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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(7)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
4 背信的な受益
なお、後記14で詳述するが、本件のような(被告のいう換地が不足する(被告準備書面(1)3頁、(3)4頁)事態を避けるために、按分地積を留保していた(換地不足に対処するための清算金を確保していた)というなら、当該留保地積のうち本件従前地の縄延地積相当分は、公共用地や保留地に転化したわけであるから、その運用益相当分は被告がプールしていたことになり、そこに不当利得としての受益が確実に存在する。これは、換地不交付者に対してまでも損失補償を一切行っていない(注1)という信じ難い暴挙による受益(当然悪意)とも共通するものである。
また、本件鎮守の森を詐欺により管理下におき保存樹林指定した(使用収益した)ことによる受益も悪意による受益(不当利得)に相当する。
なお、被告が清算金で損害を清算する旨述べているのは、区画整理の本質から導かれたと解される判例(注2)を知ってのことであろう。事業としては応じられないのが基本(被告準備書面(3)11頁、後記四3(6)で詳述)としているが、違法な権限行使、不行使による損害賠償義務は本来であれば被告自身の財布(一般会計)から負担しなければならない。この理は、換地処分後であればもはや清算金対応は事実上不可能であることを考えれば明らかである。本件については、換地処分前であったことが幸いし、清算金制度を利用してそこで処理してしまおうという発想であろう。
もっとも、原告は金銭の名目にはこだわってはいない。実質的に何に対する対価なのであるかが肝要なのである。名目が何であれ、損害が完全に償われればそれでよい。
(注1)この点、被告は一切黙秘している。換地不交付者に対する損失補償は法定義務であるにもかかわらず、確信犯的に30年間一文も払っていないというのであるから、遵法精神の欠片すらないといえる。
(注2)最判昭和32年12月25日(判例4-1)
従前の土地に対しては換地を交付するのが原則であるが、その過不足を生ずることをも予想し、最後には清算金をもって清算することを定めているところから見れば、従前の土地所有者に対し完全な代償を交付すべきものとする趣旨を有することをうかがうことができる。そこで実測面積より少ない台帳地積によって換地の交付を受けた者の不利益は、終局の本換地処分において清算され、その損失は完全に補填されることになるものと謂わなければならない。 (参考)最判昭和48年10月18日(判例4-2)
二 事実経過
〇〇〇年〇月〇日 市街化区域決定
〇〇〇年〇月〇日 組合設立推進会議(甲45)
〇〇〇年〇月〇日 用途地域決定(甲71)
〇〇〇年〇月〇日 本件事業の都市計画決定告示
〇〇〇年〇月〇日 本件事業計画告示(昭和61年度終了)
〇〇〇年〇月〇日 施行条例公布・施行
〇〇〇年〇月〇日 公約(土地評価基準(甲27)・土地評価要領(甲6
0)・換地設計基準(甲44)決定(甲61-1))
※すべて事業計画決定日から施行される。
〇〇〇年〇月〇日 当初案提示
〇〇〇年〇月〇日 妥協案提出(乙2)
〇〇〇年〇月〇日 拒絶通知(甲51)
〇〇〇年〇月〇日 第1回事業計画変更(甲66-1・2)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分①(甲4)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分①効力発生(甲4)
〇〇〇年〇月〇日 (被告の詐欺による)立木補償契約(甲10)
〇〇〇年〇月〇日 都市計画法、建築基準法改正
〇〇〇年〇月〇日 用途地域変更決定①
〇〇〇年〇月〇日 用途地域変更決定②
〇〇〇年〇月〇日 仮換地変更要望書提出(甲72)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分①取消(甲55-1)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分②(甲55-2)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分②効力発生(甲55-2)
〇〇〇年〇月〇日 使用収益開始通知(甲11)
〇〇〇年〇月〇日 使用収益開始(甲11)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分②取消(甲56-1)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分③(甲56-2)
〇〇〇年〇月〇日 本件処分③効力発生(甲56-2)
〇〇〇年〇月〇日 前主他界(相続)
〇〇〇年〇月〇日 第〇回事業計画変更(甲66-2)
〇〇〇年〇月〇日 旧基準地積による清算指数計算書受領(甲12)
〇〇〇年〇月〇日 基準地積更正に係る誓約書受領(甲13)
〇〇〇年〇月〇日 地積更正登記完了(甲3)
〇〇〇年〇月〇日 基準地積更正申請(甲3)
〇〇〇年〇月〇日 新基準地積に基づく新清算指数算定依頼(甲3)
〇〇〇年〇月〇日 新清算指数計算書受領(甲14)
〇〇〇年〇月〇日 損害(損失)賠償請求(甲1)
〇〇〇年〇月〇日 請求金支払拒否(甲2)
〇〇〇年〇月〇日 民事調停申立
〇〇〇年〇月〇日 調停不成立
〇〇〇年〇月〇日 本訴え提起
三 顕著な違法性
論点整理に入る前に、今一度、概略図(甲5-1・2・3)を確認いただきたい。区画整理は、従前の土地利用状況に与える変化を最小限度にとどめなければならないという基本的な制約下で許容される事業であり、事業目的のために必要な変更以外の変更を受け、それによって地権者の財産のあり方に過度の変化が生じることは不適切(下村57頁)とされる。
誰であれ自分の先祖を祀った神社このような目にあわされたら憤るであろう。それが社会通念、区市町村民の感覚というものだ!
先祖代々受け継いだ大切な神社境内地がこうも醜く、惨めな姿に晒されなければならない理由は何か。しかも、前主や原告には何ら帰責性がなく、被告には信義に悖る公約違反、不正処理、それらの隠匿行為等数多の背信行為がある。被告の行為は明らかに前主の財産のあり方に許容範囲を超える過度の変化を生じさせた(注1)。つまり、被告は区画整理の存立根拠を揺るがす違法行為を行ったのであり、神を冒涜した者には天罰が下らねばならない。
区画整理は地権者にメリットがあることを大義として行われる筈だが損害しかないのが実情だ。社会通念に照らしても、違法な加害行為がなければこのような惨事は起こり得ず、法の理念に反する事態であることは一目瞭然だ。歴史的遺産(注2)に対して配慮を欠く行為は社会的な損失でもある。
さらに、従前地と仮換地との経済価値の著しい格差は歴然(注3)としており、その状態が長期にわたっているのであるから被害額は甚大で、被告のいう清算金のみで損害、損失がすべて償われることはない。また、被告は、工事概成時の趣旨を曲解して工事完了時における固定資産税評価水準の低廉な価格で事を済ませようとしているのである。漫然と何ら注意を払うことなく行われた違法な行政行為による損害について、加害者は損害賠償責任を負わなければならない。
(注1)前主による歪な不要部分の宅地化がまさにその証である。従来の神社維持を断念させられたのである。
(注2)本件神社は〇〇区市町村の文献(甲7、8、9-1・2)に〇〇区市町村の歴史として語り継がれている。換地設計を行う際には、神社等については利用状況を勘案して文化財保護の思想を尊重する(芦田等180頁)とされているのである。
(注3)地積更正前の清算指数(甲12)から地積更正後の清算指数(甲14)への変動格差に象徴されている。
【主な引用文献(順不同)】
1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」
平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)
2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」
平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)
3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」
昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)
4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」
昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)
5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」
昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)
6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修
平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)
7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」
昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)
8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」
昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)
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