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不動産鑑定評価基準/運用上の留意事項

090-各論第1章価格に関する鑑定評価第1節土地⑩ 区分地上権

各論

第1章 価格に関する鑑定評価

(第1節のつづき)

4 区分地上権

区分地上権とは、工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権をいう。

→平面的・立体的空間の分割による権利の設定部分の経済価値+設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値

区分地上権の価格は、一般に区分地上権の設定に係る土地(以下「区分地上権設定地」という。)の経済価値を基礎として、権利の設定範囲における権利利益の内容により定まり、区分地上権設定地全体の経済価値のうち、平面的・立体的 空間の分割による当該権利の設定部分の経済価値及び設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値を貨幣額で表示したものである。

この場合の区分地上権の鑑定評価額は、設定事例等に基づく比準価格、土地残余法に準じて求めた収益価格及び区分地上権の立体利用率により求めた価格を関連づけて得た価格を標準とし、区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求めた価格を比較考量して決定するものとする。

区分地上権の鑑定評価に当たって留意すべき事項は次のとおりである。

①区分地上権の特性に基づく経済価値

→割合としての価値、区分地上権の態様により価値特定

区分地上権の鑑定評価においては、特に次に掲げる区分地上権の特性に基づく経済価値に留意することが必要である。

ア 区分地上権設定地の経済価値は、当該設定地の最有効使用に係る階層等に基づいて生ずる上下空間の効用の集積である。したがって、区分地上権の経済価値は、その設定地全体の効用との関数関係に着目して、その設定地全体の経済価値に占める割合として把握される。→ 立体利用率による価格

イ 区分地上権は、他人の土地の地下又は空間の一部に工作物を設置することを目的として設定する権利であり、その工作物の構造、用途、使用目的、権利の設定期間等により、その経済価値が特定される。

→区分地上権の態様(工作物の構造等)により価値特定

②区分地上権の設定事例等に基づく比準価格

→設定形態類似性

区分地上権の設定事例等に基づく比準価格は、近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、必要に応じ事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因及び個別的要因の比較を行って求めた価格を比較考量して決定するものとする。

この手法の適用に当たっては、特に次に掲げる事項に留意しなければならない。

ア 区分地上権設定地に係る区分地上権の経済価値には、当該区分地上権に係る工作物の保全のため必要な他の空間の使用制限(保護層、荷重制限)に係る経済価値を含むことが多いので、区分地上権の態様、設定期間等設定事例等の内容を的確に把握すべきである。

イ 時点修正において採用する変動率は、事例に係る不動産の存する用途的地域又は当該地域と相似の価格変動過程を経たと認められる類似の地域における土地の変動率を援用することができるものとする。

ウ 地域要因及び個別的要因の比較においては、次に掲げる区分地上権に特有な諸要因について留意する必要がある。

特有な諸要因

▢地域要因→効用に寄与する他の不動産の類似地域等との均衡

▢個別的要因→設定部分の全体との関連における影響の程度

(ア)地域要因については、近隣地域の地域要因にとどまらず、一般に当該区分地上権の効用寄与する他の不動産(例えば、地下鉄の区分地上権の設定事例の場合における連たんする一団の土地のように、一般に広域にわたって存在することが多い。)の存する類似地域等との均衡を考慮する必要がある。

(イ)個別的要因については、区分地上権に係る地下又は空間の部分についての立体的及び平面的位置規模形状等が特に重要であり、区分地上権設定地全体との関連において平面的及び立体的分割の状態を判断しその影響程度を考慮する必要がある。

③区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により求める価格

近隣地域及び同一需給圏内の類似地域等において設定形態が類似している区分地上権の設定事例等を収集して、適切な事例を選択し、これらに係る設定時又は譲渡時における区分地上権の価格が区分地上権設定地の更地としての価格に占める割合をそれぞれ求め、これらを総合的に比較考量の上適正な割合を判定し、価格時点における当該区分地上権設定地の更地としての価格にその割合を乗じて求めるものとする。

→「更地としての価格×区分地上権割合」

なお、この手法の適用に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項(地域要因及び個別的要因の比較において留意すべき区分地上権に特有な諸要因)に留意する必要がある。

特有な諸要因

▢地域要因→効用に寄与する他の不動産の類似地域等との均衡

▢個別的要因→設定部分の全体との関連における影響の程度

④土地残余法に準じて求める収益価格

土地残余法に準じて求める収益価格は、区分地上権設定地について、当該区分地上権の設定がないものとして、最有効使用を想定して求めた当該設定地全体に帰属する純収益から、当該区分地上権設定後の状態を所与として最有効使用を想定して求めた当該設定地に帰属する純収益を控除して得た差額純収益を還元利回りで還元して得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。

(設定地全体の純収益-区分地上権設定後の残地の純収益)/還元利回り(=差額純収益/還元利回り)±契約内容等修正

⑤区分地上権の立体利用率により求める価格

区分地上権の立体利用率により求める価格は、区分地上権設定地の更地としての価格に、最有効使用を想定して求めた当該区分地上権設定地全体の立体利用率を基準として求めた当該区分地上権に係る立体利用率(当該区分地上権設定地の最有効使用を前提とした経済価値に対する区分地上権の設定部分の経済価値及び当該設定部分の効用を保持するため他の空間部分の利用を制限することに相応する経済価値の合計の割合をいう。)を乗じて得た額について、さらに当該区分地上権の契約内容等による修正を行って求めるものとする。

設定地全体の更地価格×区分地上権の(設定部分及び阻害部分)の立体利用率±契約内容等修正

なお、この手法の適用(立体利用率算定等)に当たっては、特に、前記②のウに掲げる事項(地域要因及び個別的要因の比較において留意すべき区分地上権に特有な諸要因)に留意する必要がある。

特有な諸要因

▢地域要因→効用に寄与する他の不動産の類似地域等との均衡

▢個別的要因→設定部分の全体との関連における影響の程度

鑑定評価を行うためには、資料を豊富に収集し、それらを比較検討することが大切です。

鑑定評価書の内容は、実質的に不動産鑑定士が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明するものです。

※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋

赤字の箇所は補足説明

字の箇所実務指針

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