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不動産専門家相談センター東京
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第3章 証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価
第5節DCF法の適用等
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。
Ⅰ DCF法の適用過程等の明確化
→論理的・整合性をもって報告書に記載
(1)DCF法の適用に当たっては、DCF法による収益価格を求める際に活用する資料を次に定める区分に応じて、その妥当性や判断の根拠等を鑑定評価報告書に記載しなければならない。
→資料3区分によるDCF資料妥当性、判断根拠を報告書記載
① 依頼者から入手した対象不動産に係る収益又は費用の額その他の資料をそのまま活用する場合
② 依頼者から入手した対象不動産に係る収益又は費用の額その他の資料に修正等を加える場合
③ 自ら入手した対象不動産に係る収益又は費用の額その他の資料を活用する場合
(2)DCF法による収益価格を求める場合に当たっては、最終還元利回り、割引率、収益及び費用の将来予測等査定した個々の項目等に関する説明に加え、それらを採用して収益価格を求める過程及びその理由について、経済事情の変動の可能性、具体的に検証した事例及び論理的な整合性等を明確にしつつ、鑑定評価報告書に記載しなければならない。また、複数の不動産鑑定士が共同して複数の証券化対象不動産の鑑定評価を行う場合にあっては、DCF法の適用において活用する最終還元利回り、割引率、収益及び費用の将来予測等について対象不動産相互間の論理的な整合性を図らなければならない。
(3)鑑定評価報告書には、DCF法で査定した収益価格(直接還元法による検証を含む。)と原価法及び取引事例比較法等で求めた試算価格との関連について明確にしつつ、鑑定評価額を決定した理由について記載しなければならない。
→DCF法による収益価格と直接還元法による価格との関連についても説明必要!
(4)DCF法の適用については、今後、さらなる精緻化に向けて自己研鑽に努めることにより、説明責任の向上を図る必要がある。
Ⅱ DCF法の収益費用項目の統一等
→比較容易性
(1)DCF法の適用により収益価格を求める場合に当たっては、証券化対象不動産に係る収益又は費用の額につき、連続する複数の期間ごとに、次の表の項目(以下「収益費用項目」という。)に区分して鑑定評価報告書に記載しなければならない(収益費用項目ごとに、記載した数値の積算内訳等を付記するものとする)。この場合において、同表の項目の欄に掲げる項目の定義は、それぞれ同表の定義の欄に掲げる定義のとおりとする。
項目 | 定義 | |
運営収益 | 貸室賃料収入 | 対象不動産の全部又は貸室部分について賃貸又は運営委託をすることにより経常的に得られる収入(満室想定) |
共益費収入 | 対象不動産の維持管理・運営において経常的に要する費用(電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用を含む)のうち、共用部分に係るものとして賃借人との契約により徴収する収入(満室想定) | |
水道光熱費収入 | 対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用のうち、貸室部分に係るものとして賃 借人との契約により徴収する収入(満室想定) | |
駐車場収入 | 対象不動産に附属する駐車場をテナント等に賃貸することによって得られる収入及び駐車場を時間貸しすることによっ て得られる収入 | |
その他収入 | その他看板、アンテナ、自動販売機等の施設設置料、礼金・更新料等の返還を要しない一時金等の収入 | |
空室等損失 | 各収入について空室や入替期間等の発生予測に基づく減少分 | |
貸倒れ損失 | 各収入について貸倒れの発生予測に基づく減少分 | |
運営費用 | 維持管理費 | 建物・設備管理、保安警備、清掃等対象不動産の維持・管理のために経常的に要する費用 |
水道光熱費 | 対象不動産の運営において電気・水道・ガス・地域冷暖房熱源等に要する費用(共用部分、貸室部分の区別なし) | |
修繕費 | 対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の通常の維持管理のた め、又は一部が毀損した建物、設備等につきその原状を回復するために経常的に要する費用 | |
プロパティマネジメント フィー(PMフィー) | 対象不動産の管理業務に係る経費 | |
テナント募集費用等 | 新規テナントの募集に際して行われる仲介業務や広告宣伝等に要する費用 及び テナントの賃貸借契約の更新や再契約業務に要する費用等 | |
公租公課 | 固定資産税(土地・建物・償却資産(建物の一部でも税務上償却資産となっているもの))、都市計画税(土地・建物) | |
損害保険料 | 対象不動産及び附属設備に係る火災保険、対象不動産の欠陥や管理上の事故による第三者等の損害を担保する賠償責任 保険等の料金 | |
その他費用 | その他支払地代(類型が借地権付建物の場合)、道路占用使用料(道路上空にせり出して設置された看板等)等の費用 | |
運営純収益 | 運営収益から運営費用を控除して得た額 ≒NOI※投資家の関心高い営業利益に相当 | |
一時金の運用益 | 預り金的性格を有する保証金等の運用益 ※「一時金の運用益」の利回りの考え方を付記 | |
資本的支出 | 対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の価値を高め、又はその 耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出 ※修繕費」との区分について税務上の整理等との整合性 | |
純収益 | 運営純収益に一時金の運用益を加算して資本的支出を控除した額 |
(2)DCF法の適用により収益価格を求めるに当たっては、収益費用項目及びその定義について依頼者に提示・説明した上で必要な資料を入手するとともに、収益費用項目ごとに定められた定義に該当していることを確認しなければならない。
(3)DCF法を適用する際の鑑定評価報告書の様式の例は、別表2のとおりとする。証券化対象不動産の用途、類型等に応じて、実務面での適合を工夫する場合は、同表2に必要な修正を加えるものとする。
4.DCF法の適用等について
DCF法の適用等に当たっては、次に掲げる事項に留意する必要がある。
(1)収益費用項目及びその定義を依頼者に説明するに当たって、各項目ごとの具体的な積算内訳など不動産の出納管理に関するデータ等と収益費用項目の対応関係を示すなどの工夫により、依頼者が不動産鑑定士に提供する資料の正確性の向上に十分配慮しなければならない。
(2)収益費用項目においては、信託報酬、特別目的会社・投資法人・ファンド等に係る事務費用、アセットマネジメントフィー(個別の不動産に関する費用は除く)等の証券化関連費用は含まないこと。「純収益」は償却前のものとして求めることとしていることから減価償却費は計上しないことに留意する必要がある。また、各論第3章第5節Ⅱ(1)の表に定める「運営純収益」と証券化対象不動産に係る一般の開示書類等で見られるいわゆる「NOⅠ(ネット・オペレーティング・インカム)」はその内訳が異なる場合があることに留意する必要がある。
(3)各論第3章第5節Ⅱ(1)の表の収益費用項目のうち「運営純収益」と「純収益」の差額を構成する「一時金の運用益」と「資本的支出」の算出について、「一時金の運用益」の利回りの考え方を付記するとともに、「資本的支出」と「修繕費」の区分については、税務上の整理等との整合性に十分配慮する必要があることに留意しなければならない。
(4)収益費用項目については、DCF法を適用した場合の検証として適用する直接還元法においても、同様に用いる必要がある。
鑑定評価を行うためには、資料を豊富に収集し、それらを比較検討することが大切です。
鑑定評価書の内容は、実質的に不動産鑑定士が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明するものです。
※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋
※赤字の箇所は補足説明
※青字の箇所は実務指針
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