地域、周辺地域の公共施設等に関する地域要因の動向であって、具体的には、道路、鉄道、バス路線、公園、上下水道、電気、ガス、学校、病院等の諸施設の新設・整備の動向によって、その地域の熟成度を把握することができる。
3.付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向
近隣地域、周辺地域における住宅、店舗、工場等の建設動向を洞察することによって、当該宅地見込地の存する地域(宅地見込地地域)の用途的地域の方向とその標準的使用並びに転換・造成後の最有効使用の用途を判断し、宅地地域に転換するまでの期間を把握する。
4.造成の難易及びその必要の程度
→造成の難易及びその必要の程度は、造成工事費、造成に要する期間、造成後の仕上がりの程度に影響する。
5.造成後における宅地としての有効利用度
→宅地造成に要するのり面、道路、その他の公共潰地等によって、全面積に対する宅地としての有効利用面積の割合が定められるので、これについて近隣地域、周辺地域の地域要因の動向並びに当該宅地見込地の個別的要因に留意する。
□転換後・造成後の更地想定価格
転換後・造成後の更地について最有効使用を想定し、比準価格及び収益価格を関連づけることにより求める。
□通常の造成費相当額※建設業者の適正利潤を含む。
仮設工事、土木工事(切土、盛土、整地、埋立等)、擁壁工事、道路工事、給排水工事、公共空地工事(公園等)、現場経費、一般管理費、その他の工事費
□発注者が直接負担すべき通常の付帯費用
一般管理費、販売諸経費、広告宣伝費等
□その他 諸経費(金利等)
□熟成度修正
当該宅地見込地の近隣地域、その周辺地域が、社会的、経済的、行政的諸力の影響によって宅地地域化するのに要する時間及びその予測についての確実性に応じて、価格を割り引いて修正することにより行われる。
また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、比準価格を標準とし、転換前の土地の種別(すなわち、農地又は林地)に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量して決定するものとする。
□転換前価格(農地・林地)
比準価格を標準とし、収益価格を参考に、再調達減価把握可能な場合の積算価格を関連づけて決定。
□宅地見込地の比準価格と当該農地又は林地(山林)としての価格の開差が、宅地期待性を表現しているものと考えられるので、この開差について、前述の都市の外延的発展を促進する諸力の近隣地域に及ぼす影響度、その他5項目に着目して分析検討を行うことが必要であろう。
鑑定評価を行うためには、資料を豊富に収集し、それらを比較検討することが大切です。
鑑定評価書の内容は、実質的に不動産鑑定士が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明するものです。
※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋
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