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お客さまからご相談いただいた、ある土地区画整理事業の事件概要をご紹介します。掲載にあたっては、お客さまのご承諾をいただいております。
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〇〇〇年(〇)第〇〇〇〇号 損害賠償請求控訴事件
控訴人 〇〇〇〇
被控訴人 〇〇〇
準備書面(1)
〇〇〇年〇月〇日
〇〇高等裁判所 御中
〇〇〇都道府県○○区市町村〇〇〇丁目〇番〇号
控訴人 〇〇〇〇
訴訟代理人弁護士〇〇〇〇
(7)11頁(Y値について)
① 前段について
原告の主張はこのような短絡的なものではない。真意を歪曲されており不当である。
この部分に係る原告の主訴は、各路線の従前状況の差異を考慮することなく全路線一律に3ポイント加算とされているのは、受益格差の実態を反映しておらず、実質的公平性の観点(主として横の関係)からは首肯できないとするものである。
② 後段について
ここでは次の重要部分が省かれており不当である。
原告は、本件地前面路線がそもそも事業区域外であること、上水道は法定の公共施設に含まれないこと、上水道完備と引込容易の実態格差を考慮しない点数化(主として縦の関係)、事業区域内のみ地権者へ工事費用の負担を転嫁することが法の下の平等に反する点等についても違法不当である旨を主張している。
(8)11頁(F(P)値について)
原告主張はもっと緻密なものであり、この記載では詳細がつかみきれない。司法による科学的な分析が何ら行われることなく結論へと結びつけられており、不当である。
今一度、原告準備書面(3)3~6頁や原告準備書面(7)32~33頁の記載等につき十分に精査いただきたい。
(9)12頁(d 相続税路線価との比較について)
3行目「整理前」は「整理後」の、4行目「1万4500円/㎡」は「14万5000円/㎡」の、同行「整理前路線」は「整理後路線」の、5行目「1万3500円/㎡」は「13万5000円/㎡」のそれぞれ誤りである。
なお、原告の主張は、後掲(被告の主張)や「当裁判所の判断」で否定されているような短絡的な見解に基づくものではない。今一度、原告準備書面(7)34~35頁等を精査いただきたい。
3 争点(5)(不当利得返還請求権の存否)について
原告主張はこのように単純に要約されるべき内容ではない。判例を交えながら多角的な視点から不当利得の存在を説明している。
4 争点(6)(原告らに生じた損害)について
(1)19頁(原告らの主張)について
原告が請求した対象期間の記載については、〇〇〇〇年〇月〇日付請求の趣旨原因変更申立書により次の期間が追加されていることを看過している点で誤りである。
〇〇〇〇年〇月〇日から〇〇〇〇年〇月〇日までの期間
〇〇〇〇年〇月〇日から〇〇〇〇年〇月〇日までの期間
〇〇〇〇年〇月〇日から〇〇〇〇年〇月〇日までの期間
〇〇〇〇年〇月〇日から〇〇〇〇年〇月〇日までの期間
〇〇〇〇年〇月〇日から〇〇〇〇年〇月〇日までの期間
三 「第3 当裁判所の判断」(原判決20~32頁)について
1 争点(1)(本件処分の違法性)について
(1)22頁12行目、13行目及び23行目「北西部分」は「北東部分」の誤りである。
(2)24頁イについて
原告は、台地部分を含むことにつき、その必要性がなかった、過剰な広域化であったことをも主張したところであるが、この論点に正面から向き合っておらず失当である。
(3)25頁アについて
一般的に、事業開始時に既に宅地利用されていたものについては、公簿地積を基礎として基準地積を定めてもそのことが照応違反に直結する危険性は小さいが、本件のような山林については不照応に直結する危険性は大である。
区画整理の理念に照らせば、施行者としてその相違を考慮していない点につき注意義務違反が認められる。また、実測との大きな乖離が明らかとなった以上、施行者として結果責任を負うべきである。もっとも、現地調査を行っていればこの事態は回避できたのである。
(4)25頁イについて
施行者が縄延の可能性を予見し得た場合でも、実測し基準地積を更正する必要はない旨の判断は、区画整理の理念を無視するものであり失当である。
(5)26頁ウについて
按分区域の設定には合理性が認められるとしているが、合目的な見地からの判断となっておらず説得性を欠く。
そもそも、按分の精神は、主として縄延の可能性が高い区域に対しては大なる按分率を、縄延の可能性が低い区域には小なる按分率をそれぞれ適用することにより、各土地の基準地積が実測に近似するよう取り計らうべきとするものである。
この点、原判決は主として水田か陸田かによって区分することが合理的だといわんばかりである。遺憾ながら按分精神の理解には程遠い。なぜ水田と陸田による区分が按分の精神に適うのか、合理性があるのか説明しておらず、失当である。
また、算定した按分率を適用せず、留保することは施行条例では認められていない。にもかかわらず、違法ではないとしている。
適正な按分により求められた基準地積は地権者の権利、財産権そのものであることを看過している。地権者の権利を制限する場合、それは法定されていなければならない。法律による行政、侵害留保の原則に反し、無償収用を是認するようなもので失当である。
これらは、いずれもが被告準備書面の記載をそのまま転記しただけのものであり、司法の客観的な視点が見受けられず、まったく論理性がない。
(6)27頁アについて
① 土地評価基準違反は違法である。原審においては、まず土地評価基準基準とは何か、その意義、規範性の有無等を明確にしてから原告主張の当否及び被告主張の当否を判断しなければならない。
審理の中で、担当裁判官は、被告に対し土地評価基準とは一体何かとしきりに質問していたではないか。原告は判例(横浜地判H14.4.17(原告準備書面(7)16~17頁))を掲げ、土地評価基準の意義を説明してきた。
担当裁判官は、土地評価基準が法そのものであることを認識された筈である。にもかかわらず、あまりにも土地評価基準違反が目立ち、また被告の弁解も釈然としないものばかりであったことから救済困難と判断したのであろう。
土地評価基準が法同様の規範であり、遵守すべきものとの認定を回避し、意図的に曖昧なままにしてただ被告の言い訳を漫然と書き写しているのである。これでは法の番人とは言い難い
② t値については、別路線に係る主張であるから失当である旨の見解が見られるが、あまりに浅はかな被告の主張をそのまま書き写しただけであり失当である。
なぜなら、他の地権者を有利に扱うことは、当該地権者以外の者を不利に扱うことと同じだからである。これは次の判例にも示されており、公平性の視点を欠く評価は違法である。
従前地に及ぶ影響を、従前地に対する評価において考慮し、加算要因にすることは、合理性を欠き違法である等として、地権者の請求を一部認容した事例(東京高裁H17.2.9)である。
「・・・被控訴人(施行者)は,影響修正加算の対象とならない権利者(控訴人らを含む。)は,この影響加算を受けることがないから,不利益を被るという関係にはないと主張するけれども,影響修正加算の対象とされた権利者は,その加算の対象とされなかった権利者に比して,従前地の評価上,ひいては清算金の算定上,合理的な理由なく,相対的に有利に扱われ,その加算の対象とされなかった権利者は,同じく合理的な理由なく,相対的に不利に扱われることになるといわざるを得ず,被控訴人の主張は,到底採用することができない。・・・」
この判旨を本件に当てはめると、本件地評価に直接的な影響を与えない評価項目であっても、合理性もなく他の地権者の土地の評価を高める措置を採ることは、本件地の地権者、つまり原告を不利に扱うこと同義であり、違法評価だということである。
また、後半のF(w)値やs値について「本件仮換地の路線価指数を過大ならしめるものであるとは認め難く、・・・失当である。」としているが、F(w)値、s値についても、t値に係る上記の説明で引用した判例の指摘がそのまま当てはまる。
すなわち、一方を合理性もなく有利に扱うことは、他を合理性もなく相対的に不利に扱うことと同義であり、違法だということである。
なお、s値については本件地前面路線自体の事実誤認も明らかである。にもかかわらず、その認定すら行わず、原告主張を失当とするようではあまりにも客観性、公平性を欠く。仮に小さい数値であってもこのような1項目ずつの積み重ねにより最終評価は形成されるのである。評価過程における説明責任を果たせないようでは、適法性、公平性は担保されない。誤った数値を採用している以上、仮に、恣意性がなかったとしても基準や基準の理念ひいては法の理念が遵守されていないことには変わりがない。
過大か否かは問題ではなく、事実誤認、実態無視は明白である。原裁判所は、このような明白な誤りですらその認定を回避し、不実に基づく違法評価を助長しているのだ。もはや公平な裁判とは言えない。基準やその理念、つまり法そのものを過度に軽視しており違法である。
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