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不動産専門家相談センター東京
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各論
第1章 価格に関する鑑定評価
第3節 建物
建物は、その敷地と結合して有機的に効用を発揮するものであり、建物とその敷地とは密接に関連しており、両者は一体として鑑定評価の対象とされるのが通例であるが、鑑定評価の依頼目的及び条件により、建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価又は建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合における建物のみの鑑定評価がある。
□建付地は、建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているため、建物等と密接な関連を持つものであり、したがって、建付地の鑑定評価は、建物等と一体として継続使用することが合理的である場合において、その敷地について部分鑑定評価(依頼内容に応じて付加される対象確定条件に従って行われる評価)をするものである。
□建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合【建物の部分鑑定評価】
Ⅰ 建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価※鑑定評価報告書には敷地についても記載する。
この場合の建物の鑑定評価は、その敷地と一体化している状態を前提として、その全体の鑑定評価額の内訳として建物について部分鑑定評価を行うものである。
この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法※による収益価格を比較考量して決定するものとする。
ただし、複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分して求めた価格を標準として 決定することもできる。
※建物残余法
不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって敷地の価格を求めることができるときは、当該不動産に基づく純収益から敷地に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(建物残余法という。)を適用することができる。建物残余法は、土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である。
□建物の鑑定評価額は、旧基準では、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとなっていたが、積算価格を標準とし、比準価格及び収益価格は比較考量するものと改正された。さらに、複合不動産の価格を配分して求めた価格を標準とすることもできるものとされた。
□建物の鑑定評価額は、積算価格を標準とし、比準価格及び収益価格を比較考量して決定することを原則とする。
□ただし、複合不動産価格をもとに配分して求める方法を標準とすることもできる。
□類型としての「建物」には、建物のほか付属物、構築物等も含まれる。第3節においての「建物」とはそのような概念で使用されている。
□建物は、その敷地と結合して有機的に効用を発揮するものであり、建物の鑑定評価は、建物及びその敷地の内訳として建物について部分鑑定評価を行うものである。この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。部分鑑定評価における建物の価格は、建物に関する個別的要因のみならず当該建物及びその敷地の存する近隣地域の地域要因並びに当該建物及びその敷地に関する個別的要因との関連において形成されるものであり、原価法において減価修正を行うに当たっても、物理的、機能的及び経済的要因を考慮することが必要である。
さらに、建物の鑑定評価額は、複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる。
例えば、貸家及びその敷地の鑑定評価で、収益性の高い物件の場合、市場の動向によっては比準価格や収益価格が積算価格を大きく上回る例も見受けられ、収益価格を中心に鑑定評価額が決定された場合には、複合不動産の積算価格と鑑定評価額との間に乖離が生じる可能性がある。このような場合には、複合不動産の積算価格と鑑定評価額との乖離部分について、建物に適切に配分する必要がある。建物は土地と結合して初めてその効用を発揮するものであるから、単純に建物単独の積算価格をもって建物価格とするようなことがあってはならない。
なお、内訳として建物について部分鑑定評価を行うことから、鑑定評価報告書には、建物に関するもののほか、当該建物の敷地についても、その位置、周辺環境、地積、間口、奥行、接面街路との関係等、地域要因、個別的要因のうち建物及びその敷地の価格形成に特に影響を及ぼす重要な要因について記載する必要がある。
建物について
複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分する方法 は、「1.(2)建付地について」で述べる方法に準ずるものとする。
□複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分する方法は、複合不動産から当該敷地に帰属する額を配分する方法に準ずる。したがって、前記の複合不動産から当該敷地に帰属する額を配分する方法における留意事項は、建物に帰属する額を配分する方法の留意事項として読み替えるものとする。複合不動産価格をもとに建物に帰属する額を配分する方法には、主として割合法と控除法の二つの方法が考えられる。
□建物の部分鑑定評価は、建物だけの鑑定評価を行うといっても、敷地と一体化している状態を前提とするのであるから、求められた価格の種類は正常価格である。なぜならば、建物とその敷地が一体化して取引される場合は、正常価格が成り立つので、その内訳としての建物について正常価格が成り立つからである。
□積算価格
建物の再調達原価を求め、これに物理的、機能的、経済的な減価要因による減価修正を行って積算価格を求める。
□比準価格
自用の建物及びその敷地の取引事例を収集し、その取引事例の価格について配分法を適用して建物の価格を求め、これを事例資料として取引事例比較法による比準価格を求める。
□収益価格
近隣地域又は同一需給圏内において同種類の不動産を求め、当該家賃に基づく純収益から土地に帰属する純収益を控除して建物に帰属する純収益を得(建物残余法)、この純収益と比較して対象建物の純収益を求め、これを資本還元することにより当該建物の収益価格を求める。
以上、各試算価格を関連づけて建物価格を求めるには、建物とそれに関連する敷地についての個別的要因ならびに建物とその敷地との関連性についても十分留意すべきである。
Ⅱ 建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合における建物のみの鑑定評価
→建物及びその敷地が一体として市場性を有しない場合 【一般に特殊価格】
この場合の建物の鑑定評価は、一般に特殊価格を求める場合に該当するものであり、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産のうち建物について、その保存等に主眼をおいて行うものであるが、この場合における建物の鑑定評価額は、積算価格を標準として決定するものとする。
□特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。特殊価格を求める場合を例示すれば、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物又は現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産について、その保存等に主眼をおいた鑑定評価を行う場合である。
※費用面から経済価値を追求するもので、文化的価値を求めるものではない。
鑑定評価を行うためには、資料を豊富に収集し、それらを比較検討することが大切です。
鑑定評価書の内容は、実質的に不動産鑑定士が自己の専門的学識と経験に基づいた判断と意見を表明するものです。
※アンダーラインを付した箇所は運用上の留意事項より抜粋
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