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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.40

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

(3)事業固有の換地設計基準

土地区画整理事業ごとに定められる換地設計基準の位置づけはさまざまである。組合施行の場合は総会の議決事項とされることがあったり、理事会の承認事項とされるにとどまることがあったりする。公的施行の場合には審議会の議を経て定められることがあったり、事務的な基準として審議会に報告されるにとどまることがあったりする。いずれにしても事業ごとに定められる換地設計基準は施行者を拘束する(下村44頁)。

いうまでもなく、本件事業においてこれに該当するものが本件換地設計基準(甲44)であり、被告が仮換地においても客観的照応を期するために施行条例に基づき審議会の場で自らを拘束する公約として審議に付し、その議を経て定められた(甲61-1)ものである。

審議会の議を経て同時に定めた本件基準等(後記(3)で詳述)も当然これに含まれ、施行者は拘束される。

(4)比例評価式換地設計式の適用

本件換地設計基準第7条により、証拠資料(甲12)のとおり仮換地地積は、〇,〇〇〇㎡として決められた。

Ei = Ai・ai(1-d)y/ei

Ei = 整理後の画地の地積

ei = 整理後の画地の㎡当たり指数

Ai = 整理前の画地の地積

ai = 整理前の画地の㎡当たり指数

d  = 地区の平均減歩率

y  = 地区の宅地利用増進率

(1-d)y = 比例率

ei/ai=1のとき、減歩率はゼロである。すなわち、整理後による受益がゼロである場合は負担もゼロであり、受益がある土地(ei/ai>1)のみから受益の度合いに応じて負担させることになる(甲89、芦田等196197頁)。

単純な平均減歩率との対比において、当不当を論じる(被告準備書面(2)12頁)こと自体ナンセンスであることは明らかである。

減歩の分布については、ほとんど整理後の都市施設の整備状態によって減歩率が決定されることになるが、勿論例外はあり、国道・県道が地区内を通過していた場合や、施行地区の中で特別に利用状況が異なっている場合などは、その性格もみきわめて評価値階差を決めなければならない(芦田等216頁)。

なお、換地地積は、上記により算出する権利地積を標準として定める。ただし、○○神社、○○院等については、その利用現況を勘案して文化財保護の思想を尊重する(芦田等180頁)とされている。   

(5)換地設計基準違反

① 憲法上、法律上の換地設計基準違反

土地区画整理事業の定義たる土地の区画形質の変更(法第2条第1項)とは、土地の区画を適正にし、土地の形状・土質を改良して適正な宅地を造成することといわれる(土地区画整理法制研究会「土地区画整理法逐条討議」(以下「逐条(上)」という。)4頁、大場民男著「縦横土地区画整理法(第二版)」(以下「大場」という。)4頁、下出明著「換地処分の研究」(以下「下出」という。)11頁、松浦17頁他)。

また、「換地設計を一言すれば、不整形で昔から継承された従前の宅地を法の諸規定に基づいて新設された公共用地に面する換地という整形で利用価値の高い状態に変換する作業である。(清水①44頁)」と実務家は説明する。

概略図(甲5-1・2・3 )を見れば一目瞭然、本件仮換地が上記定義に著しく反することは明らかであろう。本件事業によるメリットがないばかりか、修復不能かつ多大な被害を被っただけである。

② 本件換地設計基準違反

換地割付は、換地設計式によって算出された権利地積(換地地積)又は権利価額(換地評価額)を満たす換地を街区に割り付ける作業である。換地設計式は、換地の権利価額又は換地地積を指示するが、換地の位置と形状を指示しない。そこで別の基準によって換地を特定しなければならないが、その基準となるのが換地設計基準の一部である換地割付基準であり(下村54頁)、その実務規範となるべきものが本件換地設計基準(甲44)である。

上位基準たる憲法、法律上の換地設計基準の基本理念を念頭に本件換地設計基準を解釈適用して換地割付を行うプロセスは次のようになる。

ア 区域的区分

主な道路、河川等で区分される複数の区域に換地を配分する。この際、これらの区域間で換地の配分が均衡するようにする。なお、1区域の中には1以上の街区が含まれる。

イ 街区割付

各街区に収容する宅地を試行的に決定する。この際の原則は街区の周辺に位置する従前地を当該街区に収容することである。

ウ 試行的な換地割付

各街区に収容することとされた宅地をその街区に配置し、各換地の位置と形状を大雑把に定める。この際の原則は、

(ア)収容される宅地間の相対的位置関係を維持すること

(イ)換地間の公平に配慮すること

(ウ)換地をできるだけ整形された土地にすること

である。当該街区に収容すべき宅地のすべてを当該街区に収容することができない場合には、街区の周縁に位置する宅地を別の宅地へ移動させる。

エ 最終的な換地割付

試行的な換地割付の段階で不都合が生じた宅地(たとえば整理前後で評価額の大きな差異が現れた宅地)について、位置の修正とそれに伴う当該換地及び他の換地の修正を行い、最終的な換地設計案を決定する。(下村54頁)

被告は、憲法、法律上の換地設計基準の基本理念を無視し、本件換地設計基準を恣意的に解釈運用した。 本件換地設計基準第8条には、「整理後の画地の形状は長方形を標準とし ・・・・・・ 。ただし、街区の形状又は他の画地との関連において特別の考慮を必要とするものについては、この限りではない。」とあり、同第10条には、「整理後の画地の側界線は、原則として街路境界線に直角に定める」とある。「標準」や「原則」を適用せずに、例外的な措置をとる場合には標準や原則を適用しないことに特段の事情を要する。そして、本件において特段の事情があったか否かが問題となる。

この点、妥協案に示されている地形、範囲でも十分に対応は可能(注1)であったにもかかわらず、被告は本件保留地(付保留地でもない。)設定に固執し、これを拒絶したのである。

次に、保留地設定の必要性が特段の事情に含まれるか。法は、事業の存立根拠を照応原則に求め、保留地については宅地の利用増進の範囲内、すなわち、施行後の宅地の価額の総額が施行前の宅地の価額の総額を超える場合に限り、その差額に相当する金額の範囲内で、かつ、事業費に充てるために保留地をとることができる(法第96条第2項)と規定していることから、優先順位において保留地が照応原則に大きく劣後することは明らかである。被告の採った措置は本末転倒で、手段を優先し目的を後回しにしたものである。したがって、保留地設定の必要性は特段の事情には当たらない。

これにより換地間の公平が損なわれ、また十分に整形化する余地があったにもかかわらず優先すべき前主の要望(要望どおりなら違法性は治癒されうる(注2)。)はもとより法の要請する照応確保は犠牲にされたのである。神社の尊厳を破壊した醜い地形、方針転換(後記11で詳述)の事実がすべてを物語る。

(注1)妥協案は本件従前地内にほぼ収まる規模、地形となっていることから不正な路線価、不正な画地評価がなければ、余裕をもって可能であった。

(注2)ただし、妥協案を提出する前提で示された当初案の違法性を認識していた場合に限定される。

□この点、被告は何ら特段の事情を説明せずに、単に基準と整合している(被告準備書面(2)3頁)とするだけで、反論とはいえない見解を示すにとどまる。被告は、本件換地設計基準は上位基準たる憲法や法の換地設計基準に拘束されるものであることをまったく理解していない。

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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