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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.92

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇〇)第〇〇〇号 上告提起事件

上告人  〇〇〇〇

被上告人 〇〇〇 

上告理由書

〇〇〇年〇月〇日 

最高裁判所 御中

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

上告人 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

 

四 争点四「損失補償請求権の存否」

法101条1項ないし3項項の規定を挙げて、「従前地の使用収益ができなくなる一方で、仮換地における使用収益が確保されない場合に限って損失補償規定を設けているが、仮換地の指定によって生じる減歩分の使用収益の制限については、強減歩の場合も含めて補償規定を置いていない。」とし、また「法は、仮換地における使用収益が確保されないまま従前地の使用収益に制限が加えられる場合には、これに対して損失補償を行うことを定める一方、仮換地が指定され、その使用収益が確保される場合には、減歩が生じたとしても、これにより利用価値の減少が生じたか否かを吟味して損失補償の対象とすることはせず、換地処分の段階において、換地の交換価値が従前地よりも減少している場合には、少なくとも差額分について、清算金あるいは減価補償金で補償される仕組みをとっているものということができる。」と文字解釈を示した。

そして、本事件にこの解釈をあてはめ、「換地の交換価値が従前地から減少する場合に前記補償措置が講じられていることを勘案するならば、仮に、控訴人らが主張するように本件仮換地の交換価値が従前地に比較して減少しており、この交換価値の減少分に対応して抽象的には利用価値の減少が観念できるとしても、このような負担は、土地区画整理事業の施行区域内の宅地所有者として受忍すべき限度を超えた特別の犠牲には当たらない」とした。

さらには、「公簿地積により基準地積を定めることも許されることは既に述べたとおりであり、本件従前地については、本件仮換地の指定がされ、使用収益が開始されている」のであるから、前記解釈が妥当するとし、次の事項を掲げたうえで「別異の取扱いを是とする事情はない」とした。

○ 施行条例に基準地積の更正期限が事業計画の決定の公告があった日から60日以内と定められていたにもかかわらず、〇〇はその期限である〇〇〇〇〇〇〇日までに地積の更正の申請をしていないこと

○ 〇〇は、仮換地の指定について、地形に関する要望を述べたが、地積に関しては、(中略)図面を閲覧しながら、何らの異議も述べず、仮換地は確定したこと

○ 約30年経過していること

○ 本件神社東側及び北側の山林部分を積極的に使用収益した事実がないこと 

五 争点五「増換地変更により対応した他の地権者との不公平性」

これについては、何ら判断がなされていない。 

六 争点六「不当利得返還請求権の存否」

本件処分に違法な点がないから、不当利得返還請求に理由なしとした。 

七 争点七「控訴人らに生じた損害(損失)」及び争点八「消滅時効の成否」

これらについては、検討するまでもなく控訴人らの請求には理由がないとし、控訴人らの請求をいずれも棄却した。 

第5 原判決に対する反論

一 争点一「本件処分の違法性」

1 基準地積の違法性

原判決は、控訴人らの主張を「基準地積を公簿地積としたことの違法性」とし、その趣旨を曲解して要約している。

控訴人らがこれまで基準地積を公簿地積としたことをもって違法だと主張した事実はない。控訴人らは、訴状に「事実に相違する不合理な基準地積」と題したうえで、職権更正義務の不履行や按分義務の不履行により実測地積と大きく乖離した基準地積が採用されたことにつき、違法だと主張してきたのである。ここに参考とすべき判例を掲げる。

「主観的使用価値を無視し従前の地積よりも著しく減歩した地積を指定することは法の精神に背馳するものというべきである。しかも本件宅地は略方形であったものが、その換地予定地は(中略)一種異様な形状を呈しており、斬様な換地の指定は、もともと宅地の利用を増進することを主眼とした土地区画整理の目的に反し、前述のとおり、地積を著しく減歩せられたことと相俟って、原告は、従前の宅地に比較して著しく利用価値の劣る換地の交付を受け、甚だしい犠牲を強いられる結果となった」として仮換地指定が取り消された判例(松山地方裁判所昭和24年(行)第54号昭和26年2月28日判決/行政事件裁判例集2巻2号311頁)がある。

もっとも、基準地積を公簿地積とされた事実もなく、基準地積として採用されていたのは、一部の筆を除き地積更正前の公簿地積に〇〇〇が定めた按分率を乗じて算出された地積である。

したがって、原判決が冒頭掲げた複数の最高裁判例は、あくまで控訴人らの主張の趣旨と異なる「基準地積を公簿地積としたことの違法性」を否定する論拠とはなり得ても、続く「(1)実測申請期限の不当性」や「(2)職権更正義務の不履行」等を否定する論拠とはなり得ない。

補足すれば、これらの判例はかなり古い時代の土地区画整理事業に関するものばかりで、当該事業の施行規程の中には、施行条例における職権更正や按分義務の規定に相当する規定が盛り込まれていない事件に係るものばかりであるから、本事件とは事情が異なり、適合しない。

よって、「(1)実測申請期限の不当性」に係る控訴人らの主張した次に掲げる現実を考えれば、実測申請の途が規定されているだけでは、事実上、地権者への配慮として不十分であり、原判決にはこれらの主張に対する排斥理由が示されていなければならないが、何らその記載がない。

○ 施行条例の公布・施行が事業計画決定公告より後になされるという不手際で申請期間は事実上1か月半程度しかなく、あまりにも短すぎること

○ 測量費用は全額申請者負担であること

○ 隣接地権者全員が確認印を押印した境界確認書及び実測図を作成したうえでこれを申請期間内に提出しなければならないこと(施行条例22条1項の「施行者が別に定める要領」に規定されている。)

○ 隣接地権者全員の押印に係る真正を担保するために煩雑な手続きを要することまたはこれに代わる手段としてこれらの者の印鑑証明書を添付しなければならないことから他人の協力が不可欠であること(施行条例22条1項の「施行者が別に定める要領」に規定されている。)

○ 地権者の大部分は土地区画整理事業や不動産に関する知識が欠如していること等から、〇〇〇が説明したところによると申請件数は地権者700名強のうち1%にも満たない僅か3件であったこと

○ 控訴人らが行った本件従前地の地積更正に係る測量では10か月もの期間を要し、費用も数十万円に上ったこと

○ 隣接〇〇〇有地(赤道)との境界確認では〇〇〇に信義則違反ともとれる立会拒否に遭う等質的にも量的にも1~2ヶ月で完了できる作業ではないこと

○ 他人の立会や印鑑の真正証明手続きに係る協力及び境界の合意が得られない場合は、境界確定訴訟を提起するより他に道はなく、確定まで数年かかる場合でさえ稀ではないこと

以上のとおり、原判決は、控訴人らの主張を曲解したうえに本事件に適合しない判例を掲げただけで、控訴人らの主張に対し何ら合理的な理由を示さずに排斥している点で、理由の不備、理由祖語があり、(民事訴訟法第312条第2項第6号)、結果として財産権侵害を助長する憲法29条違反、ひいては憲法解釈に誤り(民事訴訟法第312条第1項)がある。

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