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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.39

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

(7)結 論

以上のとおり、事前の現地調査を行わずに、極めて杜撰なさじ加減で到底評価とはいえない路線価が決定されてしまったのである。

職務上払うべき注意を払うどころか、非常識又は恣意的な不正処理を繰り返し、それを今日まで隠匿してきた行為は許されるものではない。

このような不正処理により終局的な換地となるべき仮換地は決められてしまったのである。発覚した不均衡は基準をつくり変えてそれでも足りないものは最後にカネで対応するから問題ないとする釈明は、あまりにも節操がない。

8 画地評価の違法性                                  

(1)不整形減価の恣意的な未処理(土地評価基準違反)

本件仮換地が著しい不整形であることは繰り返し述べてきたとおりである。

したがって当然、被告は本件土地評価基準(甲27)第18条4号別表6に基づく不整形減価をしなければならなかった。にもかかわらず、何らその措置を行っていない(甲12)。これは、明らかに故意又は職務上の不注意(重過失)による不正、違法な処理である。

なお、本件のような著しく醜い地形は法の精神に反する(違法な換地設計である)ことから想定外の事案であろう。基準上の不整形減価率は最大マイナス5ポイントとなっているが、裏を返せば、整理後において5ポイントを超えるような醜く不整形な形状にしてはならないことを示唆するものである。なぜなら、区画整理は地形を美しくするのが通常だからである。

念のために付言しておくが、間違っても5ポイントを超える減価をしてはならないという意味に解釈してはならない。そのような違法な状況を想定していないだけだからである。

形状が醜く使い勝手が悪ければ悪い程不整形減価率が大きくなるのは当然である。5ポイントを超える不整形減価率は本件土地評価基準第27条により手当する必要がある。いうまでもなく本件仮換地の不整形減価は基準の枠内で収まるものではない。マイナス15~20ポイント程度が適正値といえよう。

(2)二重の違法

以上のとおり、著しく醜い地形にされたばかりか、不整形減価(注)もなされないという二重の不正、違法な処理により、原告は到底容認できない損害を被っているのである。

(注)不整形減価がなされていれば、換地設計式(後記9(4))により、当然(仮)換地の地積が(15~20%)増えていたのである。  

(3)用途地域変更に係る未補正

仮に、本件用途地域変更が本件評価の際に(事業開始当初から)予測されたものであったとして、かつ、それが本件路線価を上昇させる受益であるなら、本件従前地の高台部分(神社境内地部分)は、南側が第一種住居地域となったことによる環境面でのマイナス効果、並びに容積率及び建蔽率には何ら変化がないことを考慮し、本件路線価(標準画地の単価)と対比した上で相応の減価措置を要する(注)が、何らその措置がなされていない。

したがって、用途地域の緩和が受益でありu値が上昇するのは当然だとする被告の見解はこの点からも当を得たものではない。

(注)鑑定評価や相続税に係る土地評価において、評価対象地に2以上の用途地域がまたがる場合、その規制内容を数値化し、面積按分等を行うことにより単価を決するのが通常である。用途地域変更が受益なら本件土地評価基準第18条10号により相応の修正を施すのが相当である。

9 換地設計の違法性(照応原則の無視、逸脱)

(1)憲法と換地設計

土地区画整理事業の換地設計にかかわる憲法の規定は第14条(法の下の平等)第1項と第29条(財産権の不可侵)である。憲法第14条第1項は「すべて国民は、・・・・・・ 差別されない。」と定めて、地権者の公平な取扱いを要求する。憲法第29条第1項は「財産権は、これを侵してはならない。」と定めて地権者の財産権の保護を要求する。同条第2項はさらに「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」として法律に財産権の内容を委ねるので、法で財産権の内容を定めることができる。

いずれにしても公平と財産権の保護の2つの要求は換地制度を通じて、また土地区画整理事業の施行過程を通じて最も上位に位置する法的理念である。そこで換地設計の目的や基準が不明確になったときには、これらの理念を参照しなければならない(下村36頁)。

(2)法律上の換地設計基準

換地設計の基本的な基準が法第3章第2節(換地計画)に定められている。

この節に定められた換地設計の基準の中で最も広範に適用される基準は従前地と換地の照応を求める照応原則(法第89条)である。他の換地設計の基準は照応原則の例外である。・・・・・・ 法第98条第2項の規定から、仮換地についても換地設計基準が適用される(下村36頁)。

仮換地指定にあたって考慮しなければならない「換地計画の決定の基準(法第98条第2項)」とは、照応原則の規定等を指す。

また、仮換地及び換地に求められる照応の判定基準時は、原則として事業開始時とされる(最判昭和36年12月12日(判例13))が、使用収益開始日を別に定める場合仮換地指定においては、当該仮換地の使用収益開始時を前提に判断すれば足りる(最判昭和60年11月29日(判例14))とされる。

具体的には、従前地は舗装道路に面していたが、仮換地の前面道路はいまだ舗装工事中である場合、換地処分時までには完全に従前の宅地と照応することとなるときは照応していると解すべきである。このように土地区画整理事業の工事に伴う一時的な不照応は受忍義務の範囲内のものと解すべきである(渡部128頁)とされる。

したがって、本件基準等を適用する際の“合理的予測”に基づく照応がある場合は許容されると解されるが、実現可能性を欠く予測(当初事業計画書(甲16)やその添付図書である設計図(甲64)、市街化予想図(甲65)等に含まれない予測)、明らかな基準の逸脱、地権者間の財産的価値の公平性を害する措置等は凡そ合理性を欠くものであるから、ここでいう合理的予測には含まれない。

また、ある路線の減歩率を緩和する(甲81(注))ために、他路線に負担を転嫁するが如き措置は、恣意的操作に他ならず、ここでいう合理的予測とは異なる。

(注)事業外要因を排除するのは妥当であるが、減歩率を考慮するというのは不適法である。なぜなら、土地評価は客観的な「ある価格」を追求するもの、つまり恣意性を排除し客観的な価値を求めるものであり、「あるべき価格」を求めるものではないから、減歩率を念頭にさじ加減してはならない。

事実上の減歩緩和対策は付保留地、飛換地等で対応すべきである。ただし、付保留地の対価には実勢価格(時価)が要求されることはいうまでもない。

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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