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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(7)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
10 保留地設定の不当性
(1)保留地の条件
保留地の設定要件は、整理前宅地総額と整理後宅地総額の差額の範囲とされており(法第96条)、法の精神に照らし、事業費捻出目的たる保留地設定は地権者保護の要請に大きく劣後するのは明らかである。
もっとも、本件保留地の設定が直接的に損害をもたらしたわけではない。あくまで、本件従前地の大部分が〇〇神社の仮換地となったこと、本件処分により過分な使用収益停止を受けたこと及び被告の詐欺に基づく錯誤から損害が生じたのであるが、その配置決定には次のとおり不当性がある。なお、本件保留地は付保留地(注)ではない。
(注)付保留地 小規模宅地の仮換地の隣に、その仮換地使用収益権者に買い取らせるために設定される保留地である(下村123頁)。施行者が停止条件付売買契約(随意契約)により、割付ける保留地で事実上の増歩である。
(2)本件保留地設定の異常性
この論点は、按分義務の不履行、すなわち留保行為や区域設定の違法性ひいては基準地積とも密接に関連するものであり、原告準備書面(6)(5~6頁)等(注)に詳述したところを再度確認いただきたい。
都道府県担当の見解によると事業開始直後(仮換地指定前日)の事業計画変更(甲66-1・2)は極めて異例だとのことである。設計図(甲64)に示すとおり一気に仮換地指定前日に区画街路が増設された。
保留地設定場所の決定は施行者の合目的な裁量権の範囲内にあるとしても、優劣を誤ってはいけない。
本件保留地は元々狭隘な密集小団地が形成されていた(〇〇団地)ところに無理矢理割り込ませた画地で、しかもそのために敷設された新設街路(〇〇号街路)も幅員4mに過ぎず、当該団地がそのまま狭隘密集性を引きずったまま拡張されたような有様である。さらに、本件保留地南側は〇〇神社の森(高木)が覆うように林立していたため、日照、通風等の環境条件が著しく劣悪であった。そのような悪環境下であったためになかなか買い手がつかず、何度か値下げを試みた上で半ば叩き売りしたような格好で処分するに至ったものである。
なお、現在は神社側の好意により高木は伐採され、日照は若干改善された模様である。
(注)受益率の低い街区であるから、そもそも保留地を割り込ませる余剰スペースはない。
11 妥協案(乙2の図案)につい
(1)被告の虚言
被告は、最重要資料である整理前の調査資料、測量図等を一切保管しておらず、評価の詳細も何ら施行者らしき説明ができないのは本訴えの答弁の中でも顕著な事実である。
そのような者が地権者700名中のたった1名に過ぎない前主の30年も前の言動をすべて細かく記録しているかの如く主張しているのはどう考えても不自然である。審議会議事録の大半を入手し、通読したがそこに前主が登場したと思われるのは方針転換(下記(5)で詳述)により仮換地指定の変更要望書(甲72)を提出した際の1回のみである(注)。
しかも、内部の線形変更のみで他者への影響がないことからあっさりと承認されている。したがって、前主に関する記録、記憶はほとんど保有していないであろう。被告は数少ない記録のみを頼りにすべてを憶測により拡張し、独自の理論展開を図っている。前主の人物像を都合よく作出して、こうあって欲しいという願望を訴えているに過ぎないものばかりで、そこには何ら真実を伝えるものがない。
(注)当初の要望書(乙2)に係る審議は行われていないと思われ、被告の専断により妥協案は拒絶され、翌日に事業計画変更、その翌日に本件処分①は下されたと考えられる。
(2)違法性の認識欠如
前主(以下本項では「〇」とする。)が妥協案を提出したということを前提に議論する場合に注意しなければならないのは、原告準備書面(2)2頁③~4頁④に記載したとおり、〇は被告が行った違法な一連の処理について違法なものだとはまったく認識していないという事実である。
原告は、乙第2号証を“妥協”の末の産物であろうとの考えで妥協案と表記しているが、詳細な情報(注1)が〇に開示されていれば、当然妥協案を提出するには至らなかった。
要するに、違法性の認識があれば、妥協する必要もなかったわけであるから、そのような卑屈な図案を出すには至らなかったということである。よって、〇が積極的に規模を縮小した不整形な図案(妥協案のこと)を提出したわけではないという事実を忘れてはならず、あくまで妥協できる限界案なのである。
繰り返すが、妥協案に関する原告の全主張(注2)は、被告の行った違法な換地設計案(注3)について、〇が違法性の認識を欠いていることを前提とするものであることに留意いただきたい。
妥協案であれば、照応原則が満たされ、違法性がないということを意味するものではない。本来、地権者の希望と照応適否は別問題である。当初案が違法であることを知らずに、本来であれば遠慮する必要がないにもかかわらず、精一杯遠慮したうえで描いた図案すらも認められずに拒否されたということを改めて強調しておきたい。
(注1)整理前後の路線価、画地評価や按分後の基準地積(按分率)、減歩率等の情報は不開示であった。当初案が適切な評価、適切な按分による基準地積に基づき適切に作成されているものと盲信し、当初案の規模にあまり乖離しない範囲でぎりぎり受忍できる図案として提出したものと考えられる。
なお、当初案は祠の屋根がはみ出てしまうかのような斜めの外郭線により鎮守の森が削ぎ落とされた上に、南西側に醜く出っ張ったあまりにも酷い不整な地形であった。南西側に醜く出っ張った部分は、そのまま押し付けられ、その後、前主は不要と判断し宅地化したに過ぎない。
(注2)口頭弁論期日における発言、既提出書面(本書を含む。)の記載等
(注3)違法な路線価及び違法な画地評価並びに違法な職権更正不作為及び違法な按分義務不履行(違法な按分区域設定、違法な留保行為を含む。)に起因する違法な基準地積を基礎とした違法な換地設計を指す。
(3)〇の願い
前主が妥協案を提出したとする前提では、上記(1)の内容を念頭に次のとおり判断するのが相当である。
本件従前地の高台部分は明治期以来、自ら国の犠牲となった先祖を祀った神社境内地として当家の誇りとするものであった。しかしながら、その特殊性ゆえに区画整理の目的たる宅地利用の増進、優良な宅地造成とは相容れない正反対の性格を有することは否めない。
〇は、神社境内地という特殊性に加え、高台の山林という客観的にも宅地利用に不向きな土地柄ゆえに、宅地利用は考えていないだろうと被告に決めつけられ、一般宅地に比して不利な扱いを受けることを危惧した。
つまり、換地設計における例外的措置の対象として被告に都合よく粗雑な扱いをされたくなかった。不整形な形にされたくない。山林だからといって手抜きされるのはご免だ。区画整理区域に取り込まれた以上ある程度の減歩は避けられない(注1)が、事業協力する(犠牲になる)のだから、せめて他の一般宅地と同等に扱って貰いたい。
すべて美しく、整形な形状にと願った。これらの心情を表現したものが妥協案に付されたコメントであったと解される。そのために、冒頭で(図案中の)4番の画地が不整形で大きすぎるとし、もともと3筆で綺麗な形状であったものが無理に合筆されて大きくなり、かつ著しく歪化された画地(甲4※番号は5番に変わっている。)にされていたためにその分割、整形化を要望した。そして、「各画地に建物が新築できるよう」という苦肉の策ともとれる非現実的(注2)な理由を最後に付し、他の一般宅地と同様の取り扱いを懇願したものと考えるのが相当である。
しかし、被告は、〇の非現実的なコメントに惑わされることなく、本音(未来永劫神社境内地のまま(注3))を見抜き、当初案の南西側に歪(いびつ)に突出した宅地利用に不向き(高低差あり)な山林部分の押し付けを撤回しなかった。
なお、4番画地を縦に分割する破線は、当初案に示された5番画地の側界線と重なると見づらくなることから僅かにずらしたものと考えられる。また、被告のいうような神社転用による宅地化を考えるなら、全体を不整形にしてまで祠から北方へ14~15mも確保できるよう指定(つまり奥行を必要以上に重視すること)するのは非効率的であり現実的ではない。むしろ、祠から東方へ12m以上(図面上25m位か)を確保して全体が整形となるよう要望するのが現実的である。
端的にいうと、横幅と全体の形状を犠牲にしてまで、奥行の確保を望むのは、宅地利用の合理性に逆行するものであり現実的ではない。要するに、〇は神社部分の宅地化など考えてもいなかったということである。醜い地形を嫌い、人並みの整形にして貰いたい。そして、神社は従来どおり大切に維持していきたい。ただ、それだけを望んだのである。証拠として〇の残したメモの一部(甲93)を提出する。これは、〇が生前記した「工事記録」と題する手帳の一部で、そこには、〇〇年に神社屋根の葺き替え工事で1,410,000円、〇〇年に神社石碑工事159,600円を支払い、〇〇年神社正門扉修繕を行った旨が記録されている。これらは、〇が神社をこよなく大切にしていた事実を証明するものである。神社転用、神社破壊を予定するものが行う内容ではない。なお、受託業者は地元業者ばかりで、名は伏せずに複写したので疑義があれば直接確認してみるがよい。
(注1)上記(1)のとおり、違法性の認識を欠くことからある程度の減歩はやむを得ないものと考えていたのであろう。
(注2)図案の各画地に建物を新築するのは客観的にも現実的ではない。なぜなら、境内地部分は高台で、手前の平坦地にはもともと〇〇が存在していたからである。
(注3)〇の本音は、本件処分②の要望書(甲72)にも表れている。祠がはみ出した従前地形の修正を要望し、神社を残していくと明確に主張している。
【主な引用文献(順不同)】
1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」
平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)
2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」
平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)
3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」
昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)
4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」
昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)
5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」
昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)
6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修
平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)
7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」
昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)
8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」
昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)
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