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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(7)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
④ Y値の不法性
当初事業計画書(甲16)4頁には「上水については〇〇〇水道事業による給水管が布設されており、既存の住宅に供給されている」と明確に記載されている。また、そもそも本件路線は事業区域に含まれていないに等しく、かつ、証拠資料(甲87-1・2)に示すとおり、整理前から水道管が完備しており、沿線地域の既存住宅群には何ら不自由なく水道水が供給されていた。
この点、〇〇都道府県の衛生部局、〇の水道部局にも確認済みである。つまり、「上水道引込容易」どころか「上水道完備」の状況にあったのである。
したがって、整理前においては本来「0.3」が付されていなければならないにもかかわらず何ら数値が記されていない。また、整理後には全路線に一律「0.3」が付されている。これは、本件路線(整理前路線1-0)沿線地域等の既存宅地地域と住宅がまったく建っておらず2項道路にも当らないような“農道”路線地域とを同等に扱っていることを意味するものである。そして、この不都合を調整する措置が何らなされていないのであるから明らかに客観性、公平性を欠く不正処理、不正評価に他ならない。
本件従前地平坦地部分では〇〇年代から〇〇業が営まれていたのであるから水道設備には何ら不足がなかった。一般的に、既存住宅地の不動産取引においては水道設備が整っているという価値を考慮して価格が決まるのであり、その点をまったく考慮しない場合、地権者は二重払いすることとなるのである。既存宅地地権者にとって被告の評価は単なる過剰設備の押し売りに他ならない。既存の水道設備に係る事実認定において施行者に裁量の余地はない。この点こそ、本件土地評価基準第6条で修正しなければならない。
また、そもそも土地区画整理事業において新設又は変更される公共施設には上下水道は含まれない(松浦24頁)とされるが、本件土地評価基準では上水道が評価対象とされている。この点は何とも不可解である。
なお、上水道について「完備」と「引込容易」とを区分して取り扱う事例(ex.引込容易0.1に対し完備は0.2)もあり(阿部283頁)、これに準じた場合、本件路線沿線地域等の既存宅地群は既に上水道完備の状態であったことから引込容易を超えるポイントを整理前から有していたことになる。
最後に、被告は下水道新設により受益を受けていると主張していた(答弁書4頁)が、下水道事業では別途受益者負担金が徴収されている。また、本件事業とはそもそも別事業であり、一体的に進めてきた経緯があったとしても評価上の加算対象とされるものではないということが当初からの公約である(甲61-1(注))。
(注)審議会議事録には、審議委員の質問に対し、Y値は下水道を整備しても変わらない旨回答したことが明確に記されている。
(6)計算路線価の検証
① 鑑定理論からの検証
区画整理では、従前の土地と換地の権利関係について、(整理前後の)均衡がとれていなければならず、整理前における土地価格と市街化予想図に基づく整理後の土地価格を算定する仕組が換地設計の基礎となっている。これら土地価格は、いわゆる正常価格として求めることが理論的であろう。固定資産税の課税評価額や、所得税の課税評価額、土地区画整理で行う評価額、さらに国が行う土地収用価格等はすべて正常価格で同じ算出方式で決定されることが好ましい(清水①277頁)。
区画整理の土地評価と鑑定評価は異なるとの見解がある。それは、前者においては後者と異なり事業以外の影響は評価にあたって考慮するべきではないとの思考から導かれるものである。そこで、事業以外の影響を排除する、つまり想定条件を付加する(不動産鑑定評価基準(国土交通省)総論第5章「鑑定評価の基本的事項」)ことによって、区画整理評価の妥当性を鑑定理論の視点から検証することは十分可能と考えられる。
② 公的評価との対比
被告は整理前路線価の妥当性を検証資料とすべき固定資産税路線価等一切の重要資料を保管していない。紛失なのかあるいは初めから不要と考えていたのかは不明であるが施行者として信じ難い怠慢、不注意である。余程杜撰に行ったものだから証拠として残しておきたくなかったのではないかとの疑いまで生じてくる。結局のところ、現状入手可能なもので検証するしかないのであるが、上記(5)②オで採り上げた路線について次のとおり検証する。
整理後路線0-3に対応する整理前の路線は路線1-0であり(以下両者を相続税路線価図上では「本件路線」という。)、整理後の路線40-0に対応する整理前路線は路線80-0である(以下両者を相続税路線価図上では「比較路線」という。)。
本件事業区域で相続税路線価が公表されたのは〇〇年1月1日現在のもの(甲88―1・2・3)が最初である。相続税路線価は一般的に工事概成時以降に公表されるものであるから、これが現在入手できるもっとも有力な検証資料であろう。
したがって、〇〇年相続税路線価をもって整理後路線価の検証を行うべきである。そこに記された本件路線価は平米〇〇〇,000円で、比較路線の路線価は平米〇〇〇,000円でその格差率(〇〇〇,000/〇〇〇,000≒1.074)は7%である。一方、被告が付した整理後路線0-3の路線価は1120点で、路線40-0は950点でその格差率(1120/950≒1.179)は、18%である。両路線は、都市計画道路〇〇線開通の影響度格差は無視しうる(理由は既に(5)②オ(注)で説明済み)ことから、既に説明したとおり単純比較が十分可能である。公的評価の対比で10%を超える乖離があるようでは、被告の評価は是認できる許容範囲を超えるものである。両整理後路線価格差率の中庸値が本来の適正値であるとした場合、本件従前地のような相対的に規模の大きい土地の約5%は100㎡を超える土地に相当する、つまり1軒の分譲住宅の敷地に相当するものであり、これが無償収用されることと同義であるから到底容認しえない。一方、比較路線は約5%相当分を無償で取得することと同義であるから不当利得といえよう。
また、〇〇年1月1日現在の両相続税路線価の格差率は1%であったから、この20年の間に両者の価格差が大きく縮小したことが分かる。この事実からも用途規制や容積率が緩和されたにもかかわらず、本件路線は相対的に衰退したことが理解されよう。また、同じようにこの20年間の相続税路線価の推移を比較すると本件路線は下落率の最上位付近に位置する。被告があくまで工事概成時が未到来と主張するならば、この事実を看過してはならない。繰り返すが、本件路線は本件事業による受益が最も少ない(ないに等しい)路線のひとつである。
このとおり、被告が付した路線価が、公的評価に比しても著しく妥当性を欠くことは明かである。被告は、各評価項目においてことごとく平均化した数値を採用することにより、既存の価値を無視あるいは過小評価し、価値増が予測されるものを排除したり、あるいはありもしない価値を上乗せするなどの恣意的、杜撰な処理を積み重ねたことによって真実を大きく捻じ曲げた。これにより、適正バランスは狂わされ、そのまま永久換地となる仮換地が決められてしまったのである。本件事業の特性(注)を踏まえ、公的な路線価との対比から判断すれば整理後路線価についての均一化はある程度是認しうるが、整理前路線価については実態との齟齬が甚だしい。これは取りも直さず、既存宅地群の有していた価値を田畑等の宅地見込地の価値に上乗せしたのと同様の結果をもたらすものである。要するに、無償による財産権の横流しに他ならず、やってはならない禁じ手であった。
(注)地方駅から2キロ近く離れた新市街地(実態は農地だらけ(台地部))ではもともとニーズが乏しいのであるから〇道沿いであっても内部の低層住宅地であっても価格に大きな差はない。相続税路線価がすべてを物語っている。
【主な引用文献(順不同)】
1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」
平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)
2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」
平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)
3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」
昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)
4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」
昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)
5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」
昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)
6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修
平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)
7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」
昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)
8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」
昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)
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