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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(2)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
(3)P3について
① 本件事業終了見込みについては、被告がホームページで公表しているものをそのまま引用したものである。不服であれば、ホームページを修正すべきである。一部事実の記載が不適切(不十分)なのは被告の方である。
② 被告が組合施行として始まった旨の説明を行ったことから、それをそのまま引用しただけである。〇〇〇年〇月〇日、区市町村議会議員立会のもとに区市町村長を始めA、B両事務員から次のように説明された。〇〇〇年代に○○区市町村が旗振り役となり組合施行として事業を進めようと試みたものの、組合が機能せず頓挫してしまったことから業を煮やし、組合からの依頼で○○区市町村が引き継ぐ形をとって○○区市町村施行としたものであると。よって、被告の説明を忠実に記載したものである。
なお、遅延化、長期化、事業計画変更〇回の事実については反論がないので認めているものと思料する。
③ ○○区市町村の人口増等反論部分については裏付ける証拠の提出を求める。いずれにしても、この部分の原告主張の趣旨は、端的にいうと長期的視点に立っていれば本件事業は不必要であったということに尽きる。なにも〇〇〇年前後に○○区市町村の人口が増加傾向にあったことのみでは、本件事業敢行の正当性を訴えるにはあまりにも説得力を欠く。
④ 都市計画運用指針を持ち出した真意をまったく汲み取れていないことには失望する。行間を読めないとはこのことだ。そもそも、都市計画道路整備が主目的なのであるから区画整理(一体整備)は“初めから”行うべきではなかった、路線買収方式で十分であったというのが原告主張の根幹である。途中で中止すべきだったとか区域変更すべきだったなどと言っているのではない。長期的視点を欠く誤った将来像に基づき、何の思慮もなく敢行したことが愚かだと言っているのである。○○区市町村の例を掲げたのも同様で、今となっては、区画整理のあり方は見直されている、気づくのが遅すぎた、見通しが甘かったことを謙虚に反省すべき場合があるということである。
なお、被告の主張には無意識のうちにであろうが本件事業の不必要性を自覚している節がある。同指針の趣旨を端的に表すると長期未執行のものは必要性をよく見直せということである。その背後には着手してしまったものはやむを得ないものもあるという苦渋の判断がある。これは中途半端に事業を打ち切るのはかえって非効率な場合があるからである。この点、被告は指針の字面だけを根拠に本件事業は既に着手しているのだから指針には該当せず、検証も反省も不要だと主張しているのだから始末におえない。○○区市町村〇〇地区の例は未着手であったことが結果的に幸した例である。事業目的や立地条件等、あらゆる点で本件事業に酷似しており、相違点としては本件事業よりも10年早く都市計画決定されているという事実である。施行者(○○区市町村)は、事業廃止に至る検証の中で、民間開発等により宅地供給が進んでいることから事業による宅地供給の必要性は低下、人口の減少傾向すなわち宅地需要の縮小、さらに、都市計画道路は個別に整備が進んでおり、面的かつ一括的に整備を行う必要性が低下したものと結論づけた。これに対し、被告は〇〇地区と同様に〇〇〇年代には事実上事業化を決意(〇〇〇年に市街化区域に決定)しておきながら大きく遅れて〇〇〇年に漸く都市計画決定し、矢継ぎ早に本件処分を下した。おまけにこの長期化、遅延化という体たらくである。せめて10年早く都市計画決定し公約通り早期に完了していればまだ批判も少なかろう。これでは必要性、緊急性が聞いて呆れる。被告は途中で気付いた筈である。見込んでいたほどの宅地需要がないことに、つまり、急いで事業を進める必要性がないことに。〇〇線だけ優先的に整備して、後はゆっくりやればよいと。
本件事業区域が、〇〇地区と同様に未着手であったならば、同地区と同様の結末を迎えた蓋然性は極めて高い。
⑤ 駅からの距離については、1kmや1.3kmといった距離を近いとみるか遠いとみるかであるが、社会通念上、徒歩で10分以内に到着できるか否かにより駅近か否か、交通接近条件の良否が判定される。すなわち、一般的健常者による1分間当たりの標準的な歩行距離80mを基準に換算すると1kmの最短部分ですら12.5分を要し、1.3kmの中心部分は16.25分もの時間を要することからとても好立地とはいえない。ちなみに本件地辺りでは25分程度を要する。都心への有用な移動手段をJR以外に持たない本件区域においては、〇〇駅への接近条件が土地の利用価値、有効利用可能性の程度及び宅地開発の適否を判定するうえで最も重要な尺度となる。要するに、造成素地としてはお世辞にも良好な立地条件とはいえず、旺盛な宅地需要など見出すべき根拠はどこにも存在しない。この点の認識を欠いた被告の判断の甘さが、後で述べる本件事業区域の低利用という現状を招いたのである。
〇〇地区については、〇〇〇年代に〇〇住宅の名で民間開発された優良住宅地区である。同地区も開発素地としては決して好立地とは言えないが先見の明ある民間活力により極めて良質な住宅街が形成された。この成功例は、中心部以外の周辺部における公権力施行の不必要性を裏付ける。本件事業計画の謳い文句である乱開発、スプロール化防止は開発指導要領や地区計画等で規制が十分可能であり、本件事業区域に真の宅地需要があれば〇〇に続き〇〇〇年代には大規模民間開発が行われていた筈である。民間の方が先見性に優れていることは現状の低利用から明らかである。
(4)P4について
① ○○区市町村内の宅地需要の件については、昨今の財政難から市町村合併が相次ぎ、将来の急激な人口減少に備え、各自治体がこぞって人口の取り合いを行ってきた事実は公知のことであろう。そもそも過疎地帯ではないのであるから駅から遠かろうが、農地でも何でも無理矢理宅地開発して安く売り出せばやがて買い手が現れるのは必然で、人口が増えるのは当たり前である。減っていたらそれこそ大問題である。勘違いしてはいけない、宅地需要がもともとあったのではなく、安く大量の宅地供給を行ったから人口が増えただけである。特別な需要がないところで安売りにより需要を喚起したに過ぎない。地権者の貴重な土地に対し恣意的かつ杜撰な評価に基づく強減歩を課し、言い換えれば違法な強制収用により剥奪し、安く売りさばいただけである。つまり、あったのは宅地需要ではなく、“人口需要”である。我々は、人口の取り合いゲームの犠牲になっただけである。
被告らが繰り返す「健全な市街地造成」の必要性は上述のとおり人口需要に基づくものであり、しかも現状の低利用を見る限りその目的すら達しえていない。事業開始から30年も経っているのにこれほど農地の多い区画整理区域があるだろうか。特に台地部はとても区画整理区域とは思えず、被告が掲げた宅地利用の増進とはほど遠い。これは対象区域を過剰に広域化したためである。また、地権者がやむを得ず有効利用をとの願いで建設した大量の賃貸住宅も明らかな供給過剰により空室が相次ぎ、絶えず入居者募集中ののぼり旗が掲げられている。たまらず採算度外視の値下げ合戦により入居者を奪い合っているのが現状である。この悲劇は紛れもなく、被告が5年、10年先のことしか考えず、目先の欲に駆られたせいで生じたものである。被告は、区画整理というものは30年、50年といった長期的な視点にたって行うべきものであることを今回の失敗から学ぶべきである。反論するのであれば、事業開始から30年経過した現在において、もし本件事業区域が未だ従前の未開発素地であったなら区画整理事業を行うかべきか否か自問自答してみるがよい。行うべきと考える愚か者はいない。被告は事業開始時に僅か30年先のことすら念頭に置いていなかったのである。
また、既述のとおり本件事業は組合から事実上継承したもので、これは被告自ら説明した内容を忠実に記載したものである。組合施行に向けた始動時は〇〇〇年以前と判断できることから、被告は本件事業実施の必要性ありと判断してから少なくとも10年以上経過してから継承したことになる。それで緊急性ありと主張しているのだから、見識、常識を疑わざるを得ない。なお、市街化区域は10年以内に優先的に整備すべきものを指すのである。
② ここで工事概成時について触れた理由は、訴状を最後まで読めば理解可能と思料されるため、詳細な説明は後述するが、端的にいうと本件事業に係る通常の清算金算定基準時点とされる工事概成時はとうの昔に過ぎているにもかかわらず、被告は未だに到来していない趣旨の見解を示していた(甲46)ために敢えて言及したものである。事業効果がまだ表れていないと主張することは、それだけ事業の必要性、緊急性の欠如を自ら証明することに繋がるのである。いつになったら論理矛盾に気付くのだろうか。10年以上前に使用収益開始率が90%を大きく超えているのに未到来はあり得ない。評価員に聴かなければ判断できないような者に事業を行う資格はない。また、事業効果が発現済みであること、未利用地や非有効使用地が多いこと及び公園の低利用等について、不知ないし否認するとしながら具体的な反論がないのはどうしたことか。ここにも被告の無責任さが露見している。都市計画運用指針を逆手に取り着手済だから検証の必要もない、後のことは知らんということであろう。現実を直視せよ。この有様はすべて被告の愚策によるものだ。
③ 「健全な市街地の造成」は上述のとおり真に宅地需要があれば、民間活力及び開発指導、地区計画等で十分実現可能であった。被告が持ち出した〇〇地区が良い例である。被告が示すとおり〇〇地区の規模が15ヘクタールであれば本件事業区域はその倍以上の規模にあたる。しかも駅への接近条件では〇〇地区に大きく劣後する。本件地のような最南端では駅まで歩けば30分近くかかるのである。この条件で「一体的整備が不可欠だった」と言い切ってしまうところにも無責任さが表れる。「一体的整備が不可欠だと勘違いしてしまった」と言い直すべきだ。現実の低利用をどう説明するのか。〇〇の例を見よ。一体的整備が不要であったことが近隣でも証明されているのだ。
また、地権者の協力のうえに成り立っているが犠牲を強いるものではないとの言い回しは不可解で、何を言いたいのか不明である。前主の錯誤に基づく要望すら無視して強行した本件処分や昨年の直接施行はどう説明するのか。協力などしていない。公権力を背景とした強制力に屈服しているだけである。
④ 受益が皆無であるなどはあり得ないと主張しているが、では本件地(前面路線)の受益はいか程か説明せよ。被告が開示した路線価によれば12%となっている。この論拠を詳細に説明せよ。これを説明できずに責任を果たしたなどとよく言えたものだ。元々住環境が整っていた旧都道府県道沿いまで含めたことの合理性、必要性について具体的反論がないのはどうしたことか。また一部拡幅したと主張しているが当該拡幅部分は地権者からの減歩によるものであろう。拡幅されれば受益ありとするのは後述の指定容積率を嵩上げすれば受益ありと決めつけることと同様に浅はかな考えで、土地評価ではない。住宅地としての利便性、快適性にどれ程寄与しているかの判断が肝要なのである。もともと広幅員の都道府県道であるからさらに拡幅されたところで受益どころか交通量の増大による騒音、排気ガス、振動等でマイナス効果である。
④ 〇〇都道府県の用地買収が着実にすすんでいるという話は聞いたことがない。よって、証拠提出を求める。いずれにしても本件事業の本丸である〇〇線ですら中途半端な状況で久しく放置されている事実は否定しようもない。
(5)P5について
① 地区内人口については、先般被告に資料提出を要求したが無回答であったことは訴状に示すとおりであるが、既述のとおり人口が増えるのは当然で、減るようでは話にならない。人口需要のために、広大な開発非適地(広大な農地)を無理矢理開発し、地権者等が安く大量に供給せざるを得ないよう仕向けた結果である。特に低地部の地権者は強減歩を補うために高額な保留地取得で原形を維持するか又は高額な清算金を覚悟せざるを得ない状況に追い込まれた。耐え切れずに転居した者も少なくないであろう。望みもしない宅地開発に直面し、先祖伝来の土地を手放したくない地主は借金して賃貸住宅でも建てるしか選択肢がないのである。これが集合住宅が多い実情である。この現実も知らずに「多数の集合住宅を含む700棟を超える住宅建築申請があり、地区内人口は確実に増えており」などと自画自賛しているのだから救いようがない。この劣悪な立地条件で集合住宅が多いことの異様さに気付かないところからして愚かというか、検証能力ゼロである。集合住宅地の造成を本件事業の目的に掲げていたわけではあるまい。分かるか、駅まで20分も歩かねばならないような賃貸経営に不向きな土地に赤字覚悟で借金してまでもアパート建設せざるを得ない地主の心境が。戸建住宅よりアパートが増えた方が結果的に人口が増えるのは当たり前である。浅はかな独断で自画自賛しているのは被告の方である。
② 異議申立の件についてであるが、本件申立てに対して却下という決定はまずあり得ない。提出書面に形式上の不備はなく要件は満たされており、要件審理において不適法とされる箇所は存在しない。実体審理を行ったうえでの棄却であれば、詳細な説得力のある理由を付記し、何故に申立人の主張が認められないのか、その判断に至る過程を明らかにしなければならない(最判昭和37年12月26日)。それが法の要請である。あの文面ではなぜ却下(本来なら少なくとも明確な理由付記のうえ棄却)されたのか皆目見当がつかない。却下なら要件不備の内容を示すべきと解されるところ、理由として掲げている内容と却下という結論とが整合していない。また、教示を欠く不適法を認めておきながら、処分の効力には影響ないなどと開き直っている暇があれば不教示理由を明かし、詫び状のひとつでも送るべきである。訴状で瑕疵を指摘して早3ヶ月以上経過したが、被告からは未だに謝罪も教示もなされていない。このように、被告はなにかにつけ適法適正に行っている旨繰り返し主張するが、全く行動が伴っていない。言動の不一致のみならず、○○区市町村民に対する誠意の欠片すら持ち合わせていない実態がこの一件からも窺われる。
③ 表中の反論に対して
ア No1について、文書を特定して欲しいという発言の主は事務員Cである。原告がそれ以降文書を特定したうえで開示請求している事実からもそのような指導があったことに疑う余地はない。もっとも、受付自体していないとの詭弁は、行政手続法や○○区市町村行政手続条例(以下「手続条例」という。)等の精神に反して許されない。今、Cが自席の机に仕舞い込んでしまった原告の請求書は被告の業務上どのような位置づけか、あくまでCの私物として扱っているものか、明確に回答せよ。
イ No3について、そもそも根拠となるデータがなければ、この調書は作成不可能である。この数値は訴状後半で指摘した按分率に係わる重要なもので、全地権者の利害に多大な影響を及ぼす。これを実測に基づかず根拠もなしに当てずっぽで査定したなら重大な不正行為で、地権者に対する背信行為である。そもそも存在していたか不明であると信じ難い主張をしているが、事の重大性を全く認識していない。無責任にも程があるというもので、これで説明責任を果たしている、すべて適法適正だなどとよく言えたものだ。“これから”作成する筈の換地計画はどうするつもりか。このデータなしに“適法適正な”換地計画作成は不可能である。無いものは仕方がないというのは言語道断である。
ウ No4について、〇〇〇年〇月に○○区市町村議会議員立ち会いの下で再請求したところ、量が多いので年内一杯待って欲しいとの返答であったのでこれを了承し連絡を待つこととした。それから1年を経過しても連絡がないため、〇〇〇年〇月、進捗状況の確認及び催促をK宛てに行ったところ無視され、そして同年〇月、J宛に再度確認及び催促を行ったところ全く用意していないとのことであったので、理由を問うと「そもそも開示義務はないからである。」と耳を疑うような返答を受けた。
エ No5について、肝心の価格が一切開示されていない。審議会においては価格を開示しているにもかかわらず不当である。
オ No6について、資料が見つからないというのは文書管理に問題があるからであり、何事も適法適正だとの主張と矛盾する。
カ No7~9について、請求内容は説明済みで、保存していないので一切開示できないとJに拒否されたのが事実である。すべて重要情報であり、原告から放棄するなどあり得ない。不正が明るみとなっては都合が悪いため保存していないなどと言い訳しているか、破棄してしまったというのが実情であろう。請求放棄などしていない。文書があるのなら法廷で提示せよ。
④ 以上のとおり被告は初め「情報開示、説明責任を十分に果たしている」としておきながら、後半では「可能な限り」と言い直し、到底許容し難い身勝手な自己都合により不当に責任範囲を狭めているものである。
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