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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.025

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

             

 区画整理の本質と法の権利者保護の理念

1 はじめに

本訴えの真相を解明するにあたっては、まず、区画整理とは何か、次に、土地区画整理法(以下「法」という。)の理念はどのようなものであるかを把握することが必要である。被告の答弁、反論に見られるような短絡的な思考では事の真相解明に至ることはできない。      

2 区画整理の本質

土地区画整理事業は収用事業と異なり、施行者に施行地区内における未登記権利の調査義務を課していない。なぜなら、収用は権利を消滅させる事業であるのに対し、区画整理は権利を消滅させることなく、従前の権利を換地に移行させる事業だからである。

区画整理は、その本質からして従前地の所有権の内容たる使用、収益及び処分する権利(民法第206条)を、補償等を行うこともなしに一方的に剥奪することを予定するものではない(ただし、建築禁止等一般的な内在的制約は存在する。)

使用、収益の剥奪に対しては“照応する”仮換地の使用収益権を、処分権の対価としては“照応する”換地をそれぞれ付与し、それらに不足が生じる場合には、前者に対し損失補償を、後者に対し清算金(ただし、技術的制約によるものに限る。)を交付するものとされる。

3 法における権利者保護の理念

従前の権利を消滅させることなく、当該権利を換地に移行させる区画整理を支える存立根拠、制約条件が、照応原則、損失補償、清算金の規定等に見られるのであるが、法の被害者救済の姿勢はこれら代表的な権利者保護の規定のみならず、第3章第7節の権利関係の調整規定(法第113条~第117条)にも表れている。

これは、土地区画整理事業の施行によって、従来の土地・建物の現実の利用関係に変動が生じるが、その変動の原因は、土地・建物の利用関係当事者の責に帰すべき事由によるものではない。そのことに配慮して、当事者の立場を考慮した特別の利用関係の調整方法を規定したものである(松浦605頁)

特に、従前権利者が事業の施行により、当該権利を放棄又は契約解除した場合にすら施行者は損失補償しなければならず(第113条第3項)、損失補償の範囲は特に規定がなく、通常生ずべき損失といった規定(第73条第1項、第78条第1項)はない。権利者の責に帰すべき事由によらない放棄又は解除であるので、これから生じる損失は一切補償の対象となると解すべきであろう(松浦611頁)

例としては、直接毀損された財産はもちろん、現に有する財産と事業が施行されなければ保存し得たであろう財産との差額も挙げられている(土地区画整理法制研究会「土地区画整理法逐条討議 下」(以下「逐条(下)」とする。)182頁)

また、権利の申告(法第85条)の規定において、所有権以外の未登記の権利を有し、又は有することとなった者(以下「未登記権利者」という。)を保護している。具体的には、この申告には期限を定めず、同条第4項の期間を除き、いつでも申告できるとされていることに表れる。換地処分後であっても、清算金、賦課金等の徴収・交付事務があり相手方を正確に把握する必要があるので、この申告を否定するには及ばない。また、申告しない場合は、手続上は、その権利が有しないものとみなされる(法第63条第3項、第85条第5項)が、実体的にその権利が消滅するというわけではない。仮換地指定を受けない限り、現実に仮換地を使用収益することはできないが、換地処分がなされた場合、従前地に有した未登記権利は申告がなされていないときでも換地上に移行して存続する(最判昭和52年1月20日(判例1(松浦390頁))とされている。

さらに、法第113条第3項による損失補償は、未登記権利者や第85条の権利未申告者も対象に含まれる。法第85条第5項で未登記、未申告権利者を権利がないものとしてなし得るとしたのは、第3章第2節から第6節までの手続をする場合に限定されている。したがって、第7節に属する第113条の扱いについては、未登記・未申告の権利者を権利がないものとして扱うことは許されない(松浦612頁)

なお、仮換地指定の法的性質(後記13(1)で詳述)とも関係するが、未登記、未申告権利者が仮換地指定を受けない限り仮換地を使用収益することはできない(最判昭和52年1月20日(判例1)とされる一方で、仮換地について賃借権の目的となるべき土地の指定を受けていない賃借人(未登記、未申告権利者)に対する賃貸人(従前地所有者)の明渡請求が権利の濫用にあたるとされている(松浦513頁、最判昭和56年12月4日(判例2)。施行者に対しては権利の存する部分の指定を義務付けないものの、当事者間では権利主張できる、つまり権利は消滅しないものとしているのは、当事者間で解決すべき私法上の権利関係の存在が前提にあることから施行者はこれに関与することを要しないとされたものと解される。

これに対し、本件のような法定外の強減歩の場合は、本来あるべき照応した仮換地上には既に他者の使用収益権が施行者により設定されており、これは一種の公法上の権利(渡部168頁、長崎地判昭和28年7月31日(判例3))と解され、私法上の当事者関係が存在しない以上、関係当時者間の自主性に委ねることでは問題は解決しえない。そして、仮換地変更するにも制約があること及び所有権についての変動に関しては、権利申告を要することなく当然に顧慮しようとする法第85条の趣旨から判断すれば、施行者には損失補償(違法の場合は損害賠償)や仮清算による解決以外に選択肢はない。

以上のとおり、法は、事業施行による被害者や所有権以外の未登記権利者等に対してまでもきめ細かな保護規定を置いているのであるから、なおさら所有権者の権利保護を蔑ろにはしてはいないと解すべきで、仮換地指定が行われても従前の未登記・未申告の権利が消滅するものではないのと同様に、従前地に対する所有権が消滅することもない。

そして、従前地に照応する換地の位置、範囲は、換地処分をまつまでもなく、区画整理の本質から、当然客観的には整理後の土地のいずれかに定まっているというべきで、換地処分は、客観的に定まっている換地の位置、範囲を確認し宣言するに過ぎない。

この理は、仮換地指定についても同様であるから、指定された仮換地が客観的に定まっているべきものとは異なり、技術的制約に起因しない過大な不足が生じた場合、当該過大な不足部分は実質的にも換地不交付と同様であり、またそれがすべて事業の施行に起因する結果である以上、それが治癒されるまでの間、過分な使用収益の停止を強いられた地権者に対しては当該停止期間に相当する損害(損失)額(地代相当額)を支払わなければならない(ただし、裁量による仮清算も可能である。)。この理は、施行者の行為が適法か違法かにより異なるものではなく、「区画整理の本質」(上記2)から導かれる当然の帰結である。

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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