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不動産専門家相談センター東京
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第9章 不動産鑑定評価報告書
(第2節のつづき)
Ⅴ 鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連→価格(賃料)の種類の妥当理由
鑑定評価の依頼目的に対応した条件により、当該価格又は賃料を求めるべきと判断した理由を記載しなければならない。特に特定価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠、また、特殊価格を求めた場合には文化財の指定の事実等を明らかにしなければならない。
・特定価格等を求める条件は、基準総論第5章規定の対象確定条件等に該当しない、依頼目的(鑑定評価目的)に対応した条件である。
・特定価格は、法令等による社会的要請を背景にして求めるものであるので、当該法令等による社会的要請の根拠を記載する。
・正常価格を求める場合は、その前提となる合理的と考えられる条件を満たす市場を前提としている旨を記載する。
・特定価格や限定価格等を求めた場合には、依頼目的に対応した条件の設定により正常価格の前提となる諸条件を満たさなくなるため、依頼目的と設定した条件との関係を明確に記載する必要がある。
特に特定価格は、法令等による社会的要請を背景にして求めるものであるので、当該法令等による社会的要請の根拠を記載する必要がある。
なお、特定価格として求める要件に該当するが、対象不動産について、結果的に正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離しないと判断された場合は、価格の種類としては「正常価格」となるが、乖離する場合と同様に、根拠となる法令等による社会的要請の内容及び依頼目的(鑑定評価目的)に対応した条件を記載するとともに、正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離しないと判断した理由を記載する。
□基準各論第3章第1節に規定する証券化対象不動産の鑑定評価目的の下で投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合
・依頼目的
資産評価(資産の流動化に関する法律第40 条第1 項8 号に基づき投資家に価格を開示するため)
・依頼目的に対応した条件と価格の種類との関連
「依頼目的により、本件鑑定評価は、資産の流動化に関する法律第40 条第1 項8 号に基づく(具体的な法令条項等を特定することが困難な場合は、「投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求めるもの」としても構わない。)投資家に開示するための価格を求めるものであり、資産流動化計画により予定された運用方法を所与として、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を表す価格を求めるものである。当該運用方法は、対象不動産の最有効使用と異なると判断される。したがって、本件鑑定評価で求める価格は特定価格(投資採算価値を表す価格)である。」
(正常価格と一致する場合)
「依頼目的により、本件鑑定評価は、資産の流動化に関する法律第40 条第1 項8 号に基づく投資家に開示するための価格を求めるものであり、資産流動化計画により予定された運用方法を所与として投資採算価値を表す価格を求めるものである。しかし当該運用方法は、対象不動産の最有効使用と異ならないと判断される。また、対象不動産の典型的な市場参加者は投資家であり、対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を標準として価格形成されているものと判断される。したがって、本件鑑定評価は、投資採算価値を表す価格を求めるものであるが、正常価格と一致するため、求める価格は正常価格である。
鑑定評価に当たっては、投資家保護の観点から対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいて鑑定評価額を決定する。」
依頼目的に対応した条件
・資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とする。
・対象不動産の収益力を適切に反映する収益価格に基づいた投資採算価値を求める。
□民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合
・依頼目的 資産評価(民事再生法第124 条に基づく財産評定のため)
・依頼目的に対応した条件と価格の種類との関連
「依頼目的により、本件鑑定評価は、民事再生法第124 条に基づく財産評定のための鑑定評価を行うものであり、同法に基づき「処分するものとして」の価格、すなわち、早期売却を前提とした価格を求める。当該価格は、正常価格が前提とする通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とする価格であり、対象不動産の市場からは正常価格と異なることが推定される。したがって、本件鑑定評価では、特定価格(早期売却を前提とした価格)を求める。」
・依頼目的に対応した条件
市場公開期間を〇か月とする(対象不動産の通常の市場公開期間( 通常の市場公開期間を具体的に記載する必要はないが、価格時点における対象不動産の属する市場の需給動向を勘案した期間について鑑定評価書の利用者に説明できるようにする必要がある。)より短い期間)。
□会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合
・依頼目的
売却(会社更生法第46 条に基づく事業の譲渡のため)
・依頼目的に対応した条件と価格の種類との関連
「依頼目的により、本件鑑定評価は、会社更生法第46 条に基づき、事業の全部の譲渡又は事業の重要な一部の譲渡を行うに伴い、現在の事業の継続を前提とした価格を求める。当該利用は、対象不動産の最有効使用と異なると判断される。したがって、本件鑑定評価では、事業の継続を前提とした価格として特定価格を求めるものである。」
・依頼目的に対応した条件(ここでは、事業継続の例示のため、早期売却の考慮の要否については記載していない。)
・対象不動産の価格時点現在の利用現況(事業内容)を所与とする。
・現状の事業が継続されるものとして、事業経営に基づく純収益のうち不動産に帰属する純収益に基づく収益価格に基づいて鑑定評価額を決定する。
Ⅵ 価格時点及び鑑定評価を行った年月日(評価時点)
・価格時点は、不動産の鑑定評価に関する法律施行規則に規定されるように年月日をもって表示すべき
・鑑定評価を行った年月日とは評価時点のことであり、鑑定評価の手順が完了した日すなわち鑑定評価報告書に鑑定評価額を表示した日と考えられる。価格時点と同様に同施行規則により、鑑定評価書記載事項とされる。
・鑑定評価を行った年月日の相違により、同一不動産の同一価格時点の鑑定評価額が異なる(資料収集可能性や価格形成要因分析の正確度の違いにより)、こともあるので、鑑定評価を行った年月日の記載は、不動産鑑定士の誠実性を立証する根拠ともなるのである。
鑑定評価を行うためには、資料を豊富に収集し、それらを比較検討することが大切です。
鑑定評価書の内容は、実質的に不動産鑑定士が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明するものです。
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