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不動産専門家相談センター東京
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第9章 不動産鑑定評価報告書
(第2節のつづき)
Ⅶ 鑑定評価額の決定の理由の要旨
鑑定評価額の決定の理由の要旨は、下記に掲げる内容について記載するものとする。
1 地域分析(市場分析重要)及び個別分析(市場分析重要)に係る事項 →地域分析に係る事項・個別分析に係る事項
対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じ、同一需給圏及び近隣地域の範囲及び状況、対象不動産に係る価格形成要因についての状況、同一需給圏の市場動向及び同一需給圏における典型的な市場参加者の行動、代替、競争等の関係にある不動産と比べた対象不動産の優劣及び競争力の程度等について記載しなければならない。
2 最有効使用の判定に関する事項
最有効使用及びその判定の理由を明確に記載する。なお、建物及びその敷地に係る鑑定評価における最有効使用の判定の記載は、建物及びその敷地の最有効使用のほか、その敷地の更地としての最有効使用についても記載しなければならない。
3 鑑定評価の手法の適用に関する事項
適用した鑑定評価の手法について、対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章の 規定並びに地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等との関係を記載しなければならない。
鑑定評価の手法の適用について
対象不動産の種別及び類型並びに賃料の種類に応じた各論第1章から第3章に規定する鑑定評価の手法の適用ができない場合には、対象不動産の市場の特性に係る分析結果等に照らし、その合理的な理由を記載する。
□適用できるにもかかわらず特定の手法の適用を省略した場合には、複数の鑑定評価方式の考え方の反映を含む、その合理的理由を鑑定評価報告書に記載する。
□適用しない手法について、市場分析によるものと資料等が不十分によるものとを明確に記載する。
・鑑定評価の手法については、対象不動産の類型等に応じて、基準各論第1章から第3章に原則的に適用すべき手法が規定されている。
鑑定評価報告書には、まず各論に規定された内容を記載したうえで、特に一部の手法を適用しない等、その内容と異なる手法の適用を行った場合には、対象不動産の市場の特性や収集できた資料の内容等との関係を踏まえ、典型的な市場参加者の価格等の判断と鑑定評価方式の考え方や鑑定評価の手法との適合性はどうか、また当該適合性の判断を踏まえ、複数の鑑定評価方式の考え方は適用する手法の中にどのように反映されているかについて、その合理的理由を記載する必要がある。
一部の手法を適用しない理由としては、適用するための適切な資料が十分に収集できなかったことによる場合(鑑定評価を行うための要件を満たし、事例不動産の概要が把握できる取引事例が収集できず、取引事例比較法が適用できない場合等。適用が困難な場合は、鑑定評価としての精度が満たせるかの検討も必要となる。)(適用が困難な場合)と、対象不動産の典型的な市場参加者の価格等の判断と鑑定評価方式の考え方や鑑定評価の手法との適合性による場合(市場の特性等を踏まえ適用しない場合)とがあるので、その違いを明確にして理由を記載する必要がある。
4 試算価格又は試算賃料の調整に関する事項
試算価格又は試算賃料の再吟味及び説得力に係る判断の結果を記載しなければならない。
5 公示価格との規準に関する事項
→地価公示法により、公示区域内の土地について、正常価格を求めるときは公示価格を規準としなければならないとされている。公示価格を規準とするとは、対象土地の更地価格を求めるに際して、対象土地と類似の利用価値を有すると認められる一又は二以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因の比較を行い、その結果に基づき、標準地の公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。
6.当事者間で事実の主張が異なる事項 (に関する取扱い)
対象不動産に関し、争訟等の当事者間において主張が異なる事項が判明している場合には、当該事項に関する取扱いについて記載しなければならない。
鑑定評価においては、一般的な価格形成要因に係る不明事項以外に、契約締結の経緯や賃料改定に係る合意内容等の事実について賃貸借当事者間において認識が一致せず争いがあるなど、契約内容や契約経緯(契約締結及びその後の更新等)、契約対象範囲等の事実についての不確定事項が存在する場合がある。
これらの不確定事項がある場合、依頼者との協議の上、合理的な一定の前提条件のもとに鑑定評価を行うことになるが、これらの当事者間で主張の異なる不確定事項の取扱いについては、鑑定評価書の利用者に誤解を与えないように鑑定評価報告書に記載することが望ましい。このような場合の例としては、契約締結の経緯、賃料改定に係る合意内容等の事実について書面等がなく、口頭説明のみであったため、賃貸借当事者間において認識の不一致などの争いがある場合、当事者の一方からのみの情報による場合などが掲げられる。
対象不動産に関し、争訟等の当事者間でこのような事実が存することを不動産鑑定士が把握できた場合(訴訟の当事者間において争いのある事実は、訴状、答弁書、準備書面、証拠資料等から把握することが可能である。特に答弁書は原告の主張する事実に対する認否が記載され、被告の抗弁事実、重要な関連事実及び証拠が記載されることが一般的であるので、訴状と併せて答弁書を検討することにより争いのある事実をある程度把握することができる。)には、争いがある旨と鑑定評価の前提とした事実を記載する必要がある。
争いのある事実が鑑定評価に影響を与える場合、鑑定評価の前提とした事実を記載することにより、法曹実務家等に解りやすく、比較検証が可能な鑑定評価を行うことが可能となる。
【例示】
□当事者間で事実の主張が異なる事項について
本件賃貸借契約は、賃料自動改定条項により3 年毎に○%の賃料を値上げする約定がある。当該条項は契約を開始した平成○○年○月○日から価格時点の期間において、過去3 回適用されており、最後に適用されたのは平成××年×月×日である。
賃貸借当事者間では、直近合意時点について争いがあり、賃貸人は平成××年×月×日を、賃借人は平成○○年○月○日を、それぞれ主張している。
本件の鑑定評価では、契約を開始した平成○○年○月○日が現実に合意した賃料が適用された時点であることから、当該時点を直近合意時点として鑑定評価を行っている。
7 その他
総論第7章第2節Ⅰ1.に定める支払賃料を求めた場合には、その支払賃料と実質賃料との関連を記載しなければならない。
→実質賃料からいかにして一時金運用益や償却額を控除して支払賃料を求めたかについて具体的に記載することが必要である。実質賃料の原則により、実質賃料を求めてからその一部として支払賃料を求める。
また、継続賃料を求めた場合には、直近合意時点について記載しなければならない。
□直近合意時点の基本的な考え方
賃料の鑑定評価では実質賃料を求めることが原則とされており、一時金に関する条件が設定されて、実質賃料とともに支払賃料を求めた場合には、両者の関連を記載する必要がある。
また、継続賃料の鑑定評価は、原則として、直近合意時点から価格時点までの事情変更を考慮するものであり、直近合意時点は事情変更を考慮する起点となるものであるので、賃料改定の覚書、賃貸借契約書などの賃料改定に係る書面、賃貸借当事者の説明などから直近合意時点を適切に確定及び確認することが重要である。
下記の場合は、一般に、直近合意時点の確定が妥当でないと判断される場合である。
・賃料自動改定特約があり自動的に賃料改定がされている場合に、当該自動的に賃料が改定された時点を直近合意時点としている場合
この場合は、賃料自動改定特約の設定を行った契約が適用された時点を直近合意時点とすべきである。
・賃料改定等の現実の合意がないまま契約を更新している場合に、当該契約を更新した時点を直近合意時点としている場合
この場合は、本来は、現実の合意があった最初の契約締結した賃料が適用された時点を直近合意時点とすべきである。
・経済事情の変動等を考慮して賃貸借当事者が賃料改定しないことを現実に合意し、賃料が横ばいの場合に、当該横ばいの賃料を最初に合意した時点に遡って直近合意時点としている場合
本来は、賃料を改定しないことを合意した約定が適用された時点とすべきである。
上記のように、賃料自動改定特約がある場合の直近合意時点の確定に関する判例として、最高裁判例(最高裁判例平成20 年2 月29 日裁判所時報1455 号1 頁)(最高裁平成20 年判例)は、賃料自動改定特約によって増額された賃料は、契約締結時の将来の経済事情等の予測に基づくものであり、改定時において現実に合意された賃料ではないから、直近合意賃料とはならないとし、事情変更の起点となる時点は、賃料自動改定特約を合意した時点としている。
このように、賃料増減請求について判断する際には、契約当事者間で現実に合意した時点(合意時点と合意した賃料が適用された時点に乖離がある場合は合意した賃料が適用された時点となる)が基準となる。
□直近合意時点と使用収益開始時点との関係について
平成15 年10 月21 日の最高裁判例(最高裁判例平成15 年10 月21 日裁判所時報1350 号1 頁)(最高裁平成15 年判例)は、「借地借家法第32条第1 項の規定に基づく賃料増減額請求権は、賃貸借契約に基づく建物の使用収益が開始された後において、賃料の額が、同項所定の経済事情の変動等により、又は近傍同種の建物の賃料の額に比較して不相当となったときに、将来に向かって賃料額の増減を求めるものと解されるから、賃貸借契約の当事者は、契約に基づく使用収益の開始前に、上記規定に基づいて当初賃料の額の増減を求めることはできないものと解すべきである」と判示している。
最高裁平成15 年判例を要約すると、契約締結が賃貸借の使用収益開始前であるが、使用収益開始後において賃料増減請求権が行使できることを予定していることから、使用収益開始前から賃料増減請求はできないと判示している。
この点について、「借地借家法第32 条の賃料増減額請求権は、建物賃貸借契約が長期間に及び得るものであることから、公平の原則に基づいて認められたものであり、もともと、賃貸借契約開始後において、現行の賃料が「不相当となったとき」に爾後の賃料額の増減を認めるために設けられた規定である。また、当初賃料額は、賃料相場等とは無関係に当事者が自由に決めることができるものであって、借地借家法が介入すべきものではないと考えられる。そして、契約締結当時に当事者が合意した当初賃料額は、契約に基づく使用収益の開始時点の賃料額であって、契約締結時点の賃料額ではない。
これらに鑑みると、当初賃料額そのものを、契約に基づく使用収益の開始前に、借地借家法第32 条に基づいて一方的に増減できるものではないと考えられる。」(松並重雄調査官「最高裁判例平成15 年10 月21 日判例解説」『法曹時報』(法曹会)58巻4 号212 頁)との最高裁判所調査官の解説がある。
このように、最高裁平成20 年判例及び最高裁平成15 年判例を踏まえると、契約締結により賃料を現実に合意した時点と使用収益開始時点が異なる場合については、使用収益開始時点、すなわち、賃料が適用された時点を直近合意時点とすることが妥当である。
□直近合意時点は鑑定評価報告書の必要的記載事項
直近合意時点は、鑑定評価報告書の必要的記載事項として必ず記載しなければならない。(基準総論第9章第2節Ⅶ7.参照。)
□依頼者との確認事項等
直近合意時点は、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点であり、賃料改定の覚書、賃貸借契約書などの賃料改定に係る書面、賃貸借当事者の説明などから当該時点を適切に確認することが必要である。
【例示】
・直近合意時点 平成○○年△月○日
平成○○年□月△日付の賃料改定に係る覚書により、上記の時点が現行賃料を現実に合意して適用した時点である。
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