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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.47

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(7)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

 

13 仮換地指定と損失補償(注)

(注)本項における損失補償は、法第101条各項(仮換地の指定等に伴う補償)の規定による場合又はこれらの規定を類推適用する場合の損失補償を指す。

(1)仮換地指定の法的性質

異常な清算指数からも本件従前地と本件仮換地との経済的価値が大きく異なり、未だ仮清算(法第102条第1項)も行われていない事実については被告にも異論はあるまい。にもかかわらず、換地処分までの間における損失補償すら不要とされるならば、その法的根拠は何か。被告がいうように法に規定がないからとするだけでは不十分で、この点を解明するためには、まず仮換地指定の法的性質を明確にしなければならない。

下記(4)に示すとおり区画整理の本質に照らせば、仮換地指定に従前地所有権を消滅させる効果はない。通常は、従前地の使用収益権に代えてこれに照応する仮換地(経済価値的にも同等の仮換地)の使用収益権が与えられることから損失は生じないものとされる。この理は、換地不交付(法第90条)の場合には損失補償を要する(法第101第3項)とされていることと整合する。また、換地不交付は宅地の一部に対する場合も規定されている(法第90条)ことから、法定強減歩((注)、法第91条第5項)の場合も換地不交付に準じるものと考えられる。そして、法定強減歩に損失補償を要することとの均衡上、本件強減歩にも損失補償を要すると解するのが相当である。法に規定されていないのだから不要であるとの否定的な見解に対しては、違法な評価、違法な基準地積、違法な換地設計に基づく異常事態、つまり法の予定しない違法状態であるからこそ規定が存在しないと考えられるから何ら不都合は生じない。

(注)法定強減歩と本件強減歩の類似性については前記12(4)で詳述。

(2)法第101条の類推適用

法第101条の各規定に直接該当した事案ではないが、同条の趣旨に従って損失補償をすべきとされた判例(甲府地判昭和32年8月5日(判例29))が存在する。また、参考にすべき判例として次のものがある。

最判昭和46年11月30日(判例30)

(3)損失補償の対象範囲

同条各項の規定による損失補償の対象範囲は、いずれも「通常生ずべき損失」の範囲とされているが、それはこのような事態に立ち至らなければ必要としなかったであろう臨時的な出費及び従前の宅地をそのまま使用収益していたならば得たであろう利益について、通常の相当因果関係の認められる損失の範囲に限って補償すべきであるとする趣旨である。なお、各項の規定により補償を受けることができる者は、登記又は法第85条の申告若しくは届出のあった権利を有する者に限られるとされている(研究会391頁)

法第85条の申告、届出に係る期限はないものとされている。したがって、本件においても、損失(損害)が発覚した以上、「通常生ずべき損失」の範囲の補償、すなわち「従前の宅地をそのまま使用収益していたならば得たであろう利益」を被告は支払わなければならないのである。

(4)損失補償と清算金

適法処分(法定強減歩)により生じた全損失の補填方法は次の2通りが考えられる。※本件強減歩は違法行為を原因とする点では違いがあるものの、経済的な不利益相当額を算出する目的においては共通性を有することから次の2通りが準用される。

① 次のアとイの合計とする方法

ア 仮換地指定の効力発生日から清算金の算定基準日(注1)までの地代相当額(各期時価差額(注2)×適正地代率)

イ 清算金の算定基準日の時価差額(注2)及びこれに清算金支払日まで年6%の利子を付し時点修正した価額

※ア、イともに最判昭和32年12月25日(判例4-1)最判昭和48年10月18日(判例4-2)の趣旨(“完全な”代償を要するとの趣旨)から当然認められるべきである。

② 本件処分①の効力発生日(〇〇〇年〇月〇日)又は立木補償契約締結日(〇〇年〇月〇日)における時価差額に清算金支払日まで年6%の利子を付し時点修正した価額 ※損失補償説による清算金相当分

※①②いずれの場合においても施行条例により

清算金の算定基準日における従前地の評価額(注3)×比例率-清算金の算定基準日における換地の評価額 ※不均衡是正説による清算金相当分

の計算式により算定された清算金の交付を要する。

(注1)「清算金の算定基準日」は、本件土地評価基準第24条の規定から工事概成時(下記(6)で詳述)である。

(注2)「時価差額」は訴状別表に記載の本件逸失差積分時価相当額と同旨である。

(注3)「評価額」は必ずしも時価であることを要しない。

(5)被告の示す見解に起因した本訴提起

原告は、被告が原告の損害は清算金により支払う旨主張していること及び工事概成時は未到来としていることから原告に対する損失補償(損害賠償)は上記(4)①の方法による、あるいはこれに準じた方法によるものと判断し、①アの一部について本訴えを提起したものである。これは時効の論点(後記15で詳述)とも深くかかわる。

なお、本訴えの全請求が否定される場合は、②の方法により損害(損失)が補填されるべきと考える。

(6)工事概成時について

本件土地評価基準(甲27)第24条の規定によれば、指数1個の単価は、工事概成時の標準的な宅地の適正価格を基準として定めるとされている。すなわち、工事概成時の適正価格により清算されることが予定されており、数多の判例において、整理前後とも工事概成時を評価の基準時とするとしていることから、原告もこれに異論はないのであるが、工事概成時がいつの時点を指すのかが問題となる。この点、被告は非常識にも未到来と判断している、つまり工事完了時説を主張しているものと考えられるが、工事概成時を評価の基準時とする根拠は、換地について事業効果還元の均一化を図る必要性から事業効果が表面化してきた時点で、かつ事業外要因による価格変動の生じることが少ないうちに評価すべきという点にあり、これにより従前地についても一般的な価格変動を考慮する必要性があることから同一時点において事業効果がない状況を想定し評価することになるのである。

本件事業区域においては、〇〇〇年度(〇〇〇年1月1日時点)の相続税路線価甲88-1・2・3から全面的に公表されるに至った経緯を考えても、〇〇〇年1月1日時点では既に概ね工事が完了していたものと判断すべきである。局所的に事業の遅延をもたらした長期未成工事箇所(昨年直接施行された北部の一部分甲88-1)付近においても同時点の相続税路線価がしっかりと付されていたこと、しかも、この時点で大半の工事は完了済であった事実からもこの見解を否定すべき理由は見当たらない。

仮に、工事完了時説を正当とするなら、なぜ本件土地評価基準に「工事完了時」の適正価格を基準とすると表記されないのか、また、なぜ「工事概成時」として“概ね完成”との意味を含ませたのかについて説明がつかない。なお、本件事業のように工事概成時(遅くとも〇〇〇年1月1日時点)と換地処分時(清算金決定時)とが大きく異なる場合は年6分の複利加算をして時点修正することが適正であり、利息が付されていなければ違法と考えられる東京高判平成17年2月9日(判例10)横浜地判平成16年4月7日(判例11)福岡高判昭和55年4月22日(判例6)広島高判平成3年6月28日(判例31)。また、仮換地指定に9年要した場合に、その中間時を清算金算定の土地評価基準時としたことが適正であるとされた事例鹿児島地判昭和54年1月29日(判例32)もあるので参考にされたい。

 

【主な引用文献(順不同)】

1 下村郁夫著「土地区画整理事業の換地制度」

平成13年7月30日初版発行(本文において「下村」という。)

2 松浦基之著「特別法コンメンタール土地区画整理法」

平成4年7月10日初版発行(本文において「松浦」という。)

3 新井克美著「登記手続における公図の沿革と境界」

昭和59年7月15日初版発行(本文において「新井」という。)

4 清水浩著「土地区画整理のための換地設計の方法」

昭和49年1月10日初版発行(本文において「清水①」という。)

5 清水浩著「土地区画整理のための換地計画の進めかた」

昭和56年5月17日初版発行 (本文において「清水②」という。)

6 土地区画整理法制研究会著「逐条解説土地区画整理法改訂版」国土交通省監修

平成18年12月10日初版発行(本文において「研究会」という。)

7 芦田修、阿部六郎、清水浩共著「土地評価と換地計画」

昭和50年6月30日初版発行(本文において「芦田等」という。)

8 渡部与四郎、相澤正昭著「土地区画整理法の解説と運用」

昭和50年3月25日初版発行(本文において「渡部」という。)

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