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土地区画整理事業/専門家相談事例回想録‐vol.51

お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。

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〇〇〇年(〇)第〇〇号

原告 〇〇〇〇

被告 〇〇〇 

〇〇地方裁判所第〇民事部御中

〇〇〇年〇月〇日 

準備書面(8)

〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号

原告 〇〇〇〇

訴訟代理人弁護士〇〇〇〇

③ 上水道について

ア 本件事業開始時に水道が完備していた事実

水道法

(責務)

第二条の二 地方公共団体は、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、水道の計画的整備に関する施策を策定し、及びこれを実施するとともに、水道事業及び水道用水供給事業を経営するに当たつては、その適正かつ能率的な運営に努めなければならない。

(給水義務)

第十五条 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。

2 水道事業者は、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。(一部抜粋)

〇〇(担当するのは水道課、以下本項において「水道事業者」という。)は、水道使用希望者から加入者負担金を徴収し、水道水の供給を行っている。水道事業者に確認したところ、この水道を使用する権利(以下「水道使用権」という。)は、従来から給水装置(注)を設置した場所(土地)に帰属するとの考え方により取り扱われてきた。

本件土地に係る給水装置利用による水道使用権も例外ではなく、前主は〇〇年に加入(甲)し、水道事業加入者として登録されたとの回答を得た。

したがって、本件事業開始時において、本件土地は水道使用権を備えた土地だったということであり、本件土地に対し、水道事業者は給水する義務を負っていた(水道法第15条第2項)のである。

(注)需要者に水を供給するために〇の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する用具の設備をいう。

イ 新管敷設費用の転嫁に係る不法性

〇〇水道事業給水条例(以下「給水条例」という。)

給水区域)

第2条 給水区域は、〇全域とする。

(給水装置の新設等の申込み)

第7条 給水装置の新設等をしようとする者は、管理者の定めるところにより、あらかじめ管理者に申し込み、その承認を受けなければならない。

(新設等の費用負担)

第8条 給水装置の新設等に要する費用は、当該給水装置の新設等をする者の負担とする。ただし、管理者が特に必要があると認めたものについては、〇においてその費用を負担することができる。

(工事施行等)

第9条 給水装置工事は、管理者又は管理者が法第16条の2第1項の指定をした者(以下「指定給水装置工事事業者」という。)が施行する。

2 前項の規定により、指定給水装置工事事業者が給水装置工事を施行する場合は、あらかじめ管理者の設計審査(使用材料の確認を含む。)を受け、かつ、工事しゅん工後に管理者の工事検査を受けなければならない。

3 第1項の規定により管理者又は指定給水装置工事事業者が工事を施行する場合において、管理者は、当該工事に関する利害関係人の同意書等の提出を求めることができる。

(給水管及び給水用具の指定)

10 管理者は、災害等による給水装置の損傷を防止するとともに、給水装置の損傷の復旧を迅速かつ適切に行えるようにするため必要があると認めるときは、配水管への取付口から水道メーターまでの間の給水装置に用いようとする給水管及び給水用具について、その構造及び材質を指定することができる。

2 管理者は、指定給水装置工事事業者に対し、配水管に給水管を取り付ける工事及び当該取付口から水道メーターまでの工事に関する工夫、工期、その他の工事上の条件を指示することができる。

3 第1項の規定による指定の権限は、法第16条の規定に基づく給水契約の申込みの拒否又は給水の停止のために認められたものと解釈してはならない。

(給水装置の変更等の工事)

13 管理者は、配水管の移転その他特別の理由によって、給水装置に変更を加える工事を必要とするときは、当該給水装置の所有者の同意がなくても、当該工事を施行することができる。この場合において、その工事に要する費用は、当該給水装置に変更を加える必要があった者の負担とする。

水道使用権は、水道事業者による本管取替工事、修復工事等に伴い、その都度当該工事費の負担を伴う権利ではない。つまり、臨時的な費用負担義務を伴う権利ではない。そして、相続のみならず、売買により取得した者においても契約に基づき当該土地に付随する水道使用権を承継するものとして取り扱われている。

給水条例第7条から第10条、第13条の規定から明らかなように水道使用に係る〇民(地権者)の自由度はないに等しい。自由があるとすれば使用量についてだけである。

つまり、使用量に応じた口径の選択においてのみ自由が認められているに過ぎない。地権者負担となる給水装置工事については水道事業者が指定した業者だけが施工を許され、当該業者も水道事業者の厳格な設計審査を受ける等指揮監督下に置かれているのである。

このように給水装置を備え水道使用権を有していた者が後発的な新設(追加又は取替交換)工事による新管から給水を受けるか、あるいは従来どおり連合給水管等から給水を受けるかは、水道事業者(被告と同一視できる。)の都合(実質的には道路管理者等の都合も含む。)により決まるものであり、地権者に引込方法に係る自由な選択権はないのである。

なお、いずれの方法においても日々の水道使用料金等に何ら差異が生じることはなく、水質等使用上の便益に異なるところはない。

よって、仮に本件接続替えが事実であった場合でも、それはあくまで工事上の都合によって、これまで使用してきた給水装置(前主が自費で設置したもの)の使用が困難となってしまうことから、水道事業者や当局(区画整理課)の指導(要請)に応じたに過ぎない。

要するに工事に伴う損失補償として接続替工事を了承したにとどまる。また、補償であるから本件水道事業者あるいは被告と前主との間で、当該接続替工事の費用に係る対価の授受は何ら行われていない。給水条例第13条の規定中「当該給水装置に変更を加える必要があった者」の解釈、運用上の取扱いについて水道事業者に照会したところ別紙(甲)のとおり回答を得た。

当然ながら公共事業には本件事業も含まれる。なお、当該連合給水管を利用していた他の者は工事上の支障がなかったことからそのまま従来どおりの使用方法を続けているのである。

前主が本件土地においてそれまでの25年間何ら不自由なく水道使用してきた事実を看過してはならず、接続替えがあったとしても何ら特別な利益を享受したものではないことを明確にしておきたい。

なお、区画整理に伴う配水管敷設であっても、水道事業者にてその状況を逐次に管理、把握すべきものであるが、本件事業(本件工事)の担当課(区画整理課)からは正式な引き継ぎが未だになされていないとのことであった。

結論的には、本件工事費用を一律減歩により徴収するのみでは自らの費用負担により既に給水装置工事を行い、かつ加入者負担金を支払い水道使用権を得ていた地権者に二重払いを強いる結果をもたらし、公平、公正な評価とはなりえない。整理後の路線価にのみ3ポイント加算するのであれば、整理前の画地評価において、既に自費で引込工事を完了し水道使用権を備えていた土地に対しては、その分の増価補正を行うのが相当である。さもなければ、従前田畑で引込工事に相当な費用負担を負わねばならなかった土地と水道が完備した土地の価値が同じという扱いになってしまい公平性、客観性を害する。

なお、被告が証拠資料として提出した図面(乙6)は被告の主張を証明するものではない。何ら工事の詳細な把握を可能とするものではなく、何ら受益の証拠となるものではない。被告は、単に接続替えの事実のみを殊更に主張し、接続替えに至った事情を何ら説明していない。また、何ら本件土地の受益を証明する証拠でもない。繰り返すが、そこに記された付替の表記が事実を反映したものであったとしても、被告の工事の都合により、前主の水道利用が阻害されることから採られた救済措置に過ぎない。要するに、工事に伴う損失補償に相当するものである。本件工事以前の四半世紀にわたり当該土地において何ら不自由なく水道使用してきた者が、後発的な区画整理により、新たに対価を請求される根拠はなく、土地を減歩されるいわれもない。

もっとも、〇内全域が給水対象とされているにもかかわらず、区画整理区域内の地権者のみに本管工事費用の負担を課すのは、法の下の平等(憲法第14条)に反する重大な違憲、違法行為である。

なお、被告のなした既存住宅地の水道使用権に係る不正評価については後記3(1)で公示価格を参照しながら補足する。

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