不動産鑑定評価・相続対策等は、当センター(事務局:ことぶき不動産鑑定所)にご相談ください。東京、埼玉、千葉、神奈川を中心に全国対応。

不動産専門家相談センター東京

【事務局】ことぶき不動産鑑定所
〒110-0016 
東京都台東区台東1丁目29-3-1004

JR山手線秋葉原駅中央北口徒歩7分・御徒町駅南口徒歩9分
東京メトロ日比谷線秋葉原駅1番出口徒歩4分・仲御徒町駅1番出口徒歩5分
東京メトロ銀座線末広町駅1番出口徒歩6分

03-6555-2375

03-6869-4526

営業時間
10:00〜18:00 無休(土日祝対応)

お役立ち情報

土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.35

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

***********************************************

 

〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

ウ 新用途地域のミスマッチ

以上が、本書冒頭(前記1、2)に記したように台地部が市街化区域かつ土地区画整理事業区域であるにもかかわらず、土地利用状況において隣接市街化調整区域と何ら異なるところがない甲73という奇妙な現象が生じた経緯である。

特に、本件路線沿線地域の土地利用状況が第一種住居地域の定義「店舗、事務所等と調和した住居の環境を保護する地域」甲85(2頁)にあるその定義)にまったく当てはまらない現状は滑稽としかいいようがない。

また、第一種住居地域で建蔽率を60%に指定する場合は原則として防火地域か準防火地域を指定する(同19頁)とされている。これはu値が表す建物疎密度、つまり建て詰まり状況に対応して指定されるものである。

ところが、本件路線沿線地域は建蔽率60%であるにもかかわらず準防火地域の指定すらない。これは、用途地域が実態にマッチしておらず、原則に適合していないことを意味する。早晩用途地域の変更等が行われる蓋然性は極めて高い。変更の方向性は当然に規制強化、すなわち第一種又は第二種低層住居専用地域(50%・80%)への変更であるが、どちらに変更されたところで価値が減少するわけでもない。なぜなら、用途の緩和や容積率200%化等は何ら価値増をもたらしていたわけではないからである。また、既存不適格となるような建物も存在しないことから何ら不都合はなく、かえって住環境保護が徹底されるとの期待により価値増をもたらすことも僅かながらありうる。

被告はこのような現状分析もなく、極めて短絡的に、用途地域変更をもって受益と言い張っている。その見解は浅はかとしかいいうようがなく、単なる後付的なこじ付けであることは否定しようもない。

以上のとおり台地部を区画整理区域としたことはもとより、その前提として市街化区域としたこと自体が誤りであった。不必要に市街地を広域化しようとしたためにこのような不具合が生じたのである。

エ 結論

よって、本件用途地域の変更は、本件事業開始時に予測していたものではなく、したがって本件評価に反映させた事象(要因)でもない。想定外の事後的かつ事業外の要因、具体的にはバブルの発生、法改正、新基準等の影響により行われた政策的な行政行為に過ぎない。

換言すれば、本件用途地域変更は当該変更手続きの前段における実態把握による政策判断で行われたものに過ぎず、〇〇年構想やこれを踏襲した本件事業開始時の構想における「将来あるべき姿の実現」として行われたものではない。

まさか、被告でも本件評価の際(〇〇年初頭)に、十年後のバブル到来、これに対する都市計画法及び建築基準法改正並びに用途指定基準改正を予測していたとまではいえまい。

なお、用途地域変更の件は当初事業計画書(甲16)にも何ら謳われておらず、「高度化の傾向は特にない。」とまで明確に記されている甲16(4頁)ことは上述したとおりである。

結論的には、被告は事後的にたまたま用途地域変更があったことを発見したことから、これに乗じて当該変更をもって受益ありとする強引な理由づけを展開したに過ぎない。これは、被告が用途地域の変更(緩和)を受益とする論拠やu値の画一的な処理の論拠を何ら示せないこととも符合するものである。

なお、第一種住居地域の容積率の最低限度が200%で建蔽率の最低限度60%であったことから、本件路線沿線地域は否応なしに容積率、建蔽率の上昇を受ける運命にさらされることとなったわけであるが、これがまったく不要物の押し付け、すなわち何ら受益をもたらすものではないこともこの後詳しく述べる。

□被告は、u値は一律に評価したとしながらも、本件路線は用途地域変更により受益はさらに大きくなる(被告準備書面(3)2頁)と何ら根拠のない見解を示している。要するに、被告自ら用途地域の緩和、容積率等の上昇を受益として評価したのか否かをまったく理解していないと白状したようなものである。

② u値が意味するものとは

ア 土地利用区分の重要性

個々の宅地はそれぞれ地盤、宅地の勾配、形態、街区内の位置等の性質が異なるものであるが、その利用については都市計画法による用途地域及び建築基準法(条例)によって種々の制限が付けられている。建蔽率、容積率、高さ制限、斜線制限等宅地は定められた制約によって利用価値が異なってくるものであり、したがって土地価格に影響を与える。これらの制約は単に法律的な制約のためというより、実際面において空地制限や敷地面積の疎密度が、結局採光通風の面あるいは火災危険の面、衛生保安上の面に対する良否を判定しうる材料となる(阿部46頁)

宅地が住居、商業に利用されている状態を示す建築物の容積的利用可能度でかつ宅地利用率とも呼ぶ(清水①235頁)

ここでも、特に整理前の状況が一様ではない事業区域(本件事業区域のように既存宅地地域と新市街地開発地域とに分かれている区域等)においては土地の種別(土地利用区分)ごと、例えば宅地見込地、既存宅地等に適用する数値を区分するのが常識である。なお、実務家の示した数値例では宅地見込地「0.5」に対し、宅地は「1.0」となっている(清水①235頁)

イ 市場価値を反映した利用度(指定容積率がu値そのものではない!)

思うに、区画整理が行われれば、整理後には宅地利用が増進し、許容される建蔽率や容積率を活用した建物が所狭しと林立する状況を想定するのが通常であろう。そう考えると、u値は、その定義が「容積的可能度」であるか「容積的利用状態」であるかにかかわらず、どの程度建物が建ち並び、有効利用されているかを数値化したもので、整理後は許容される建蔽率、容積率に基づいた最有効利用状態を予測し、その状況を数値化することになろう。さもなければ、事業目的である宅地利用の増進が単なる建前になってしまう。もっとも、ここに「許容される」とは、実態的な市場価値に適合する容積率や建蔽率のみを指し、何ら実態を伴わず、市場価値にも表れない形式的に上乗せされただけの容積率や建蔽率は評価の際には考慮すべきではない。

なぜなら、効用、相対的稀少性、有効需要の三者の相関結合により価値(価格)が創造される(不動産鑑定評価基準(国土交通省)総論第1章)のであるから、これら三者に影響を及ぼす要因のみを評価に反映すべきだからである。この理は区画整理における評価であろうと鑑定評価であろうと異なるところはない。要するに、地域性にそぐわない場違いで過分な容積率や建蔽率は、効用や有効需要に結びつくことがないことから相対的な稀少価値もない。したがって、三者の相関結合により価値が創造されることがないために、いくら余分に与えられたところで価値(価格)の上昇をもたらすことがないのである。

被告のこじ付け理論だと本件路線沿線の容積率が300%とされればさらに受益が計上されることとなってしまう。これが首肯できない理論であることは説明を要しないであろう。要するに実態的な土地利用状況に反映しない過分な容積率は何ら価値を創造しないのである。この理を否定する鑑定士はいない。

なお、本件事業区域内において、3階建て以上の規模を誇る建物は都市計画道路〇〇線沿いにそびえ立つマンション(6階建て)1棟のみである。 本件路線沿線地域、〇道〇〇線沿線地域、〇〇自動車道沿線地域はいずれも容積率が200%に指定されている地域であるが、2階建以下の低層建物が疎らに点在するだけで口が裂けても宅地利用が増進しているなどと説明できる状況ではない。容積率80%でも建築可能な建物しか存在していないのが現実である。要するに、本件事業区域(〇〇線沿線地域を除く。)において、容積率200%と容積率80%とは何ら市場価値に開差を生じさせていないのである。なお、この点は下記オの「公的評価からの検証」でも述べる。

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

①不動産鑑定評価、②相続対策、③借地と底地のトラブル解決、④価格・賃料相場等で頼れる専門家をお探しのお客さまは、当センターの無料相談をご利用ください。出張相談も可能です。必要に応じて、弁護士、税理士等の先生方と連携してサポートさせていただきます。

①財産評価、親族間売買、同族間売買、離婚時の財産分与、共有物分割、民事再生申立等

②遺産分割、生前贈与、相続税等の節税、相続不動産の有効活用

地代・賃料・借地料・更新料・建替承諾料・名義書換料、借地権・底地の売買

④土地価格の相場、家賃相場、地代相場等

ご相談・お見積り・解決策等のご提案はすべて無料サービスとして承っておりますので、どうぞお気軽にご連絡ください。※東京・埼玉・千葉・神奈川を中心に全国対応しています。

お役立ち情報

 お役立ち情報をご紹介しておりますので、参考にご覧ください。 

  • 不動産鑑定評価基準/運用上の留意事項
  • 不動産競売情報
  • 特殊な不動産の鑑定評価(更新料、底地、無道路地、高圧線下地等)
  • 相続対策
  • 借地権と底地(借地権の種類等)
  • マンション
  • 不動産取引等と税金
  • 不動産鑑定評価業務と税金(印紙税、譲渡所得税等)
  • 供託
  • 資産形成
  • 不動産投資/不動産担保ローン
  • 地域紹介/地価の推移
  • 土地区画整理事業専門家相談事例回想録

不動産のことは専門家に相談するのが無難ですね。

※新型コロナウイルス感染症対策として、Zoomミーティングを活用したご相談にも対応しています。

お電話でのご相談は下記へ

03-6555-2375

03-6869-4526
営業時間
10:00~18:00
定休日
無休(土日祝も対応)
✉メールをご利用の場合は下記をクリックください。

※遅くともメールいただいた翌日にはご返信しております。メールが届かない場合、迷惑メールフォルダに紛れ込んでいることがありますのでご確認ください。

Zoomミーティングによるご相談は下記をクリックください。