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〇〇〇年(〇)第〇〇号
原告 〇〇〇〇
被告 〇〇〇
〇〇地方裁判所第〇民事部御中
〇〇〇年〇月〇日
準備書面(9)
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
原告 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
1 訂正について
(1)訴状3頁10行目「被告の不法行為による損害賠償請求権」を「被告の不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権」と訂正する。
なお、準備書面(8)1頁2(5)で記載した訂正後の「本件事業における被告の違法行為及び違法な不作為」には、上記の債務不履行が含まれる。
(2)準備書面(8)4(1)整理前路線価の異常性(4頁)について
公正価値に基づく適正格差率を求めるにあたって規準価格(公示価格)を補正することにより客観性を検証する際に事業外要因及び本件事業要因を排除する旨記載したが、次のとおり誤りであるから訂正する。
事業外要因は各土地のもつ潜在価値であるから排除することを要しない。したがって、排除すべきは、本件事業要因のみである。
なお、事業外要因及び本件事業要因に基づく価格上昇期待値の大小関係は既述のとおり、
事業外要因 公示地1>公示地2>本件路線
本件事業要因 公示地1>公示地2>本件路線
総 合 公示地1>公示地2>本件路線
であるから、本件事業要因の順序(注)に変わりがない以上、被告の評価が公正価値から大きく乖離した不正なものであるとの結論に何ら変わるところはない。
(注)被告のなした不正評価による予測においても、公示地1(860点(整理後路線19-0)/520点(整理前路線59-0)≒1.654)、公示地2(860点(整理後路線49-3)/730点(整理前路線73-0)≒1.178)、本件路線(1120点(整理後路線0-3)/1000点(整理前路線1-0)=1.120)となっている。各数値は、算出根拠に恣意性、不公平性が介入していることから適正さを欠くものであるが、価格上昇率の大小関係(順序)は相当である。
(3)準備書面(8)7頁4行目「評価方法(路線価方式)の選択、採用に係る裁量と」を「評価方法(路線価方式)の選択、採用に係る裁量が認められるとしても」と訂正する。
2 補足
(1)債務不履行に基づく損害賠償請求権ついて
不法行為も債務不履行も違法行為として共通の性質をもち、その違法な行為によって他人に生じた損害を賠償させる制度である点で共通している。・・・・・・ 債務不履行は契約などの特別な信頼関係に基づく相手方の利益を侵害する場合であることから、(不法行為に比べて)債務不履行のほうが相手方に対する利益の侵害度が重いといえる(山本進一・基コン債権各論〔第三版219頁〕)。
債務不履行では、加害者である債務者のほうが帰責原因のないことを立証しなければならない。
ところで、本件事業において、施行者と地権者とは契約関係にはない(注1)が、ある法律関係(注2)に基づいて特別な社会的接触関係に入った当事者といえる。その法律関係の信義則上の義務として、施行者は相手方(地権者)に対し損害を与えないよう配慮すべき義務があり(注3)、いわゆる安全配慮義務に類似した義務があるものと考えられる。本件において、被告は当該信義則上の義務を怠った(注4)がために、前主(原告)に対し損害を与えたのであるからその賠償責任は免れない。
また、事業終了までの間、被告は施行者として当該義務に絶えず拘束されることに異論はないであろう。よって、当該義務に時効消滅は観念しえず、債務不履行、違法な不作為による損害賠償請求権は逐次発生しているものである。なお、当該債務不履行と訴状記載の損害額に相当因果関係があることは説明するまでもない。
(注1)個別の補償契約に際しては、契約関係にある。立木補償契約に際しても、被告には前主に損害を与えないよう配慮すべき、信義則上の付随義務があった。ところが、被告は前主の錯誤、不知に乗じて鎮守の森敷地の無償占拠を謀ったのである。
(注2)いうまでもなく土地区画整理法上の仮換地に係る指定権者と被指定者という関係である。
(注3)参考となる判例に、最判昭和46年11月30(判例30)がある。
「施行者としては、事業の施行に当たり、一般に、関係人に不当な不利益や損害を及ぼすことのないよう配慮すべき義務を負うことはいうまでもない・・・・・・責に帰すべき事由のない被上告人に対し、みずからこのような救済手段をとるべきものとするのは相当ではなく・・・・・・」とされている。
(注4)施行者は、従前地に見合った仮換地を付与する義務がある。本件において、当該義務が果たされていないことは明らかで、これを補う措置も何らとられていない。
(2)上水道について
ア 上水道減歩の違法性
公共減歩によって整備される公共施設は、道路、公園、広場、河川、運河、船だまり、水路、堤防、護岸、公共物揚場、緑地に限定される(法第2条第5項、同施行令第67条)。上水道は上記公共施設のいずれにも該当しない。
したがって、被告は、「上水道整備の費用は投下されており、加算率を一律3ポイントとしていることも、適正である。(被告準備書面(4)6頁)」としているが、区画整理の名を借りて、配水管敷設工事費用の回収を公共減歩により行うことはそもそも違法である。
イ 公正価値と著しく乖離した整理前路線価
先般、事業開始時において宅地見込地(公示地1)と既存住宅地(公示地2)とでは公示価格に大きな乖離があり、前者は水道未整備の状況を所与として、後者は既に水道が完備している状況を所与として、それぞれ値付けされていることを説明(注1)し、被告のなした実態無視による一律減歩処理が客観性、公平性を著しく欠くことを証明したところである。このような杜撰な処理が重層的(注2)に行われて不正な路線価が作出されたのである。
なお、乙第7号証は単に工事を行ったと主張する箇所を説明する資料に過ぎず、何ら適正評価の証拠となるものでない。また、原告の要求した工事代金支出の証明となる証拠も示されておらず不十分である。
(注1)さらに補足すると、公示地3(甲96-3)は、市街化調整区域内で駅距離3kmの農家住宅地ながら〇道整備済で水道完備の状況であることから、市街化区域内で駅距離2km(〇〇橋竣工前の距離。※〇〇橋が竣工した都市計画道路開通後は約1.4km)ではあるものの道路、水道未整備の宅地見込地と同価格となっている。このように、水道設備の有無は土地価格に大きな影響を及ぼす価格形成要因である。
(注2)公示価格(規準価格)から導かれる各路線価の適正格差率から著しく乖離しているのは、上水道(Y値)、防火保安性(F(P)値)等の一律処理や事実誤認(実態無視)が重層的に行われていることが主因である。
ウ 事業開始時に水道が完備していた事実
本件土地も被告が認める(被告準備書面(4)6頁)とおり、事業開始時において既に水道完備の状況(本件路線下に配水管敷設済)であった。さらに水道事業者(〇〇〇水道課)から入手した資料を提出し、補足する。
水道法
(責務)
第二条の二 地方公共団体は、当該地域の自然的社会的諸条件に応じて、水道の計画的整備に関する施策を策定し、及びこれを実施するとともに、水道事業及び水道用水供給事業を経営するに当たつては、その適正かつ能率的な運営に努めなければならない。
(給水義務)
第十五条 水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない。
2 水道事業者は、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。(一部抜粋)
水道事業者は、水道使用を希望する者から給水加入金(甲102)を徴収し、水道水の供給を行っている。水道事業者に確認したところ、この水道を使用する権利(以下「水道使用権」という。)は、給水装置(注1)を設置した場所(土地)に帰属するとの考え方により従来から取り扱われてきた。本件土地についても、前主は〇〇年に給水装置を設置(甲103)し、水道事業加入者として登録されて今日至る(注2)。
したがって、本件事業開始時において、本件土地は水道使用権を備えた土地であり、水道事業者は給水する義務を負っていた(水道法第15条第2項)のである。
また、〇〇〇においては、相続や売買により土地を取得した者は当該土地に付随した水道使用権を承継(注3)するものとして取り扱われている。要するに、土地に付随する設備、権利として一体として取引対象とされるのが通常である。
(注1)需要者に水を供給するために〇の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する用具の設備をいう。
(注2)現在水道利用の希望がないので、相続による名義替えは未了のままである。
(注3)売買の場合、当事者間の契約によるが、水道使用権を留保する売主は通常いない。なぜなら、水道使用権(給水装置)のない土地の価格は大きな減価をもたらし、合理的ではないからである。
エ 新管敷設工事費用の地権者転嫁に係る違法性
〇〇〇水道事業給水条例(以下「給水条例」という。)
(給水区域)
第2条 給水区域は、〇全域とする。
第2章 給水装置の工事及び費用
(給水装置の新設等の申込み)
第7条 給水装置の新設等をしようとする者は、管理者の定めるところにより、あらかじめ管理者に申し込み、その承認を受けなければならない。
(新設等の費用負担)
第8条 給水装置の新設等に要する費用は、当該給水装置の新設等をする者の負担とする。ただし、管理者が特に必要があると認めたものについては、〇においてその費用を負担することができる。
(工事施行等)
第9条 給水装置工事は、管理者又は管理者が法第16条の2第1項の指定をした者(以下「指定給水装置工事事業者」という。)が施行する。
2 前項の規定により、指定給水装置工事事業者が給水装置工事を施行する場合は、あらかじめ管理者の設計審査(使用材料の確認を含む。)を受け、かつ、工事しゅん工後に管理者の工事検査を受けなければならない。
3 第1項の規定により管理者又は指定給水装置工事事業者が工事を施行する場合において、管理者は、当該工事に関する利害関係人の同意書等の提出を求めることができる。
(給水管及び給水用具の指定)
第10条 管理者は、災害等による給水装置の損傷を防止するとともに、給水装置の損傷の復旧を迅速かつ適切に行えるようにするため必要があると認めるときは、配水管への取付口から水道メーターまでの間の給水装置に用いようとする給水管及び給水用具について、その構造及び材質を指定することができる。
2 管理者は、指定給水装置工事事業者に対し、配水管に給水管を取り付ける工事及び当該取付口から水道メーターまでの工事に関する工夫、工期、その他の工事上の条件を指示することができる。
3 第1項の規定による指定の権限は、法第16条の規定に基づく給水契約の申込みの拒否又は給水の停止のために認められたものと解釈してはならない。
(給水装置の変更等の工事)
第13条 管理者は、配水管の移転その他特別の理由によって、給水装置に変更を加える工事を必要とするときは、当該給水装置の所有者の同意がなくても、当該工事を施行することができる。この場合において、その工事に要する費用は、当該給水装置に変更を加える必要があった者の負担とする。
〇内全域が給水対象とされており(給水条例第2条)、水道事業者の指導に従い給水装置を備え給水加入金を収めた者は当該地において水道使用権を取得し、水道事業者は当該水道使用権者へ給水する義務を負う(水道法第15条)。
給水条例第13条の規定中「当該給水装置に変更を加える必要があった者」の解釈、運用上の取扱いについて水道事業者に照会したところ別紙(甲104)のとおり回答を得た。当然ながら公共事業には本件事業も含まれる。要するに、既存管に加えて、本件事業による配水管が敷設されたとしても、その費用は原因者たる施行者が負担すべきものなのである。また、本件事業は個人や組合の発意に基づく区画整理ではなく、公的(行政)施行であるから、水道事業者、本件事業の施行者ともに〇〇〇であり、地権者との関係において、両者は一体である。よって、以下水道事業者も本件事業施行者も被告と表記する。
以上のとおり、水道使用権は、原因者たる被告による配水管取替(追加)工事、修復工事等に際して、その都度当該工事費用を負担すべき義務を伴う権利ではない。また、被告は〇内全域の水道使用権者に対し絶えず給水義務を負い、当該給水義務を履行するために必要となる工事費用は被告が負担すべきとするのが法の定めである。市街化調整区域内の土地ですら配水管敷設に係る地権者負担金は課されずに給水されているにもかかわらず、区画整理区域内の地権者のみに工事費用の負担(一律減歩)を課すのは、法の下の平等(憲法第14条)に反する重大な違憲、違法行為である。
エ 引込方法に係る実情
給水条例第7条から第10条、第13条の規定から明らかなように水道使用方法(引込方法)に係る市民(地権者)の自由はない。自由があるとすれば使用量についてだけである。つまり、使用量に応じた口径の選択(注)においてのみ唯一一定範囲内での自由が認められているに過ぎない。地権者負担となる給水装置設置工事については被告が指定した業者だけが施工を許され、当該業者も被告の設計審査を受ける等厳格な指揮監督下に置かれているのである。
このように給水装置を備え、水道使用権を有していた者が後発的な新設(追加又は取替交換)工事により敷設された新管から給水を受けるか、あるいは従来どおりの方法で給水を受けるかは、あくまで被告の判断(実質的には道路管理者等の都合も含む。)により決定されるものであり、水道使用権者(地権者)側には給水方法、引込方法に係る選択の余地はない。
なお、いずれの方法においても日々の水道使用料金等に何ら差異が生じることはなく、水質等使用上の便益に異なるところはない。
よって、新管敷設工事により接続替えが行われた場合であっても、当該接続替えはあくまで被告側の都合、例えば新管敷設予定箇所に既設管が存在し、その除却を要する場合や老朽管との取替を行う場合にそれまで使用してきた給水装置の使用が困難となってしまう等の理由によって工事施行者(被告)側がいわば公権力を行使することにより採った措置に過ぎない。つまり、水道使用権者(地権者)は原因者たる被告が施工する接続替工事を了承、受忍する立場なのである。よって、当該工事は損失補償の一環であるから金銭の授受は一切行われない。
(注)口径変更は、水道使用権者の私的な都合によるものであから、当然その費用は当該水道使用権者が負う(甲102)。
オ 被告の虚偽(乙6)
被告と前主との間で、(被告の主張する)接続替工事の費用に係る対価の授受は一切行われていない。もっとも、接続替工事そのものも行われておらず(注1)、従来どおりの引込方法を継続しただけで、何ら変化は生じていない。被告は図面(乙6)の表記(注2)をもって、接続替えが行われたものと早合点し、相も変わらず理由のない主張をしているのである。
なお、同一給水管の使用者も従来どおりの引込方法を現在も続けている。また、事業開始前から本件路線に敷設されていた既存管は、南側の市街化調整区域内の農家住宅等への給水に現在も使用されている。
以上のとおり、本件路線沿線地域において、被告の言う新管工事の前後で土地利用上の便益は何ら変わりがないのである。
(注1)当時、〇〇に従事していた者に確認済である。〇〇年の廃業まで接続替えは一切行っていない。
(注2)当該表記(乙6中の「給水管取出替え」なる表記)は、本件工事により設けられたとする取り出し口を示したに過ぎない。
また、被告は、常に健全なる給水の義務を負うのであり、当該義務の履行の一環として、新管敷設工事を行ったに過ぎない。要するに、被告の給水義務の履行に伴う新管工事であるから、工事費用を地権者から徴収(減歩)するのは違法である。
カ 結論
アに示したとおり上水道は公共施設ではないから、区画整理の名を借りて当該工事費用を減歩により地権者から徴収するのは違法である。
しかも、本件事業は公的(行政)施行の区画整理であり、施行者は水道事業者でもあることから給水義務の履行に伴う工事費用は原因者として自ら負担すべき義務を負う。よって、この義務を地権者に転嫁するが如き措置(強制減歩)は明らかに違法である。
また、工事費用につき区画整理区域のみ地権者負担(減歩は事実上費用負担である。)とするのは法の下の平等に反し違憲である。
さらには、前主が設置した給水装置(取得済の水道使用権)は本件土地利用に伴い、一体的にその効用を発揮するものである。要するに、本件土地の価値を高める要因として土地価格に織り込まれるべきものである。それまで何ら不自由なく水道使用を継続してきた事実を看過してはならない。水道完備による土地の付加価値は事業開始前から既に自らの費用負担で取得済なのである。本件路線で新管敷設工事が行われたとしても本件土地に新たな付加価値をもたらす要因とはなり得ず、土地価格のさらなる上昇をもたらすものではないことを明確にしておきたい。
結論的には、万が一、本件工事費用を本件事業区域内の地権者に転嫁することが許されたとしても、一律減歩により徴収するのみでは自らの費用負担により既に給水装置工事を行い、かつ給水加入金を支払い、水道使用権を得ていた地権者に二重払いを強いる結果をもたらし、公平、公正、客観的な評価とはなりえない。整理後の路線価にのみ3ポイント加算するのであれば、整理前の画地評価において、既に自費で引込工事を完了し、水道使用権を備えていた土地に対しては、その分の増価補正を行うのが相当である。さもなければ、従前田畑で引込工事に相当な費用負担を負わねばならなかった土地と水道が完備した土地の価値がその点では同じ扱いとなってしまい余りにも公平性、客観性を害する。この点、既述の公示価格に基づく公正価値を見落としてはならない。
以上のとおり、前主が後発的な区画整理に伴う工事費用を請求される理由はないのであるから、土地を強制的に減歩されるいわれもない。
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