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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.30

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

 

(6)「事業としては応じられないのが基本」の意味

  組合施行感覚(被告の勘違い)

この発言(被告準備書面(3)11頁)にこそ、法の無理解、地権者保護精神の欠如が如実に読み取れる。被告の言動には、本件事業を公的施行ではなく、あたかも組合施行の延長で捉えている節がある。

区画整理の本質(前記一2で詳述)、所有権の絶対性、法第85条の趣旨等からも換地処分(従前地の所有権が形式的に剥奪される)前に従前地の実測地積が判明した以上、実測地積による時価で清算(ここでは、必ずしも法第94条の規定による清算の意ではない。)されなければならない。原告は信義に従い被告に対して更正登記完了の旨を報告した経緯(甲3)があるが、本来この報告は不要であり、権力を行使する施行者側に調査義務がある。

この理は、事業開始後何年経過していようが変わるものではない。被告は原告の地積更正が申請期限後であったこと、事業開始から29年経過していることを念頭に置き、「公平、公正を踏まえ、 ・・・・・・ 清算金で対応する」と付け加えているが、この発言も法の無理解に起因する。繰り返すが、組合施行ではないのだから、このような事態を招いた責任はすべて被告にあるということをまず理解しなければならない。施行者のミスではあるが、工事が終了しているので金銭解決で了承いただけないかと頭を下げる位のことがあってもよい。被告には二度三度繰り返し冒頭の「区画整理の本質」、「法における権利者保護の理念」を読み返して貰いたい。

② 縄延び可能性に係る前主の善意と被告の悪意

施行者は事業の施行に当たり一般に、関係人に不当な不利益や損害を及ぼすことのないよう配慮すべき義務を負うことはいうまでもない(最判昭和46年11月30日(判例30)。

被告は、前主こそ自分の土地であるから縄延びの認識が欠けていたとは考えられないなどと主張していた(被告準備書面(1)5頁)が、施行条例には施行者の義務として更正規定や按分規定が掲げられていることからそれらが適切に行われることを考えれば、敢えて費用をかけてまで実測申請する理由はない。仮に更正権限が発動されない場合でも、按分規定は明らかに施行者への義務規定であるから、地権者側としてはその適切な履行により権利者保護が約束されていると考えるであろう。つまり、わざわざ費用を負担して、近隣者に頭を下げ、かつ、短い期間に慌ただしく実測申請しなくとも実測地積に近似した基準地積が確保されるものと期待するであろう。また、そうであればこそ実測申請期限が多少短くとも理不尽なことはない。

また、当初案(甲42)については、あなたの土地はこうなるよと図案を見せられただけで何故にそのような範囲、地積、形状となるのかさえ示されていない。つまり、整理前後の路線価や画地評価(減歩率)はもとより按分率や按分後の基準地積すら知らされていないのであるから縄延びの可能性云々を問題視するきっかけすらなかったのである。当然、被告への信頼から適正に按分された基準地積に基づき減歩されたのであろう、つまり土地が減らされた分に相応する受益があるのだろうと盲信したのである。実際に原告ですら、最初に換地対照図を見た時点では基準地積がどうなっているのか、違法性の有無等については何ら分からなかった。土地評価、基準地積等を被告に問いただし、苦労の末に資料を入手して初めて減歩率、受益率等を知り、縄延び可能性すなわち不実の基準地積を認識するに至ったのである。要するに、問題なのは前主が縄延びに気付いていたか否かではなく、被告が決めた基準地積すなわち按分後の基準地積(厳密には土地評価も含む当初案作成までの全過程)を知っていたか否かである。

さらには、既に使用収益開始済みであることを(仮)換地修正不可能の根拠にしているが、被告こそ使用収益が開始される遥か前に鎮守の森を買収し、保存樹林指定まで行った(甲57-1~58-2)のであるから、その規模、範囲(甲10(注))と本件仮換地の地積とを対比することで大幅な縄延びに気付いた筈である。書類上(名目上)の減歩率が10%程度であることを知っているのは被告だけであり、図面上の比較から10%どころの減歩でないことは一目瞭然であるから、気付いた際に職権を発動するか、少なくとも前主に実測を勧めるべき道義的責任があったといえる。

もっとも、どこかの段階でこのこと(不実の基準地積)に気付いた前主に対し、申請期限が過ぎているとして地積更正を抑制した可能性は十分にあると原告は考える。なぜなら、当初、原告がHに実測申請可否について尋ねたところもうダメだ、清算金も払わないとはっきり言われたからである。前主も同じように断られた可能性は極めて高い。無償収用合憲とする被告に期限後申請を拒絶された地権者は他にも少なからず存在するであろう。

(注)立木補償契約の事前立会に際し、被告は現地に杭を打ち、境界承諾書(甲39)を隣接者から徴している。また、同契約書には範囲を示す図面まで添付されている。それから保存樹林指定し、台帳まで整備しているのである。

③ 施行責任の転嫁

なお、被告の上記主張が、事業として(清算金として)ではなく、別途損害賠償として応じようという趣旨であれば話は別である(この点前記一4で詳述)。

また、換地計画や他の権利者にも多大な影響を与える(被告準備書面(3)11頁)ことをもって期限後申請に応じられない理由としている点も法の無理解、無償収用合憲主義を匂わせる。

そもそも更正規定や按分規定を適切に解釈し、実行していれば他者への多大な影響問題は生じない。己の不手際を地権者の不手際にすり替えてはならない。本件事業は同意形式に基づく組合施行ではないのだ。公権力を背景とした公的施行であるから事業に関する全責任は施行者側にあるのだ。

また、換地計画への多大な影響問題はまったく不可解で矛盾に満ちた理由づけである。繰り返し換地計画未作成だと主張しておきながら、未作成のものに何の影響があるというのか。さらに、留保行為の正当性の根拠を本件のような事態に対応するためだと訴えていることとも矛盾する。よって、換地計画や他の権利者への多大な影響は、事業としては応じられないことの理由とはなり得ない。

本件のような異常事態(異常な清算指数)は換地設計の違法性(後記9で詳述)を証明するものであり、その主因の一つである(不実の)基準地積決定責任の所在はあくまで施行者にある。換言すれば、適法適正な換地設計義務を負うのはあくまで被告なのである。

□この点、被告は、法の無理解から換地設計の過ちがすべて前主や原告にあると考えており、「清算金対応となるのは止むを得ない」(被告準備書面(3)5頁)として開き直っている。違法な換地設計を行ったのは紛れもなく被告自身に他ならない。にもかかわらず、「なぜなら、・・・29年が経過し、・・・地積更正登記が行われたものだから」と理由付けしている。これも、組合施行の延長で物事を捉えていること、無償収用合憲主義から導かれる反論といえる。

4 違法な換地設計(後記9で詳述)と清算金

1)「技術上やむを得ない不均衡」に当たるか

被告は、本件に係る損失は清算金(法第94条)で処理するとしているが、そもそも清算金制度は本件のような事態を対象とする制度ではない。換地設計の技術上やむを得ない不均衡是正や換地不交付の損失補償等あくまで適法事項に係る最終的な清算を行うための制度である。本件のように清算指数が通常の範囲を超えて過大(甲14)となるのは、そもそも換地設計に違法があったからに他ならない(収用委員会や〇〇都道府県〇〇課担当者(以下「〇〇担当者」という。)の見解と同旨)。被告は、本件は実質的にも換地不交付ではないとしながら清算金で差積分の対価を支払うというのであるから、本件差積が「”技術上”やむを得ない不均衡」であったと主張しているようなものである。

被告は、これまで数十件に及ぶ事後的な仮換地変更や保留地変更を繰り返し行っている。この中には路線価の転記ミスに起因する仮換地修正等耳を疑うようなものも含まれる(甲61-2・3)。これらは、すべてを業者に丸投げし、何ら注意を払うこともなく漫然と業務を行ってきたことの証左である。このように責任意識の欠片すらないことがそもそもの原因であるから”技術上”やむを得ない場合とは根本的に異なる。なお、換地修正により瑕疵が治癒され得る場合は被害が大きくならずに済むが、本件は状況が異なるらしい(実際は、ただ換地修正したくない(甲67)だけのことである)。

(2)強減歩の許容範囲

財産権の保護と地権者間の公平の観点から、本件強減歩と小規模宅地対策のために定められた強減歩(法第91条、以下「法定強減歩」という。)の場合とを対比すると次の見解に辿り着く。

事業にどれだけかの強制力があるので、無限定な小規模対策を行うことは許されない。小規模宅地対策の原資の提供(ここでは法定強減歩を指す。)と減歩緩和は清算金の収受によって相殺される筈である。だが、清算金の算定が時価評価以外の方法で行われる(著者下村は、この方法を肯定しているわけではない。)とき、これは資源再配分の効果を持つ。清算金の算定が時価評価で行われるときも、それは財産形態の変化をもたらす。だが土地区画整理事業は都市計画上の都市計画の手段であり、小規模宅地対策はその限りで許容されるに過ぎないから、事業を便宜的手段として地権者間の資産の再配分や地権者の財産形態の変更を行うべきではない。また、都市計画上の最低限度の必要を超えた望ましさは強減歩の根拠にはならないから、良好な市街地にふさわしい規模の宅地を生み出すために強減歩を伴う小規模宅地対策を利用すべきでもない(下村138頁)。

本件強減歩は、法定強減歩ではない。地権者保護精神の欠如(故意)、あるいは注意義務違反(過失)に起因した職権更正不作為、按分義務不履行、違法評価(後記7、8で詳述)等による“法定外”強減歩とでもいうべき違法な強減歩である。また、被告の意図的な、つまり故意による戦略的強減歩でもあり、保留地確保への執着(後記10で詳述)による極めて背信性の強いものであるからなおさら法の容認するところではない。

換言すれば、法定強減歩でさえ、必要最小限にとどめるべきものとされ、その補償の方法(注)には熟慮を要するのであるから、ましてや、本件強減歩の違法性は顕著である。よって、時価以外の評価が許容される余地はなく、最終処理が清算金制度(法第94条)によるとしても通常の清算とはその扱いを異にすべきものである。

(注)福岡高判昭和55年4月22日(判例6)では、

「しかし、換地不交付となった土地や創設換地された土地、また、適正化により増換地又は強減歩を受けた土地については、換地照応の原則の適用外にあって、著しく損失を受け又は利益を得るものであり、不均衡是正という前叙の清算の特質になじまないから、実質的には損失補償金の支払又は不当利得金の徴収として処理するのが相当である。(一部抜粋)」とされた。

(3)減価補償金との関係

公的施行の土地区画整理事業にあっては、宅地の利用増進の範囲内、すなわち、施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額を超える場合に限り、その差額に相当する金額の範囲内で、かつ、事業費に充てるために保留地をとることができる(法第96条第2項)。施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額を超えない限り保留地をとることは違法である。すなわち、法第109条により減価補償金がでる事業にあっては保留地はあり得ない(渡部146頁)

本件強減歩による清算指数の急上昇及び留保地積の自白により、「1.0135」(甲79)としていた比例率は1を下回る値を示さなければならない。

したがって、増進率が当初想定していた数値「1.5」(当初事業計画書(甲16)9頁から計算した(90,000円/60,000円=1.5)。)を下回る(甲79(ここでは「1.42」としている。))ことは明らかである(上記1で詳述した低利用の現実(特に台地部)から明らかなように、宅地利用の増進は極めて乏しい。)から換地処分時に減価補償金(法第109条)の支払義務が生じる筈である。被告は、減価補償金債務を回避するため、隠密に不法な小細工を繰り返しいる(被告準備書面(2)7頁)のであるが、本件強減歩に対する償いは、時価以外が事実上許容されている通常の清算金によるのではなく、減価補償金の趣旨に従い、別途損失補償(実質的には損害賠償)として対応すべきものと考える。

なお、これは保留地設定の不当性(後記10で詳述)にも関連するものである。

□被告は水面下で恣意的操作を繰り返し、比例率は問題ないと言い張っている(被告準備書面(2)7頁)が、これは減価補償金を将来請求されないように予防線を張っているのであろう。

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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