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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(3)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
3 被告が提出した準備書面(1)について
(1)P1からP3(29行目)までに対して
本件差積は本件処分時予測し得なかったものとしている点は、訴状に記載のとおり被告の真意ではない。これについては、本書3(2)按分義務の履行に関する反論部分でさらに詳述した。
次に、引用した判例について述べる。施行条例は、土地区画整理事業において一般的に雛形とされているものがそのまま条例化されたものである。最初に断っておくが、原告は必ずしも施行条例の規定そのものを否定しているのではない。被告の法解釈及び実務上の適用を批判しているのである。法解釈及び適用の妥当性は、各事業の特性、背後の事情、経緯等を総合的に勘案して判断されるべきものであって、同一内容の条例でも事案(事業)によって法解釈、適用の基準は変わり得るのである。
訴状(7)ウからオまでの部分は、本件においてどのような解釈を前提に施行条例を適用すべきであったかについて、規範とすべき判例を示しながら論証したものである。そこで、解釈論に入る前に本件事業(本件従前地の態様も含む。)の特性を明らかにする必要があることから、最高裁昭和32年12月25日判決(以下「判例①」という。)、最高裁昭和55年7月10日判決及び最高裁昭和40年3月2日判決の判旨を理解した上で、これらの一部を引用したものである。
まず、合理的な基準地積が実測地積であることは判例を持ち出すまでもなく明白である。この見解に対し、被告は異論があるのだろうか。原告が判例の一部を引用したことを批判する意図が不明であるが、これらの判例は、いずれも合理的なのは実測地積であることを前提に、台帳地積によるのもやむを得ない場合があることを示すものであり、本件事業がこれらと同様に台帳地積によるのもやむを得ない状況下にあったか否かについて、その事業特性を明らかにしたうえで判断しなければならないのである。
そして、本件事業が災害復興を目的とするものではないことは被告の認めるところであり、また、緊急を要するものでもなかったことは訴状及び準備書面(2)で詳述したとおりである。念のために、必要性すらなかったことも付言しておく。さらに、本件事業区域の大部分は被告の認めるとおりかつて農地や山林であったことから、台帳地積と実測地積に開きがないのを普通とする市街地ではなかった。
以上から、原告は、これらの判例を規範とし本件事業は台帳地積を採用するのもやむを得ない場合といえるだけの前提要件を欠くものであることを論証したところである。参考として判例①の判旨をここに掲載する。なお、他の判例は、判例①の判旨を規範とするものである。
火災による罹災面積が極めて広大であり、一刻も早く復興ができることを一般市民が熱望するような状況の下において、土地面積につき実測主義を基礎として土地区画整理を施行することは、時、人手、費用等いずれの点からいつても不可能を強いるものであつて、却つて公共の福祉に適合しないと認められるから、この場合一応土地台帳地積によつて換地予定地指定をすることを定めた土地区画整理施行規程は、憲法第29条に違反するものではなく、したがつて右規程に基いてなされた換地予定地指定処分も無効ではないと解すべきである。
【行政事件裁判例集5巻7号1697頁】
本件事業開始時の状況と、上記判旨中下線を付した部分に相当するような状況とを同一視すべきでないことは異論なかろう。なお、施行規模についてであるが、判例①は鳥取大火災による180ヘクタールの罹災跡地復興に係る事案であり、本件事業区域(33ヘクタール)の5倍強の規模を誇る。火災による従前利用状況の把握にも混迷するような特殊な状況下であったものと推測する。また、次のとおり本件事業区域面積は決して広範囲といえる規模ではなく、施行者の資力等を考慮するとむしろ小規模事業の範疇に属するものである。
〇〇〇都道府県が公表する統計(甲50)によれば、公共団体施行平均では50haを超え、行政庁施行では平均90haを超える。また、全国平均においても同様の傾向を示しており、被告の主張は論拠を欠くものである。
さらに、被告は施行の8年前、既に全体の現況測量を行っており、地権者数が300名程度(被告の弁)であったとすれば、十分に全件測量を実施することは可能であった。しかも、市街化区域決定後、組合施行を画策するもそれに失敗したことにより無為に時間を浪費し、優先整備期限の10年を経過してしまったため、国や〇〇〇都道府県から尻たたきにでもあったのであろうか、慌てて事業決定する破目になった経緯を鑑みると、その緊急性は自らの怠慢、不手際により招来した、いわば自作自演のものである。
よって、施行条例第21条を唯一の基準地積決定方法とすることを正当化する根拠は見当たらない。すなわち、背景及び経緯並びに事業特性(以下これらを「本件事情」という。)を総合的に勘案すると、とても台帳地積によらざるを得ない状況下にあったなどという弁明は失当である。さらに分かりやすく言うと、本件事業を他の真っ当な土地区画整理事業と同一基準で考えてはならない。被告の怠慢、不手際による緊急性を大義名分に地権者の権利を犠牲にしてはならない。
ただし、施行条例にはいくつか補足規定が備わっているのであるから、被告の場合は本件事情や己の立場を十分にわきまえ、特に、これらの規定を重視し、権利者保護を図るべきだったのである。補足規定は基準地積決定方法をより合理化しようとするもの、すなわち基準地積を本来合理的と解される実測に近似させるための規定と解すべきだったのである。そうでなければ、補足規定の存在意義が失われる。まず、更正規定について、施行8年前の現況測量及び国有地等の実測義務に照らし、その対象となるものは比較的少数と考えられることから、数件職権更正を発動したところで事業のさらなる遅延をもたらすとは言い難く(事業前後における被告の不手際、怠慢による遅延と対比すべし。)、また、遅くとも当初案作成時及び妥協案受領時等に台帳地積と事実が相違することは容易に認識していた筈であり、この場合に職権更正を発動せずして、更正規定の趣旨、存在意義をどのように説明するのか。事実上、更正規定の趣旨が没却しているに等しい(更正件数0)ではないか。仮に、被告の当該更正権限が裁量に属するものであったとしても完全な自由裁量を許す趣旨と解することは誤りである。更正不作為が裁量の範囲内であったか否かについては、予見可能性、危険回避可能性、権利者の期待のみならず、権限不行使前後にわたる一切の事情(本件事情も含む。)が考慮されるべきで、かつ、結果の妥当性(本件においては著しく不合理な結果(何ら受益がないにもかかわらず異常な強減歩、神社尊厳破壊)をもたらした事実)をも考慮すべきである。
この点、被告は本件事情もわきまえずに単に条例の字面だけを拠り所に職権更正は自由裁量に属するものと独善的な解釈をしてこれを漫然と怠った(後述のとおり、正確には意図的に回避した)のみならず、妥協案を無視した上に自らが定めた換地設計基準までもないがしろにし、神社の尊厳を著しく破壊する醜く歪(いびつ)な地形を強要した。おまけに、その前段階における不正な路線価による背信行為をひたすら今日まで隠蔽してきたのであるから、被告の不法行為を否定する根拠など見当たらない。
被告の条例解釈に係る反論はすべて条文をそのまま引用しているだけの中身のないものばかりで、各規定の存在意義を論じたものがない。ただ単に漫然と字面のみを追いかけ鵜呑みにしているだけで解釈とは言えない。何故その規定が置かれているのかということは考えないのだろうか、その姿勢は理解に苦しむ。
なお、被告が掲げた判例(乙3)は、事業背景、事業特性(事業規模)等が不明であり、判例(乙4)は、施行者は地権者の時効取得成立をも予期して職権更正すべきとの趣旨で訴えが提起されたものであることから本件とは事情が大きく異なり、また、更正規定が施行者の自由裁量、言い換えれば恣意性をも許容する趣旨であるとはしておらず、そこまで踏み込む必要の無い事案であったことから単に裁量に委ねられるとしたに過ぎず、さらに更正不作為が直ちに違法となるものではないとしているだけでその他の事情によっては違法となり得る可能性を一切排除したものではない。よって、いずれも本件に係る規範とはし難い。
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