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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(7)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
(4)職権更正不作為の違法性
① 更正規定の意義
被告怠慢に起因する緊急性を大義名分とした事業開始までの経緯及び広域化の失敗を鑑みると、“短すぎる実測申請期間”を職権更正により補うべきものと考えるのが施行者に求められる基本的な姿勢である。
法令の規定には、「すべし」、「することを要する」、「しなければならない」等という場合と「することを得る」、「することができる」等という場合の2種類があり、一見前者の場合には行政機関には行政行為をなすか否かの決定の自由は存せず、後者の場合にはその自由があるごとくに見えるのであるが、法治主義原則の趣旨は、如何なる場合に如何なる行為をなすべきかの決定を法に留保し、行政機関としてこれに従わしめることにあるから、従ってこの主義の下においては法令が特にその旨明示したとき場合を除く外、行政機関は法令の定める行為をなすことを要し、如何なる場合にもこれをなすと否との自由は有しないものと解しなければならぬ(柳瀬良幹著「行政法教科書(上)」102頁)。
更正規定の意義は、事業の円滑化及び地権者保護にあるものと解する。なぜなら、実測地積をもって基準地積とするのが合理的であることは確か(多数の判例も同旨)であり、本件のような事態を回避し、後々問題が生じないようにする必要があるからである。これは反面、地権者保護にも資するのである。
したがって、職権更正は自由裁量に属するものではなく、施行者は相当な注意を払って職権発動の要否を判断しなければならないのであり、その判断の当否はすべて結果の妥当性から検証されるものである。
もっとも、無償収用合憲とする立場から職権更正を発動するのは縄縮みのありそうな土地に対する場合だけであろう。明らかに大幅な縄延びがありそうな土地に対しては分かっていても見て見ぬ振りをする権限があるものと勘違いしているのであるから更正規定は事実上施行者の便宜規定と化しているといっても過言ではない。
□被告は、更正規定はあくまで施行者の恣意性をも許容する自由裁量であると主張しており(被告準備書面(1)3頁)、まったく条例の趣旨を理解していない。これも旧来の無償収用合憲主義に由来する言動であろう。
② 結果責任
仮に、職権更正が施行者の恣意性をも包含する自由裁量に属し、本件不作為が許容されるとした場合でも、不作為がもたらした結果に対する代償責任は免れない。なぜなら、権限の行使(不行使)とその結果責任とは、表裏一体の関係にあり、公権力には常に責任が伴うからである。この理は区画整理の本質に照らせば当然の帰結といえる。事業がなければそもそもこのような事態は生じていないのであるから、施行者が全責任を負うのである。
(5)按分義務不履行の違法性
① 按分規定の意義
按分方式が生まれたのは、判例による実測主義をとった方が良いという結果からで、按分をせずに測量増を公共用地として配分することに問題があると指摘されたからである(芦田等155頁)。
また、「按分の精神は立会実測に基づくもので、さらに地区内一律按分と言うのも施行規程の趣旨からいかがであろうか。(清水①28頁)」は、区画整理について多数の指南書を執筆された実務家の見解である。
② 留保行為の違法性
重過失というべき測量関係資料の不備により基準地積調書(甲35、甲36)に記載された数値の正否は検証し得ないのであるが、すべて適正だとする被告の主張に従い、これらの数値をすべて正しいと仮定すると、その記載から被告は縄延地積を一部留保し、地権者に還元していないと考えられ、しかも被告自らその事実を認めている(被告準備書面(1)3頁)。これは明らかに施行条例の趣旨に反する違法行為(不作為)である。
もっとも、無償収用合憲とする立場からは、実測申請期限が経過した以上、、縄延びは施行者の管理下に置かれ、それをどのように取り扱うかはすべて施行者の自由裁量であるとの主張がなされるであろう。
□被告は、信じ難いことに測量図等の検証資料は一切不存在としながらも、同調書記載内容は適正なものだと主張した上で、当該留保は適法である旨の反論を展開している。そして、その根拠を本件のような異常事態の清算に備えるためと後付けしている(被告準備書面(3)4~5頁)。基準地積の期限後更正を「事業としては応じられないのが基本」(被告準備書面(3)11頁)としながら、それに対応するために予め留保していたというのでは筋が通らない。
③ 合理性を欠く按分区域の設定(「適当と認める区域」の意味)
基準地積調書(甲35、甲36)の内容が真正であると仮定した場合、本件保留地設定の不当性(後記9で詳述)とも関連するが、異常な清算指数の上昇(甲12と甲14に記載された清算指数の乖離)は、職権更正不作為のほか違法な留保行為と不適法な按分区域設定(台地部と低地部の東西2区分という凡そ合理性を欠く杜撰な方法(甲13(注1))を主因とするものである。
公簿地積と縄延びの関係については、上記(3)で詳述したところであるが、縄延地積は施行者の財産ではない。これを極力帰属させるべき地権者の権利地積に反映させようとする趣旨を表明したものが按分規定である。
被告は注意を怠り(非常識により)何の配慮もなく漫然と東西2区分として、本件従前地の縄延びを田畑のみならず宅地にまで配分(留保分除く。)してしまったことから損害が肥大化したのである。被告は按分規定の「適当と認める区域」のうち「適当」(注2)の意味するところを恣意的に解釈し、とにかく分けておけば問題ないと安易に処理したと考えられる。結果として、著しく公平性を害する結果となったのである。
なお、当初事業計画書(甲16(3・8頁))から明らかなように、民有地の山林は全体の僅か5%程度に過ぎず、筆数は49である。さらに、この49筆についても本件従前地(計6筆)のように纏まって存在するものが大半であると考えられるから、何ら実測作業が困難とはいえず、非現実的でもない。
一方、田畑は59%(459筆)、宅地は19%(237筆)であり、特に宅地は既存宅地が大半で筆ごとに地権者が異なる可能性が高いことからも実測作業は山林に比し相対的に時間、労力を要するであろう。しかし、これら民有地の大部分(約80%)を占める田畑、宅地の縄延びの可能性が山林に比べ大きく下回ることは上記(3)で詳述したとおりであるから按分処理で十分対応可能である。
したがって、少数の山林、原野を実測するか、あるいはひとつの按分区域に設定し、他を一括り(宅地と田畑をそれぞれ一括りでも良い。)に按分処理するのが合理的である。少なくとも既存宅地群と山林・原野は区別すべきであった。
□被告は、全件測量は非現実的であるが故に施行条例は按分規定を定めていると主張している(被告準備書面(1)5頁)ことから、按分規定が実測主義の補助規定であることを認めていると考えられる。そうであるなら、地勢により東西2区分にした合理的根拠を示さなければならない。この点、被告は何ら有効な説明をなしえていない。
(注1)誓約書(甲13)には、原告からの按分区域設定理由に係る質問に対する被告の回答が付されている。そこには、「地勢が異なる」から台地部と低地部に分割した旨記されている。上記(3)のとおり、縄延び可能性を追求する上で重要なのは、地勢ではなく地目である。特に地租改正時に付された各筆の原始地目が最も重要である。それと現況を対比し、あくまで実測主義の補助規定であることを念頭に合理的な区域に分けることが肝要なのである。
なお、「地勢」とは土地のありさま、山・川・平野・海など地理的事象の配置のありさま、地形(大辞林(第3判))等をいうとされる。本件事業区域は、事業開始時前後の航空写真(甲73~76)、住宅地図(甲40、90-2、92)、現況図(甲78)、当初事業計画書(甲16)からも明らかなように、既存住宅群が台地部、低地部にともに存在していた(特に台地部に多い)。
したがって、本件事業区域においては、縄延びが小さい宅地と縄延びが大きい山林・原野とが必然的に同一区域となってしまう区分すなわち台地部、低地部による東西2区分は按分規定の目的にそぐわない結果をもたらすことになるのである。
(注2)「適当」とは、
①ある状態・目的・要求などにぴったり合っていること。ふさわしいこと。また,そのさま。相当。「-な例」「-な分量を加える」「君主政治なる者は殊に大国に-するの理を/民約論徳」
②その場を何とかつくろう程度であること。大辞林(第3判)
※遺憾ながら被告は②の意味で解釈したのであろう。
【主な引用文献(順不同)】
1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」
平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)
2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」
平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)
3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」
昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)
4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」
昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)
5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」
昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)
6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修
平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)
7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」
昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)
8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」
昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)
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