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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.028

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

3 基準地積の違法性

(1)無償収用の違憲認識

元来、区画整理における縄延びの無償収用が違憲視されていたことから、昨今、実測主義が提唱されるに至り、さらに、実測主義の貫徹が事実上困難である場合の補助的あるいは救済的手段として職権更正や按分義務等の規定を施行規程に盛り込む“準実測主義”とでもいうべき方途が採用されるようになったのである。

原告被告間に生じる様々な意見衝突の大半は、無償収用の是非に係る認識のくい違いが大宗をなすといえる。

土地区画整理事業の公共性、特殊性を根拠として縄延びを全く無視することはできない。特に、縄延びが少数の者に見られるときは、その縄延びを全体の利益に吸収して何らの補償もしないということは許されない(松浦237頁)。

実測による方法は、権利者の実質的平等を確保するものであり、可能な限りこれによるべきであろう(松浦237頁)。

また、基準地積決定方法における数々の問題を踏まえ、「到達すべき基準地積の求め方は、実測主義であり、1筆測量であろう。(清水②301頁)」とする実務家の見解もある。

縄延びは、地権者の財産であり、可能な限り“当該”地権者の基準地積に配分しなければならない。この理は財産不可侵を定める憲法の要請するところであり、法が何ら基準地積の決定方法につき定めを置いていないことを理由に、条例解釈を誤ってはならない。後述の職権更正不作為、按分義務不履行(留保行為及び不適法な按分区域の設定)等の事実から、被告は縄延びを施行者が自由に(恣意的に)扱うことができるものと誤解している節がある。

すなわち、無償収用を合憲合法とする立場である。その精神は、30年も経過してからの地積更正であったとして、その時期につきあたかも原告にすべて非があるような主張にも如実に表れる。遺憾ながら地権者保護の精神は皆無である。そもそも、この異常事態は被告が職権更正の権限を行使していれば回避できたのであり、また、留保行為を行わず、かつ、按分区域の設定を適切に行っていれば被害は最小限にとどめることができたのである。被告にとっては、原告が地積更正したことで損した、つまり逆に迷惑しているというのが正直な感覚なのであろう。

本来、施行者は地権者を批判する立場にない。換地設計は地権者が行うものではないからである。反省すべきは施行者である。権限不行使の結果責任は施行者が負わなければならないのであるから、本件のような事態を回避するために更正規定(施行条例第22条第3項)や按分規定(施行条例第22条第4項)を適宜適切に適用すべきだったのである。条例の解釈、適用は、「区画整理の本質」及び「法の理念」(いずれも前記一2、3で詳述)に沿って、常に最終結果の妥当性を目的として行うべきである。更正規定や按分規定を施行者の自由裁量の領域と判断する被告は無償収用することを正当視する立場であるから根本的なところで原告の考えとは相容れないのである。

異常な清算指数(甲14)は異常な換地設計、すなわち違法な換地設計を意味する(収用委員会の見解)。異常事態を回避するために、これらの補助規定が存在するのであるが、仮換地案供覧後、前主が妥協案(乙2)を提出したというのであれば、被告は、拒絶通知(甲51)を送り付けるまでの約10か月の間には常識的に考えても縄延びの疑い、すなわち基準地積が不適切であるとの疑念を抱いた筈である。

地権者保護の観点に立てば職権更正(又は按分率の見直し)をすべきであった。あるいは前主に対し実測を勧めるべきであった。しかも、数年後に立木補償のために隣接者を招集のうえ境界協議まで主催して、鎮守の森を管理地(本件従前地に対する減歩範囲に相当する。)としたうえで保存樹林指定まで行っているのであるから、遅くともその際には当該管理地の範囲、地積は了知した筈である(注)から、書類上(名目上)の減歩率10%程度ではすまないほど事実上の減歩が行われている実態に気付かないわけがない。

これらの経過の背後に見えるのは、一貫とした無償収用を是とする思想である。端的にいえば、実測申請期限の経過をもって、縄延びは施行者の管理下に置かれ、それをどのように取り扱うかはすべて施行者の自由裁量であるとする思想である。以下の各論点は、基本的には被告のこの思想の当否に係る論点ともいえよう。

以上のことから、本件訴訟においては無償収用が適法か否か、職権更正が施行者の恣意性をも許容する完全な自由裁量に含まれるのか否か、留保行為が適法か否か、按分区域の設定は施行者の恣意性をも許容する完全な自由裁量に含まれるのか否か(許容される程度)を明確にする必要がある。

(注)自治体が自ら管理地と定めた土地の範囲、地積を把握していないということは通常あり得ない。なお、前主には土地評価の内容はもとより基準地積(按分率や按分後の基準地積)すら伝えられていないのだから、減歩率や縄延びの可能性云々を主張する理由、きっかけすらない。つまり、妥協案すらも認められない理由が大幅な縄延び及び不適切な按分を原因とする不実の基準地積にあることすら認識しておらず、単に当初案(甲42)を見せられ、それと大きく相違しない範囲で受忍できる最低限の図案(妥協案)を要望したに過ぎないのである。なお、この点は後述する。

(2)準実測主義の形骸化(地権者に対する無配慮)

① 説明不足と短すぎる実測申請期間

被告怠慢に起因する緊急性を大義名分とした事業開始までの経緯及び広域化の失敗を鑑みると、地権者保護の視点からは到底十分な期間とはいえない。

□(被告は)申請が3件あった(証拠なし)から十分な期間であったと主張するにとどまる。(仮に3件あったことが真実であったとした場合)被告自ら縄延地が多数ある(被告準備書面(1)5頁、(3)3頁)と言っておきながら、僅か3件(全体の1%に満たない)では常識的にも十分とは言えないとの指摘に対して何ら反論できていない。したがって、この点、被告も十分とは言えないことを暗に認めているものと判断できる。

② 背信的な言動

期限後申請の有無、可否等に係るHの虚偽発言についてはこれまでに説明してきたとおりである。被告の言動の根底にあるのは、無償収用合憲主義であることが窺われる。

(3)縄延びに係る非常識

被告は、本件従前地のような山林と田畑を一括して、本件事業区域には縄延が想定される土地が多数存在するとしている(被告準備書面(1)5頁、(3)3頁)。

この点、山林と田畑等の耕地を同列に扱うことはおよそ合理性を欠くものといわねばならない。なぜなら、旧来の公簿地積は公知のとおり明治初期の地租改正時に行われた丈量(土地測量のこと)に基づくものであり、その精度は田畑等の耕地と山林とでは大きく異なるからである。

地租改正は、元来、貢租の主要な賦課対象である田、畑等の耕地を主眼としたものであり、宅地、山林、原野はそれに対して従たる地位を占めるものであった(新井27頁)ことに加え、丈量の難易の程度にも大きな差がある。

要するに、賦課対象の田畑に係る地主の過少な地積申告に対しては検査官の眼が厳しかったことから、“ゴマカシ”(縄延び)は若干(僅か数パーセント)にとどまる(検査官の“ご褒美”)のが通常であるのに対し、山林のごときは歩測(徒歩による計測)でも良いとされる等まったく重要視されずに、その取扱いには大きな隔たりがあったのである。

山林、原野については、現在において測量すると、なお多大な縄延びが認められるのは、耕地(田畑)・宅地に比べて、当時においても正確な測量がなされなかったため(新井28頁)で、一般に山林の地積は余程杜撰な査定になっている(新井28頁)のであり、縄延びが公簿の数倍(数百パーセント)となる事例も珍しいものではない。

もっとも、一般に既成宅地は公簿と実測の不一致は軽微と考えられるにもかかわらず、被告は後記(5)のとおり留保分を除いた上でさらに凡そ合理性を欠く区分設定により同率按分としてしまった。その結果、本件従前地の縄延地積は本来按分不要な多数の宅地にまで配分されてしまったのである。

以上のとおり、被告が区画整理を行う者として当然有すべき資質、常識的な注意力を欠いていた(重過失(注))為に、多大な損害が生じたのである。

(注)あるいは山林を意図的に軽視した。つまり、故意に私有財産権を移転させた。広大な山林は一見すると未利用地としても区分されうることから、広域な按分区域にすることで小規模宅地の基準地積を増大させ、実質的な減歩緩和に資する面があり、事業促進に結び付く(同意を得やすい)。しかし、それがやってはならない禁じ手であることはいうまでもない。

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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