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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.31

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

5 土地評価基準の規範性

(1)土地評価基準の意義

① 土地評価の必要性

土地評価がなければ換地設計が成立しない関係にあり、法第89条の照応条件には評価値測定の尺度で計算された土地評価指数が必要であり、この尺度により換地設計が実施される。法第94条では法第89条の照応条件を満足した換地設計について、設計技術上の過不足を金銭で清算するために、評価値測定の尺度とその実績が必要である。また法第96条では、公的施行者の場合には、土地区画整理事業を実施するために「事業計画認可時の状況による宅地価額の総額」から「工事概成時の宅地価額の総額」に変化する場合の増加額を計算し、保留地として取得した地積が増加額を超えているどうかのチェックをしなければならないが、その手法も土地評価である。

さらに、法第109条においては事業計画認可時の地価総額より工事概成時の地価総額が下回るようなことがあれば減価補償金の算定をしなければならないが、この場合も土地評価額の算出が必要とされる。かくのごとく土地評価は、換地設計上不可欠の要素であるとされている(芦田等172頁)

行政的施行者の場合は、土地評価の方法を施行規程で定めるまでもなく、責任を持って確立しておかなければならない(芦田等186頁)

② 土地評価基準の目的及び根拠

本件事業のような公的施行の土地区画整理事業において、土地評価基準は法により定めなければならないものと規定されているわけではない。

民事施行の場合は、定款、規約等で施行区域内の人々の納得があれば良いのに対し、公的施行の場合はもっと広域的に公平が保たれるような基準が必要である(清水①37頁)

両者の違いは端的にいうなら前者が同意を原点とするのに対し、後者は必ずしも同意を要しないという法上の違いにあると考えられるが、法定されていないのは、公的施行の場合は施行者の性格が行政的なものであり、土地評価の方法が確立しているから(芦田等165頁)とする見解等がある。

また、公的施行の場合には評価員制度が法定されているがあくまで施行者が評価主体であり、施行者は評価員の意見を“聴く義務”があるに過ぎず、その意見に拘束されない、つまり従う義務があるわけではない。

いずれにしても、法定されていないことをもって公的施行においては土地評価基準を不要とする見解は存在しない。施行者の恣意性を排除し、評価の客観性、適正を期すために土地評価基準は必要不可欠のものである。

本件土地評価基準(甲27)においても施行条例第19条「従前の宅地及び換地の評価は、施行者がその位置、地積、区画、土質、水利、利用状況、環境、固定資産税の課税標準等を総合的に考慮し、評価員の意見を聴いて定める。」との規定を具体化した基準(注)として、施行条例第32条の規定に基づき「必要な事項」として、土地評価要領(甲60)及び換地設計基準(甲44)とともに審議会の議を経て定められたものである(甲61-1)

なお、〇〇担当者によると、土地評価基準がなければ価格が算出できないことから、価格を必須とする換地設計そのものが不可能、すなわち換地計画が作成できないこととなるから土地評価基準を定めずに行われる区画整理事業は聞いたことがないとのことであった。

(注)横浜地判平成14年4月17日(判例12)

「被告は,本件事業につき・・・・・・本件土地評価基準を定め,いわゆる路線価式評価法で従前地及び換地を評価することとした。上記各基準は,前記施行条例25条を具体化した基準であり,換地計画を定める上での基礎となる準則である。・・・・・・本件土地評価基準は整理法及び施行条例に根拠をおく基準であるから,これに反した評価をしたことは重大な違法があったといわざるを得ない。」とされている。

(2)本件土地評価基準の位置付け

区画整理において土地評価基準は必須のツールである。被告は、本件土地評価基準(甲27)を換地設計に先立つ土地評価の拠りどころとして採用、公表し、地権者等へ土地評価の適正さを立証、説明する際の根拠として活用してきた。また、本件訴訟においても被告自ら本件土地評価基準に基づいて評価したことをもって適正さの証である旨述べている(被告準備書面(2)6頁)

さらには、先般開催された審議会・評価員会合同会議において、被告から某仮換地と某保留地の交換に係る承認を願う旨の諮問があり、その席上で被告は両者が等価であることから交換しても問題ないと説明した。そこで、審議委員から等価と判断した根拠を問われたところ、本件土地評価基準を積極的に配布した上で、本件土地評価基準に基づき評価したところ等価であったことがその根拠である旨の宣言をした。なお、審議委員から評価員の意見を聴くべきとの意見があったのに対し、本件土地評価基準に基づいているのだからその必要はないと強引に答弁を終了してしまった。結局、被告の力強い自信に満ち満ちた説明を審議委員は信用した様子であった。

以上の事実が示すとおり、本件土地評価基準は、被告が地権者や審議会のみならず評価員の信頼をも獲得するためのいわば切り札(免罪符)として今日まで活用されてきた(甲61-2、80-1)のである。よって、当然のことながら被告自ら本件土地評価基準に拘束される。すなわち、本件土地評価基準は単なる施行者内部の準則にとどまるものではなく、換地設計の基礎となるべき適正な土地価格を定め、照応判定における極めて重要な規範となることから、事業存立の根幹をなすものといえよう。したがって、対外的に遵守義務を負うのは勿論のこと、合理的理由もなく辻褄合わせを目的とした安易な事後的変更などは言語道断、決して許されるものではない。

□(被告は、)信じ難いことに己の不正処理を隠蔽するために、これから本件土地評価基準を変えてしまおうと企んでいる(被告準備書面(2)15頁)。

(3)裁量権逸脱(職務懈怠)

本件土地評価基準、本件土地評価要領及び本件換地設計基準(以下総称する場合「本件基準等」という。)の案を審議会及び評価委員会に付し、その議を経たのは昭和57年10月23日である(甲61-1)。その後、本件基準等に基づき作成した仮換地案を供覧したのが昭和58年5月17日であるから、被告は審議会の議を経て僅か半年後には公約たる本件土地評価基準を無視、逸脱して土地評価を行った(後記5で詳述)ことになる。この短期間に事情変更の原則が認められるような著しい状況の変化が生じたとは考えられない。以上の事実経過は、被告が公約たる本件土地評価基準をいかに軽んじていたか、ひいてはその承認を与えた審議会、評価員のみならず背後に存在する多数の地権者等の権利をいかに軽んじていたかを示す。下請けに委託していたとしても、通常の注意を払って検査を行っていればこのような事態は回避できたであろう。したがって、被告の過失による違法性は顕著な事実である。

□(被告は、)この点、必要な検査を行って納品されている(被告準備書面(1)6頁)と返すにとどまる。よって、何ら反論していないのと同視できることから、職務上払うべき注意を怠り漫然と検査を行った事実を認めているものと考えるのが相当である。

(4)評価員の意見

被告は、地権者はもとより評価員や審議会委員が細部まで精査しないこと、あるいは精査できない(甲61-2・3)ことに乗じて、随所で本件基準等に反する処理を行ってきた。なお、評価員の意見が出された場合にも、これを尊重することは当然であるが、これに拘束されるものではない(松浦285頁)とされる。つまり、評価員の意見はあくまで参考意見に過ぎず、それを尊重して修正するか否かは施行者が判断すべきことを意味し、換言すれば、評価員が格別意見を付さず、又は適正である旨の意見があったとしても、それが適法適正であることを確定させる効果を有するものではないということである。

□(被告は、)この点、形式的に評価員の意見を聴き、審議会の答申も得ていることのみをもって適法適正の証であると主張するにとどまり、実質的な内容面について適法適正であることを立証するどころか説明すらできていない。

(5)土地評価の客観性

土地評価基準違背に基づく(仮)換地不照応を主訴とする数多の裁判(新潟地裁平成14年10月3日(判例6)等)において、土地評価基準に適合していること、あるいはそれに反していないことをもって訴えの排斥理由としていることに鑑みると、土地評価基準に反する評価をなした場合は必然的に不照応を導くことから違法とされなければならない。

土地評価基準違反→違法な換地設計→照応原則違反

なお、土地評価たる客観的指標を定めるにあたって、施行者に裁量権が認められる余地はない(最判平成9年1月28日(判例7)、東京地判平成24年10月3日(判例8))。この点、評価方法、例えば路線価方式を採用することに裁量が認められることと具体的な基準の適用場面における裁量とは区別しなければならない。評価方法の選択に裁量が認められるとしても価格決定に至る過程で客観性、公平性が求められることはいかなる評価方法においても異なるものではない。要するに、客観性、公平性が担保される評価方法であれば如何なる方法が採用されても施行者の裁量の範囲内とも言いうるが、客観性、公平性を判断する際に裁量の及ぶ余地はないということである。

また、仮換地指定に先立つ換地設計が正しいことを前提に、換地計画なしに行った仮換地指定処分も違法ではないとする判例(東京地判昭和57年9月30日(判例9))がある。これは裏を返せば、仮換地においても適正に換地設計すべきは当然で、事後的に基準を変えてボロを隠すようなことは許されないことを示唆する。

あくまで工事のためとの詭弁により、基準を逸脱した既成事実(換地予定地的仮換地)をつくりあげ、不正が発覚した途端、既成事実に沿うよう基準に手を加え地権者を欺くが如き背信行為は到底法の許すところではない。

もっとも、低利用の実態からは、受益が増すような基準変更、すなわち不利益変更を正当化できるような合理的理由は見当たらない。

(6)違法評価と国家賠償

土地評価に違法があったとして国家賠償請求が認容された判例を例示しておく。

東京高判平成17年2月9日(判例10)

横浜地判平成16年4月7日(判例11)

また、土地評価基準に違反する評価をしたことは重大な違法があったと言わざるを得ず、取り消されるべき違法の瑕疵があると言わざるを得ないとしながらも事情判決が下された(金銭賠償で処理が可能とする。)事案に次のものがある。

◇横浜地裁平成14年4月17日(判例12)

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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